光と予想外
「....広いな」
「いっぱい!」
シャトーによって開かれた扉の中には、先日入った倉庫よりもだだっ広い空間が広がっていた。俺の背丈よりも少し高い棚に、よくわからないものがきれいに並べられていた。「コレクション」と銘打つだけあり、保存状態はこの城の中で一番よさそうだ。
「どうだ? オレのコレクションは! 痛むといけないからしっかり空調も管理してるんだぜ!」
ふと見上げると、球形をした天井の近くに青井光のボールが浮かんでいた。
「あれで全部調整してくれるんだぜ~!」
確かに、よく見ると青い光は小さな光の粒を飛ばしながら大きくなったり小さくなったりを繰り返していた。
「それで....こんなに広い場所からどうやって探すんだ?」
目を輝かせてながら化石を見に走っていったオーガを見ていたシャトーは、そうだったそうだった、と右手から魔法陣を展開した。
「こいつで探すのさ!」
言うが早いか、光輝いた魔法陣から、小さな光が現れた。
「これは? 探索術の類か?」
「まあそんなもんだな。で、あとは....」
シャトーがもごもごと何かを唱えると、魔法陣のうえで漂っていた光が上昇を始め、棚と棚の間をゆっくりと飛んで行った。
「こいつについていけばまずは『セイレーンの鱗』が手に入るぜ!」
しばらく通路を進んだ光は、ある棚の前で止まった。
「お、ここらしいな。んーと、どれどれ....?」
光がふよふよと浮くあたりに置かれている箱をがさがさと漁っていいたシャトーだったが、ある箱の前で大きな声を上げた。
「あったぜリリス坊! これが『セイレーンの鱗』だ!」
シャトーが持っていたガラス張りの小物入れの中には、確かに古書でみたものと同じ光を受けて七色に輝く鱗があった。
「綺麗、だな」
「そうだろう? セイレーンは歌声で船乗りを誘惑していたと思われているが、実はちょーっと、違うんだ。歌声はもちろん、この美しい鱗を纏った姿....つまり、美貌でも誘惑していたんだ」
そうだったのか。古書にはそんなことは書いていなかったな。やはり現物を見た人間(?)は違うのか。
「さ、次は『大鷲の羽』だ。確か、何枚かむしり取った気がするんだがなー・・・」
俺が美しい鱗を眺めているうちに、シャトーは次の探し物に移ったようだ。俺からすれば今を逃せば次はいつ見れるか分かったものではない代物だから、もう少し見ていたいのだが....聞く耳を持ちそうにないな。
「さて....これですべての探索が終わったわけだが......」
それから数分後、化石を見尽くしたオーガと合流した俺達は、シャトーの手の中の物を神妙な面持ちで眺めていた。
「まさか....こんなことになるなんてな....」
シャトーの手になかにあったのは、きらきらと光る海の歌姫の鱗と、大きな鷲の羽だった。
しかし、必要な素材はもう一つある。
「エメラルドがないなんて......! オレとしたことが....!」
つまり、「普見者の瞳」を作るために必要なエメラルドが、この膨大な量のコレクションをもってしても手に入れられなかったのだ。