普見者の瞳
「これがエメラルドか....綺麗だな」
「きらきら!」
「純度は調べないとわからないが....いい線いってるんじゃないのか?」
確かに俺が店のショーウィンドウで見たものよりも不純物が少ないように感じる。ただどのくらいの純度であれば 「普見者の瞳」で使えるのかはわからないそうだ。なぜなら前例がないから。シャトーは人間ではないため、使える魔術と使えない魔術があるそうで、「幻獣の宿命」は使えない類に入るそうだ。
「まあ....それはやってみないとわからない。この場を離れる前に試してみようぜ!」
そうだな。一度戻ってもいいが、もし使えなかったときにまた来るのは面倒だ。
「賛成だ」
「ん! やってみる!」
シャトーはいそいそと魔法陣を展開し、俺は持ってきた水晶と魔法石、泉の水を置いた。
「じゃ、祝詞を頼むぜリリス坊! 俺達じゃできないんだ!」
「わかった」
シャトーに代わり魔法陣の前に立ち、俺は魔導書を作るための祝詞を唱えた。
「古の巨人よ、目覚めたまえ。我が身に不眠の瞳を与えたまえ」
その途端、魔法陣が強い光を発した。
「成功だ!」
シャトーの喜びの声を聴きながら、俺はさらに続ける。
「不眠の守護者の力を分け与えたまえ」
魔法陣はさらに光を帯び、一瞬一際眩しく輝いたのちに一冊の魔導書となった。
「幻獣の宿命」最後の魔導書、「普見者の瞳」の完成だ。