乙女の策略
一個後でしたごめんなさい
「よし、これで薬草の正体は調べられそうね。」
部屋に戻った私はすぐに本とリリス様の物をオルゴール型の小物入れに隠した。見つかっては元も子もないから、慎重に扱わないといけない。
「次は.........あ、行商人ね。」
薬草はリリス様が取り寄せた。王宮に入れるのはお抱えの行商人だけ。という事は、行商人に聞けば、どんな薬草を取り寄せたのか聞くことができる。
「でも.......おかしいのよねえ............」 行商人に取り寄せてもらう、という事は、わざわざ自分の名前で王宮に取り寄せてもらう、ということ。そんなことしなくても、こっそり誰かに頼んで取り寄せてもらった方が簡単な気がするのだけど。
もしかして、あの報告書自体がでっち上げ、と言う可能性もあるのかしら。ただリリス様を陥れるためだけだけに作られたでっち上げの。
「だとしたら.........許しませんわ。」
そんなことが通っていいはずがない。リリス様は何一つ悪いことはしてないのだから。私が絶対に確かめて見せる。
「報告書どうりなら、行商人が取り寄せたことになるのよね。」
だったら直接聞いてみれば............
言うはずありませんわね。報告書に何も言わないという事は、事実なのか、言いくるめられているのかのどちらかですもの。それとも、何も知らないか。
「こういう時は、頼るしかないわね。」
とあるつてを思い出した私は、服装を整え、とある場所へと向かう支度をした。
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「久しぶりね、エミリア。」
「お姉様もお変わりなきようで。」
美しく装飾されたテーブルを囲み、ソファに座った私に、お姉様 ―第四王女のであり、大貴族の元へ嫁いだアンジェリコ・ライヒお姉様 ― が優しく話しかけた。
「突然のことで、ご迷惑ではありませんでした?」
「そんなことないわ。私はいつでも空いていますよ。」
お姉様はそう言って紅茶を差し出した。
大貴族と言えども王族には到底及ばない。ましては正室の子となれば、腫物のように扱われる。その結果時間だけが余ってしまうのは私もよく知っている。
「それで頼み、と言うのは?............リリスさんの事かしら?」
紅茶を飲み終わったお姉様は、誰もいないことを確かめると、声を潜めて私に聞いた。
............するどい。
「ええ、そのこと、なのですが............調べていただきたいことがあるのです。」
「何でも言ってちょうだい。私にできることなら何でもするわ。」
流石お姉様。こちらが心配になるくらい協力的。
「国境を警備している兵士は、荷物の検品もしていらっしゃるのよね?」
「ええ。」
「そのとき、品物の名前が記されているリストを徴収するのよね?」
「ええ。」
よかった。来たかいがあったわ。
「そのリスト、私に渡していただくことはできませんか?」
私の目的は、このリストだ。お姉様の嫁いだ家は、国境の警備に当たっている。そして、リリス様の使ったとされる毒草はこの国にはない物。王宮への荷物は安全のため、リストへの全ての荷物の記載が義務付けられている。
つまり、リリス様が頼んだのであれば、ここ何日かのリストに何らかの形で「薬草」と記されているはず。そのリストを、お姉様を介して見せてもらうことができれば、リリス様が薬草を取り寄せたのか否かがわかる、ということ。
果たしてお姉様がリストを渡してくれるか、と言うところにあるのだけれど。
「わかったわ。できる限りのリストを集めさせて、貴方が確認で来るようにすればいいのね。」
問題なかった。
「............いいのですか?そんな簡単に.....」
「別にエミリアにリストを見せてはいけない、とは言われてないもの。」
流石にそこまでは手が回せていなかったのね。
「それに、エミリアには私と違って、幸せになってもらいたいわ。」
「お姉様.........」
お姉様はにっこりと笑った。そうだった。お姉様は、好きで嫁いだわけだはなかったのよね。
「応援してるわよ。」
お姉様の協力を取り付けた私は、お屋敷を後にした。