リンゴと甘え
「りりすきた!」
俺たちが城へ戻ると、オーガが手を振りながらこちらへ走ってきた。手には山ほどのリンゴを抱えている。
「お、いっぱいあるじゃないか!また砂糖漬けにしておこうな!」
「あまいの!」
オーガが持って帰ったリンゴは、種を植えたら次の日には俺の国一番の大木程になっていた。これ以上育ったら困るので、成長阻害だけ掛けさせてもらい、リンゴは毎日オーガが収穫している。
「乾燥させてもいいな。また干しておくか?」
「ん!」
まあ、こんな小さいオーガがどうやって収穫しているかは、俺は知らないんだが。恐らく魔術の類だと思う。
昼食は当然のごとく焼肉だ。
「しかし肉ばかりだと飽きるなあ........不味い訳じゃないんだが。」
食べない癖にシャトーが横でブツブツと文句を言っている。食べないんだからいいじゃないか。
「飽きることには飽きるな。栄養が偏るのもよくない。」
肉ばかりだと太る。後はやっぱり飽きる。ここに来てからずっと肉だ。
「りりす、べつの、たべる?」
オーガがそっとリンゴを差し出した。それはビタミンにはなれてもメインディッシュにはなれないかな。
「べつの、べつの、べつの........」
オーガがジャガイモやら人参やらをポイポイと並べているのを見て、俺はふと思い出した。
「魚はどうだ?この前行った泉みたいな川があれば、魚がいるはずなんだが........」
「さかな?」
「魚か........」
川があれば、何かいるはずだと思うんだが。
「地図はあるか?シャトー。」
「川なら近くにあるんじゃないか?チョーッといったとこにあると思うぞ?」
いや、シャトーのちょっとは俺のいっぱいだから。距離を確認させてくれ。
「ん!」
オーガが気を利かせて地図を出した。褒めて、と言わんばかりにニコニコしてるな。
「ありがとな。」
そっと頭をなでると、満足そうに尻尾を揺らした。
そいえば、オーガも大分甘えるのが上手になったな。
「見ろ、ここが、城。で、ここが、川。な、そこまで遠くないだろ?」
見ると、ここからそう遠くない位置に確かに川があった。
初めて俺とここの価値観が一致した。
皆様よいお年を!