作戦と冗談
森の中で俺は一人で立っていた。
「来たぞリリス坊!でっかい獅子だー!」
木の上からシャトー(本)の声が響いた。見ると、挑発に乗った獅子が、咆哮しながらこちらへと走ってくる。
「じゃあ、手筈通りに頼むぜ!」
「分かった。」
シャトーと短い言葉を交わすと、俺はすぐに魔法陣を展開した。
「『激流』、『白麟』、『昇り竜』!」
まずは「激流」で獅子は後方に吹き飛んだ。そこに間髪入れずに間合いを詰め、立て直す隙を与えない。そのまま激しい水流で獅子は遥か彼方の上空へと突き上げられ、水流が消えると同時に、地面に叩きつけられた。
「よーし、作戦通りだな!」
安全を確認したシャトーがふよふよと俺の元に近付いた。獅子はもうピクリとも動かない。
「........ちょっとどころじゃないくらい手荒だけどな。」
「でもよ、リリス坊。傷つけないで素材と肉を手に入れるのはこれが一番だぜ?『白麟』も『昇り竜』もうまくなってきたし。」
まあ、確かにそうなんだが........。
「これでひとまず帰ろうぜ、リリス坊。」
ひもで縛った獅子を引きずりながら俺とシャトーは城へと戻った。
先日使った「砕岩流」があまりにもモンスターを傷つけるので、どうにかできないかと、シャトーとオーガと考えた結果がこれだった。
まずは「激流」で敵との距離を取る。その後、4つ目の術である「白麟」で防御力と俊敏性を上げてすぐに至近距離に入り込み、5つ目の術の「昇り竜」で上へと水流........ただの水流ではなく渦を巻く殺傷能力のあるものを出し、空高く巻き上げ、術を終了することで水流を消失させ、さらに落下に伴う衝撃で仕留める、という算段だ。
これが一番傷が少なく、良好な状態の素材が手に入る。
「ちょっと効率が悪いのがなあ........」
難点はそこだな。モンスターもわざわざ自分から食料にはなりに来てくれないからな。出向くか、挑発するしかないんだよなあ........。
「罠を張ったほうがいいんじゃないか?」
「罠なあ........結局巡ることになるぜ、仕掛けた場所。それに、鮮度管理ができない!」
その問題があったか。俺たちで狩るときはすぐに冷凍処置を施すんだが、罠をしかけた場合、いつ死んだか分からないから例え冷凍処置を施そうと鮮度が危ない可能性もあり合える。
「........オーガに燃やしてもらう、のはどうだ?殺菌ついでに。」
「..................冗談でもごめんだぜ。」
だめか。
二章もゆるりと進めていきます。よろしくお願いします。