契約と頂
「やっぱり綺麗だな~『幻獣の宿命』は」
フロウに礼を言い岩場を後にして城へと帰る途中、出来上がった魔導書を太陽に向けていた。先ほど手に入れたエメラルドと同じような色を基調として装飾が施されている。
「『炎鳥の翼』は赤、『大鷲の爪』は黄色、『セイレーンの誘い』は青、『魔狼の咆哮』は紫、で、『普見者の瞳』は緑か」
そうだな。魔法石の色に準じているからそうなる。確かにどの魔導書も装飾が美しかったな。
「じゃ、早く帰って大魔導書を作ろうぜ! 大魔導書はちょーと作るのがめんどくさいんんだ。早くしないとあいつらが来ちまうぞ!」
そうだった。確かフロウの話だとあと二日.....いや、今日はもう夕暮れだからあと一日か。だとするとかなり時間がない。フロウも言っていた通り、作戦を立てないといけないからな。
「....だったら、こんなに呑気に歩いていていいのか?」
「いそぐ?」
「それもそうだな。じゃあ急ごうぜ! 確か太陽の光がないとできないはずだからな!」
そういうことは先に言ってくれ。もうすぐ日が沈むぞ?
「じゃあなおさらまずいじゃないか。儀式に必要なものをすぐに揃えられるように教えてくれ!」
慌てて走りながら言う俺にシャトーも走りながら答えた。
「この城の一番高いところに登るんだ!その上で全ての魔導書に太陽の光が当たるように置いてくれ! それと.....そう! ここがだいじなんだが、人間と幻獣族が一人ずつ必要なんだ!」
人間と幻獣族? どうして幻獣族の秘術を作るために人間が?
「シャトー! なんで人間が必要なんだ? 幻獣族が必要なのはわからないでもないが......あ、魔術書は持っている! 後は城の上に上がるだけだ!」
「オーガのる! のぼる!」
オーガが勢いをつけて走り出し、あっという間に小さなドラゴンの姿になった
「『大鷲の飛翔』!」
「オレものせてくれっ!」
俺は魔術で跳躍力を向上させてから、シャトーはふわりとオーガに飛び乗った。
「『幻獣の宿命』ってのはな、"強い"存在である幻獣族が"弱い"存在の人間を守るために作られたんだ。だからまあ.....形式的に、だが人間と幻獣の契約みたいな感じになってるんだ。だから、契約者と被契約者が必要なんだ」
これがオレが手に入れられなかった理由でもあるんだがな、とシャトーは続けた。
なるほど。あり得ないぐらい強い魔術には訳があったのか。
「それと、『幻獣の宿命』は幻獣が近くにいないと使えないから.....オーガから離れるなよ!」
「りりす、いっしょ!」
「わかった......が、今までそこまで離れたことはあったか?」
「.......ないな!」
「ずっといっしょ!」
そういえば、家族以外とここまで長くいるのは初めてかもしれないな。
そんなことを思いながら俺達は、俺がまだ見た事のない城の頂上へと登っていった。