表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/137

ジャガイモと物差し


「どうしたんだー?何かあったかー?」

 城の中から呑気な声が聞こえた。あいつか?あいつが魔法でもかけたのか?こんなに早く成長するなんておかしい。誰かが手を加えたのは多分明白だろう。


「お、リリス坊。こんなに早い時間に.........もしかして、オーガか?」

 そのもしかしてなんだが、今はそれじゃないんだ。


「.........シャトー、これは一体、どういうことだ?」

 なぜかフォークで出てきたシャトーに静かに畑を指さした。何かしたなら何か言うし、何もしていないなら驚くかと思ったが、シャトーはいたって普通の事だと言わんばかりに呑気に感想を言った。


「おお、随分育ったじゃないか!リリス坊、これはどれくらい育ったら食べられるんだ?」

 違うそうじゃない。どう考えても育ちが早すぎるだろ。昨日植えたんだぞ?しかも種だぞ?


 ............もしかしたら俺がおかしいのか?いや、そんなはずはない、と思う。


「........この森では、これが普通なのか?」

「ん?ああ。」

 否定してほしかった。


「リリス坊には言ってなかったな。この森はな、オーガの力の影響を受けていただな.......まあ、オレが知っている限りの話だが、いろいろなものの成長が早いんだ。」

「なるほど........?」

 


 ってなりたかった。この龍王の力は一体どのくらいなんだ?「城」じゃなくて「森全体」なんだろう?俺の国の魔術師が力を合わせても勝てないんじゃないか?


「まあ、いい事じゃないか?その分いっぱい育てられるんだ。」

 いいことと言えばいいことだが、毎日の仕事がその分増えるぞ。取り敢えずあの種は何だったのか確かめないといけない。少し近付いただけでは葉やら茎やらが茂りすぎてわからない。地上に実がないところを見ると、地下にありそうだが........


「少し、掘ってみてもいいか?」

「ほる?しゃべる?」

 シャベルは入らないぞ。手で軽く土をどける程度でいいんだ。


「いや、これが何なのか確認するだけだから......これの根元を少し手で掘ってみてくれ。」

 俺が一本の植物を指さすと、オーガは根元まで進み、軽く地面を掘り始めた。


「何か見えるかー?」

「......まるい?」

 丸?何かの種子か?オーガの掘っている元へ近づき、ちらりと上から見ると、ジャガイモのような丸いものが数個姿を現した。


「ジャガイモ、か?」

「じゃが?」

「イモ?」

 そうか、オーガとシャトーは原材料を知らないのか。多分あの本にも載っていると思うぞ。

「ジャガイモは、小麦と並ぶ主食だ。どこでも育てられて、保存も効く......開拓地で育てるにはもってこいなんだ。」

「ほ~」

「いも!」

 ところで、普通は種芋から育てるはずなんだが......旅の途中で食ベてしまったのだろうか。それとも、こいつ(シャトー)が腐らせたのか......


「あとは何だ?大体似たような感じだが、ぜんぶジャガイモなのか?」

「いや、あとは......人参がある。これだ。」

 俺は、成長しすぎてもはや何の葉っぱなのか分からなくなった人参の葉を指さした。土からオレンジ色が見えていたから分かったものの、完全に隠れていたら分からなかっただろう。そこまで一晩で成長させるオーガの力........

 


「オレが持ってきたのは多分2種類だけだから、じゃあ、これだけだな。」

 多分。あまり信用できないが、現状では確認できない。


「ところでこれ、どうするんだ?抜くか?」

「ああ。人参は抜いてもいいだろう。ジャガイモの方は.........まだ成長の余地がありそうだから、明日まで待とう。」


「にんじん、ぬく?」

「そうだぞオーガ。このオレンジ色のやつだけを抜くんだ。こっちは抜くんじゃないぞ。」

「ん!」

 フォークが説明しても説得力が半減するが、オーガは、せっせと人参を抜いていった。大きい割に抜きやすいのか?


 俺もオーガの隣で人参に手をかけたが、いくら力を入れても動く兆しはない。その間にもオーガはスポスポと抜いていく。


「なあ、オーガ。どうしてそんなに早くに掘り出せるんだ?」

「?もつ、あげる!」

 いや、説明が聞きたいんじゃなくてだな。.........もしかして....いや、もしかしなくても.......


「馬鹿力.......」

「リリス坊が弱いだけなんじゃないかー?」

 頼むからヤバイ方(そっち)の物差しで測らないでくれ。どちらかと言うとそっちがおかしいから。


「でも大体幻獣族はこんなもんだぜ。リリス坊もバッファローくらいは素手で倒せないとな☆」

 そうだ。ここではヤバイ方(こっち)が物差しだった。幻獣王と比べたら俺がおかしんだ。バッファローくらい.....ハンターが数人がかりで倒す獣を.......素手?誰かしら帰ってくる度に消えているあの獣を.......?


「そうか..........」

 


 俺には、少しどころじゃないくらい、無理かもしれない。


所変われば品変わる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ