力加減と達成
シャトーが鈍い音が振り上げたツルハシが岩に触れた瞬間、恐ろしいほど鈍い音が洞窟中に響き渡り、岩の破片があたりに砕け散った。
「うおっ!」
当然のように鋭くなった破片がこちらにあり得ないスピードで飛んできた。ギリギリよけられたが....当たってたと思うとぞっとするな。
「離れたほうがいいぞ? リリス坊」
おい、貴様はしれっと逃げるんじゃない。さらにかなり距離を取るんじゃない。そう言っているハナから新たな凶器が飛んできた。
「....洒落にならないくらい危ないな」
俺も慌てて後方に避難し、嬉々として掘り続けるオーガを眺めていた。
「あの調子だとそろそろか?」
だんだんとオーガが奥に入っていく様子を見ながらシャトーが光の強さを確認した。オーガの後ろに追尾させている魔法陣の光はだんだんと強くなっていた。
「オーガ、そろそろだぞ! 気を付けて行けよ!」
「ん! 気を付ける!」
オーガはこくりと頷き、少し力を弱めた。カンカン、と高い音に代わり、飛び散る岩も少なくなった。オーガもかなり力加減ができるようになったな。これならエメラルドを砕くこともないだろう。
「もうちょっとで....」
「ん!! みどり!」
シャトーが呟いたと同時に、オーガが大きな声を上げた。
「「なに!? 見つけたのか!」」
俺とシャトーは同時に叫び、オーガのもとへ走り出した。岩場のかなり奥に入り込んだオーガの指さす先には、きらきらと輝く緑色の宝石......エメラルドがあった。