夕暮れの契約
「てっぺん、ついた!」
オーガはぐんぐんと上昇し、まだ日が沈まないうちに城の頂上、つまり、3つある塔の最も高い部分に到達した。どのくらい高いかというと、地面が見えないレベルである。正直に言うと炎鳥への攻撃も当たったかもしれないレベルだ。まあ、そんなことをしたら今頃城はなかったんだろうな.....
素早く変身を解除したオーガがから飛び降り、屋根の途中の窓のへりに足をかけた。
「おっと....危ないな。風もかなり強い」
術で体感を強化していなければ今頃真っ逆さまであっただろう。
ふと西の方角を見ると、太陽は今にも沈もうとしていあ。
「おいおい時間がないぞ! すぐに魔法陣を展開するから、オーガとリリス坊は素材を並べてくれ!」
シャトーはよほど慌てているのか人間が認知できないほどの高速で呪文を詠唱し始めた。うっすらと魔法陣が浮かんだ場所に素材と魔導書を置くと、妖しく輝きだした。
「......我らに力を与えたまえ」
太陽が沈むか沈まないかの瀬戸際になって、ようやく詠唱を終わらせたシャトーが、ふう、と息をついた。
「めんどくさいんだぜー・・・こういう手のやつは長いし体力いるし....さ、これで準備はできたぜ。あとはリリス坊とオーガが二人でこの魔法陣に立って、この魔法石に触れれば終わりだ!」
ふと魔法陣を見ると、1つの魔法石がふわふわと浮かんでいった。あれに触れば、オレとオーガは「幻獣の宿命」を使えるようになるのか。
「オーガ、準備はいいか?」
「ん!」
オーガは元気よく返事をし、魔法陣の中へと進んだ。
「リリス坊は.....」
「もちろんだ」
振り返って同じように声をかけようとシャトーの声よりも先に、俺はそういって魔法陣の中に踏み入れた。
足場のない場所に浮かぶ魔法陣に足をのせると、まるで魔法陣が地面であるかのような感触がした。ゆっくりと中心に進み、オーガと魔法陣がある場所へと進む。
「りりす、さわる!」
オーガが満面の笑顔で魔法石に手をかけた。
「ああ、わかった」
その眩しい笑顔に俺も思わず笑みがこぼれた。
太陽がまさに沈もうというとき、俺はそっと手を伸ばして魔法石に触れた。
直後、魔法陣を中心として眩い光が放たれ、森全体を包み込んだ。