職業と運
「さて、と」
争いを避けるためになるべく同じ場所を避け、オーガは左、シャトーは中央、俺は左側に陣取った。探知系の魔術は全員の合意の下で使うこととなり、パワー以外は平等になった。すぐ近くにはガンガンと掘り進めるオーガ、勘に任せて部分的に掘るシャトーがいる。
パワーの面を補うために術の使用は一つまで許された。あとはどれを使うかだな。なにか力を上げる術は持っていただろうか。
....ないな。ここにきてから大分攻撃系の術を覚えたが、元々俺は医者だ。回復と状態異常に降っていたから体力増強などというものは持っていないな。これはどうするべきだ?
「なにか......あ」
しばらく考え、俺はあるものの存在を思い出した。あまり効果があるとは言えないが、使えるものが一つあるな。
「......『鎧騎士の拳』」
俺が持っている数少ない攻撃補助系統の魔術。薬草を取りに行ったときに偶然ダンジョンに入ってしまった時の物だ。あの時は状態異常系でじわじわ削っていったんだったな。....今はそんなことしなくてもよさそうだが。
2人に遅れを取らないようにバフをかけ終わった俺も岩場に向かってツルハシを振り下ろした。
ガン!と鈍い音を立て、岩が少し砕けた。まあ、いい感じではないか?続けてツルハシを振ると、少しずつではあるが、表面の岩が砕けていく。
あまり人間は来ていないと聞くから、確率的には高いのだろう。
運だけは異次元の生命体には勝ちたいものだ。そう思いながら俺は一心不乱にツルハシを振った。