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守り神と旧友


「まずだリリス坊。リリス坊は『白水蛇(はくすいじゃ)』の魔導書集を知ってるか?」

「勿論知っている。攻撃魔術の最高クラスの魔導書の........魔導書集なのか?!」

「そうだぜ?知らなかったのか?」

 魔導書の中でも同系統、例えば同じ生物の一部だとか、同じような素材を使う魔導書を「魔導書集」と呼んでひとくくりにしている。


「知るわけがないだろう........ただでさえ流通が少ないんだ。俺だって、使っているのを見たのは一度だけ........しかも他国の魔術師だ。」

 魔導書集は価値が高く、よほどの大金をつぎ込まなない限り、全て揃えて手に入ることはない。さらに自分で制作しようにも同じ素材が大量に必要なため、存在自体が確認しづらいのが現状だ。 


「はー………きっとそいつは全財産つぎ込んだんだろうなあ。」

 多分そうだと思うぞ。

「しかも一冊だけだろう?それだと威力を発揮しないんだよなあ........魔導書集は。」

 そうだな。魔導書集は該当の魔導書が全てあるものとして使用系統が決まるから、一冊だけじゃうまく扱えない。それも魔導書集が使われない原因でもあるんだが。


「ま、今回はそんな心配はいらないぜ!なんにせ全部一気に集めちまうからな!」

「フロウ、いく!」


 全部?一気に?シャトー(こいつ)は正気か?「白水蛇」だぞ?最高クラスだぞ?俺も名前しか聞いたことが無い素材ばかりなんだぞ?

 しかもフロウって誰だ?もしかして、「白水蛇」の........


「なあ、『フロウ』って........」

「フロウってのはな、今向かってる泉の守り神だ。オレたちのふる~~~い友人でな、『白水蛇』の大事な素材を持ってるんだぜ!」

「オーガ、なかよし!」

 やっぱりか。「古き泉の守り神」........フロウ、っていうんだな。シャトーはともかく、オーガの友人、という事は幻獣か?オーガのように人型をしているんだろか。

 

 いや、違う。なぜそんな最高クラスの幻獣がそこら辺の泉にいるんだ?なぜ近いから、って行ける場所にいるんだ?というか友達なのか?




「着いたぞ~。ここがフロウのいるところだ!」

 

 ふと顔を上げると、目の前に美しい泉が広がっていた。清らかで、水が透き通り、底まではっきりと見えた。泉の奥はごつごつとした岩で囲まれ、洞窟のようだ。


「綺麗だ........」

「だろ!」

「みず、いちばん!」

 そうだな。確かに口当たりがよさそうだ。


「じゃ、オーガ、フロウを呼んでくれないか?」

「ん!」

 見るからに嬉しそうに尻尾を揺らしながら、オーガは小走りで岩の奥に消えていった。


「えーと、『白水蛇』に必要なのは、このあたりの植物やら鉱石だな。ま、これは何とかなるだろう。」

 何とかなるのか?そんな適当で。こんな森の中、俺達だったら徹底的に調べてから採れるだけ持って帰るぞ?


「でだ、この魔導書集の要の『古き泉の守り神の鱗』って言うのがな........」

 シャトーが続けようとしたとき、オーガの嬉しそうな声が、水の中から聞こえた。


 水の中から。


「フロウいた!」

 勢いよく顔を出した狼の姿のオーガは、泉の外に出ると、ぶるぶると水を飛ばした。

「おっと危ない............どこだ?オーガ。」

 シャトーが自分が水にぬれるとまずい物(大事な本)だったことに気が付き、慌てて後ろに下がった。


「ん!」

 オーガが指をさす先を見ると、水の中に長い影が見えた。影はすぐに水面へと顔を出し、(シャトー)を見ると、ゆっくりと口を開いた。


「久しぶりだな。シャトー。」

「おお!元気そうで何よりだぜ!フロウ。」

 フロウと呼ばれた影............もとい白い大きな蛇は、赤い目をすっと細めた。

 「古き泉の守り神」、か。確かに、相応しい姿だ。




「ほう............それは難儀だったな、人の子よ。」 

 シャトーが一通り俺のいきさつを話すと、フロウは同情するように体を寄せた。

「まあ............難儀と言えば難儀だな。」

「もっと、難儀っぽくしていいんだぜ、リリス坊。落ち度はないんだからさ。」

「りりす、わるくない!」 

 難儀っぽいってなんだ難儀っぽいって。


「それで、私に何か御用かな?」

 フロウの言葉に、シャトーがああ、とフロウの方に(?)向き直った。

「今、リリス坊の魔術の強化をしているんだがな、攻撃魔術がなかなかなんだ。」

「りりす、なおすとくい!」

 補足をありがとな、オーガ。

「だからな............フロウの鱗を、分けてもらいたいんだ。」

 結構ストレートに言ったな。オブラートに包むどころか自分から開けていくぐらいだ。


 というか、いくら友人だからってそんな簡単にもらえるのか?一応体の一部だぞ?


「そうか............」

 ほら、フロウも少し考えてるぞ。



「良いだろう。何枚あればいい?」

「いいのか?いや~助かるな。じゃあ............」

「フロウ、たすかる!」

 


 こんな簡単でいいのか?高級素材がこんな簡単に............?

 




  これで、いいのか............?

次回:魔導書集作成!(多分)

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