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誤解と魔導士


「『砕岩流』」

 俺が狙いを定め、呪文唱えたのと同時に、バッファローの心臓辺りに魔法陣が展開された。何が起こるのかと見ていると、次の瞬間、バッファローの体から水が、岩にぶつかったように一面に散った。


「水が.......?」

「お、成功だな。」

「りりすできた!」

 いや、違う。感想はいいからどうなっているのか説明してくれ。


「しかしさすがだな!こんなに正確にできるなんてな!」

「りりす すごい!」

 もういい。自分で確認する。


「水だから........そこまで危険ではないはず。」

 一応防御術は出せる状態でピクリとも動かないバッファローに近付いた。火や毒と違って水だからな.......濡れる程度で大丈夫だとは思うが。



 が、そんな願いはすぐに消えた。


「ズタズタじゃないか.......心臓も、肉も.......」

 そこには最早子供には、というか、誰にも見せられないような肉片になったバッファローが転がっていた。魔法陣が展開された心臓を中心に、大きく弾け、鋭利な刃物で切り裂かれたようだった。



 これ、本当に二つめか?素材も何もないんだが。と言うか、大事な可食部(ぎりぎり形がある場所)もほとんどないんだが。


「いやー、やっぱりフロウはすごいなあ。リリス坊でもその威力が出るのか

!」

 これ個人の力に左右されるのか?じゃあ、攻撃専門の術師がやったら........というか、オーガ(破壊神)がやったら........?


「ま、今はここまで使えれば大丈夫だろ!後のはいろいろヤバイからな!じゃ、オーガ、制御できるようになったか~?」

「ん!シャトーみて!」


 キャンプファイヤーが少し弱くなったぐらいの自称”焚火”を出すオーガを褒めるシャトーを見ながら、俺は想像することをやめた。







「どうだリリス坊?初めての魔導書集は。」

 日が傾きかけた帰り道、自分で増やしたリンゴを頬張るオーガを見ていたシャトー(本)何気なく尋ねてきた。


「そうだな........」

 心臓に悪い、と言うのが第一印象だな。魔導書集は最後に収められている魔術ほど威力が高くなるとは聞いていたが、最初の2つでこれでは、最後の魔術はどうなるのか見当がつかない。


 いや、つかないことはない。国一つくらい滅ぼせるんだろうな。俺でも。


「........身を守るのにはいいかもしれない。」

 少なくともバッファローと出会って即死、という事は無いだろう。「砕岩流」はともかく、「激流」で足止めをしてるうちに他の攻撃魔術でできるだけ傷付かないように仕留めればいい。


「そうだろう?そうだろう?少なくともこれで即死は免れれるぞ!」

「りりす、りんご!」

 オーガがリンゴを渡しに来た。切る物もないのでそのままかじると、いつものものより数倍甘かった。これもフロウの力だろうか。


 


 

「あ、そうだ。魔術師と言うのはな、魔導書集を習得すると、魔導士になれるんだ。」

 リンゴを半分食べ終わった頃、シャトーが思い出したように口を開いた。「魔導士?」

「ああ、『魔術で人を導く者』だ。例えば........『炎の魔導士』とか、『蝶の魔導士』とか、聞いたことないか?」

 ああ、伝説程度に聞いたことがあるな。なんでも俺の国の英雄だとか。


「魔導士はな、自分が得意とする魔導書集の名前から『炎の魔導士』とか呼ばれるんだ。」

 なるほど。魔導書集をいくつも持っていてもいいんだな。


「ま、晴れてリリス坊も魔導書集を手に入れたんだ。そうだな.......『白蛇の魔導士』だな。こいつ(「白水蛇」)を手に入れたら大体こう呼ばれるから、リリス坊もそれでいいだろう。」

 

 俺もなのか?まだ2つしか覚えていないのに?


「はくじゃ!」

 水じゃなくて白蛇なのも気になるな。水の最上位は別にあるという事なのか?どれくらい危険なんだろうか....?


「『白蛇の魔導士』!いい響きじゃないか!」

「そうか?」

 魔導士、と言われるのもまだ慣れないんだが........


「せっかく魔導士になったんだから、カッコいい服にしたほうがいいんじゃないか?」

 そういう物なのか?俺はいまいちわからないんだが。地位相応の服、と言うやつか?


「ふく!あたらしいの!」

 どこから聞いていたのか、あっという間に5個のリンゴを食べ終わったオーガが、尻尾を揺らしながらニコニコとしている。


「オーガつくる!」

 俺が何か考える前に、オーガの手が動いた。お決まりの無口頭魔術を発動させ、魔法陣が俺の体を包んだ。


「できた!」

 数秒かからずに光が消えた。服という物は、魔術とはいえ作るのに時間がかかるはずなんだがな、ここでは通用しないようだ。


「いいじゃないか!」

 俺の黒かった服は灰色に変わり、金の刺繍が施されていた。着ていた白衣も、白いローブに変わり、同じく豪華な装飾がされていた。


「これは.........」

「かっこいいぞ~、リリス坊!」

「にあう!」

 そうか、似合うか。俺もこんな服を着るのは初めてかもしれないな。


「さ~リリス坊、明日からも『白蛇の魔導士』にふさわしくなるように、みっちり鍛えてやるからな~。」

「りりす がんばる!」

 シャトーの陽気な声と、オーガの元気な声援が響く頃には、太陽が白の陰に隠れかけていた。


白蛇の魔導士の爆誕です!祝え!


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