ボディーガードと実践
「よっし。じゃあ、リリス坊。魔導書の創り方はわかるよな?」
ああ、勿論だ。
「『創造』」
俺は手をかざし、短い呪文を唱えた。この術は、任意の場所ではなく、地面に魔法陣が展開される。展開された大きな魔方陣に、俺は先ほど集めた魔導書集「白水蛇」の素材を置いた。
「新たな導きに、神の祝福を。」
最後に祝詞を口にすると、魔法陣が光りに包まれた。
「お、できたみたいだな。」
「できた?」
次の瞬間俺の手元には一冊の分厚い本があった。
「これが、魔導書集.......」
「綺麗だろ~?フロウの鱗はキラキラしてるからな、ほら。」
光にかざすと、キラキラと反射した。魔導書集だから、なんかこう.......古めかしい感じかと思ったが、意外と綺麗だった。
「フロウ、みず!」
水?............ああ、この魔導書集は水の攻撃魔術だったな。じゃあ、水が術の名前の中に入っていたりするのだろうか。
「え~と確か.......その魔導書集には10個ぐらいじゃなかったか?攻撃から偵察、回復までなんでもござれだったな。」
本を見ながら言っていなかったら説得力があったんだが。攻撃だけじゃなくて回復まであるのか。それは心強いな。
「じゃあ、早速使ってみるか!万が一の時にもすぐ使えるように.......」
「?」
オーガが不思議そうな顔をするのも無理はないな。なんたって|オーガが火炎竜巻を出した時《万が一》のためだからな。
「お、いい感じのやつも来たな。じゃあ、試しに............」
シャトーの視線(?)の先に目をやると、明らかに飢えた魔獣改めバッファローの群れがいた。俺が、自分の最高クラス魔術を遣わないと倒せなかったやつの、十数匹の群れが。
「いや、いい感じ通り越して............いや、いいのか。」
「オーガたおす!」
今はボディーガードがいたんだった。
「まずは一番最初のやつだな!リリス坊、やってみてくれ!」
一番最初?一番上の物か?一番上なら............これだ。
「『激流』。」
途端に魔法陣が展開され、バッファローの群れを水流が襲った。勢いよく迫っていたバッファローの群れはすぐに押し戻され、後ろの木に激突して次々と倒れた。
「りりすすごい!」
「お~、綺麗に決まったな。」
押し返されたバッファローたちは、何が何でもわからないようで、混乱していた。
すごいなこれ。こんなに大勢を一気に押し戻せるなんて。しかも何かにぶつからなければ押し戻すだけだから、傷もつかない。つまり良質な素材が手に入る。コントロールさえ気を付ければ、ほかの術と組み合わせて効率よく狩れるんじゃないか?
「最初にして上出来だぜ!大体の人はコントロールできなくてとんでもない方向に水撒きをするんだが。」
褒めてるのか............?
「多分それは、職業柄だ。回復魔術は打ち込む位置が大切だから。」
「なるほどな~。」
納得していただけたようで何よりだ。
「グルルルル............」
と、一匹が起き上がり、こちらを睨んだ。
「お、来るぞリリス坊!激流が大丈夫ならこっちも大丈夫なはずだ!」
こっちって何だこっちって。そんなことしてるともう向かってきているぞ?
「リリス坊、次は2つ目だ!かなりコントロールが必要だからな!心臓
の位置を狙うんだぞ!」
よくわからんがよく分かった!取り合ず心臓に打ち込めばいいんだな?
「ああ。.........『砕岩流』。」
俺は、狙いを定め、魔導書集の2つ目の魔術を撃った。
いくら魔導書集とは言え、2つ目の術という事はまだ序の口、と思っていたが、どうやらその認識が甘かったことが次の瞬間分かった。
次回:百聞は一見に如かず