黒龍討伐軍、出陣
「すっごい......前よりもかなり人数が多いですね...」
「それはそうだろうな。なんにせ失敗するわけにはいかないだろうからな」
時は経ち、黒龍討伐のための決起会に参加する5人は、数百人はいるだろうという人々に驚いていた。見るからに高級そうな装備をしている者、王宮の腕利きの兵士、医術師、「最強」と名高い魔術師団.....総力戦と言ってもいいほどの戦力だった。
「フィロクテさんはこの規模の戦いは見た事があるんですか?」
「そうだなあ......俺は龍がこの国に攻めてきた時以来だが....相棒はどうだ?」
「いや....見た事がない。相当な気合の入れ込み具合だ」
術使いのアーシャに聞かれたフィロクテとイクシオは記憶を掘り起こすが、この規模は龍の襲来以来の規模だった。
「あ、始まったみたいですよ!」
人々の前方に設置された舞台の上に一人の男と数人の護衛が現れた。その途端ざわざわとしていた会場はしんと静まり返り、一人の男に注目が集まる。
「こ、国王陛下?!」
「陛下御自らわざわざ起こしに?!」
「おやおや、随分気合が入っているなあ.....」
会場が静まり返った理由は、この国最高権力者である現国王が姿を見せたからであった。本来国軍と名が付いてはいるものの決起会という小さなイベントには国王が顔を出すことはない。それ故に、国がどれほど力を入れているかということがありありと伝わった。
「勇敢なる戦士諸君、今日、この場に集まってくれたこと、深く感謝する」
しんと静まり返った会場に低くしっかりとした声が響いた。国王はその後、今回の討伐にかける思いや、数十年前の黒龍襲来の際の痛ましい被害などを語った。
そして最後に、こう締めくくった。
「此度の討伐は我が国数十年来の悲願である。必ず忌まわしき黒龍を討伐し、我が国の栄光を永遠のものとするのだ!」
轟音とも呼べる歓声が会場中に響き渡り、盛り上がりは最高潮を迎えたまま「黒龍討伐軍」は龍の森へと進軍を開始した。