信用とお礼
「これがこの森の地図だ。」
シャトーはまた一つ燭台が減り、少し暗くなった食堂の机の上に地図を広げた。
「........随分と大きいんだな。」
所々見えなくなってはいるが、かなり大きいという事は分かる。
「そうだろう、そうだろう!」
なぜあんたが嬉しそうなんだ。
「これは結構昔のやつだから........もっと広いんじゃないか?」
いきなり地図の信用度を落とす発言は止めてくれ。というか、住んでるのに全貌を把握していないのか?
「オーガの力は強いからなあ~ここに居るだけでどんどん広くなっちまうんだよ。」
「き、のびる!ひろがる!」
なるほどな。じゃあ、今も現在進行形で広がってるのか。厄介以外何物でもないな。
「城は.........これか。」
丁度中心近くにあるから分かりやすい。普段はオーガの魔力の影響をもろに受けている木々に阻まれて近くまでいかないと分からないが、かなり大きんだな。
「で、どこに行きたいんだ?広さを聞くってことは、なにかやりたいことがあるんだろう?」
「ああ。オーガの魔術の制御の練習と、俺の威力強化、だな。城の中でやると大変なことになりそうだから。」
「それは.........そうだな。」
シャトーも燃やされるのは嫌だろうし、ついでに森の探索もできる。
「あとは.........罠が仕掛けたい。」
「わな?」
「そうだ、バッファローを狩って来ただろう?いつも出会えるわけじゃないから、効率よくするために罠を森に仕掛けるのはどうだろうと思ってな。」
そうすれば俺とオーガで狩るよりもたくさん狩れると思うんだが。
「シャトー、わな?」
そこからか。
「罠って言うのはな.........まあ、猛獣を簡単に捕まえるためのやつだ。魔法陣を仕込んでおけば勝手に発動して仕留めてくれるんだぜ!」
間違っては無いけど合っているとも言いたくない説明をありがとう。
「まあ、オーガが火炎をぶっ放しても影響がなくてリリス坊でも死なない程度の獣がいるところを探せばいいんだな?」
まあ、そう言う事だ。
「じゃあ、ちょっと開けてるここなんてどうだ?こことは正反対だし、そこまで狂暴なやつはいないぞ?」
俺の狂暴とこの2人(?)の狂暴の度合いは違うんだが。そもそも俺は攻撃系の術が得意ではないのだが........
「つよいの、オーガやっつける!」
ああ、そいえばここに最恐龍王がいたんだったな。
「じゃ、早いうちに行こうぜ~。ついでに寄りたいところもあるしな!」
寄りたいところ?お城が寄りたい場所ってあるのか?
「りりす、いく!」
オーガはもう昼ごはん(が載った本)を片手に持ってそわそわとしている。もう行く気満々だな。
「持って行くものはそれでいいのか?」
「ま、いいだろ!オーガは早いからな!」
「おしろもどる!」
........そうすれば良かったな。
「ついた!」
狼になったオーガの背中に乗り、あっという間に目的地に到着した。
「はやいだろ?モフモフだろ?」
確かにモフモフだな。触り心地がいい。
「顎の下撫ででやると喜ぶぞ~」
分厚そうな本のシャトーが耳元でこっそり囁いた。はたから見たらただのホラーなんだがその自覚はおありだろうか。
「........そうか。」
ただ乗らせてもらうだけ、と言うのも申し訳ないからな.......喜ぶんだったら......
「おりる!」
オーガから降りた後、俺はオーガに声をかけた。
「オーガ、ちょっとこっちを向いてくれ。」
「?」
俺は少し体をかがめ、くるりとこちらを向いたオーガの顔の下あたりをそっと撫でた。
「!」
急に触られて驚いたのか?
「お前のお陰ですぐについた。ありがとう。」
オーガは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに気持ちよさそうに目を細めた。
「よかったな~オーガ。」
肉体を持っていたら頷きそうな勢いでシャトーが本をバサバサとふった。
埃が、落ちてくるんだが。その本は、一体どこから持ってきたんだ?
「シャトー、その本は一体......」
「んじゃ、オーガはこっちな。リリス坊は俺が見てやるぜ!」
「ん!」
あ、逃げた。
次回 シャトーのスーパー魔術教室