素材と効率
「....オーガはシャトーから『コレクション』について聞いたことはあるか?」
「ん! ある!」
「コレクション」を見るためにシャトーに続いて城の階段を下っている途中で、ふと気になった俺は隣を歩くオーガに尋ねた。
「シャトー、すごいまほうつかい! つよいてき、いっぱいたおした!」
「なるほど、炎鳥やあの狼のことを知っていたのはそれが関係あるのか」
オーガはこくりと頷いた。
「つよいてき、いっぱいいる! そざい、いっぱいある!」
「魔法石で蘇るなら、何度でも採れるわけだ」
毎日何百人という人間が狩りに出かけている割にいっこうにモンスターが枯れなかったのはそのせいだったんだな。
「そしてそれをこの城に所蔵しているって、ワケだ!」
いつから聞いていたのか、前を行くシャトーがくるりと振り返り、にっ、と笑った。
「お前は随分長く建っていると思うのだが....数はどれくらいなんだ?」
「そうだな~、別に人の姿になれてすごい魔術が使えるからって、そんな遠出した覚えはないからな~、ざっと3000か6000ぐらいじゃないのか?」
数の幅を倍にするんじゃない。
「なるほど....?」
まあ種類には心配及ばないわけか。
「たくさんあるやつもあるし、魔法石の仕組みから外れている奴もあるから、種類はちょっと少ないがな!ま、あの三つだったらあるとおもうがな!」
かなり高レアリティの物ばかりなのだが。鷲の羽はこの森から少し外れた高い岩場の頂に住む鷲の羽のことだし、セイレーンは様々な条件を満たして、深夜の荒海の中を進まなければ会うことすら儘ならない。唯一自力で入手できそうなエメラルドだって、高純度の物でないといけないはずだ。
......まあ、物理的に海がないことを除けば、ほとんどこの森及び付近であれば揃いそうだがな。
「ついたぜ! ここが俺のコレクション置き場だ!」
シャトーが立ち止まったのは、地下三階にある古い鉄扉の前。古い文字で何か書いてあるが、俺には判別できない。
「さ、入るぜー!」
「ああ......いや、ちょっと待て」
いつの間にか手に持っていた鍵を差し込み、扉に手をかけていたシャトーを俺は止めた。いくらなんでも無謀すぎないか?3000~6000、もしくそれ以上あるコレクションの中からたった三つの品を探し出すなんて。狭い骨董店からお目当ての品を探すことすら大変なのに、その二十倍以上はあろうかというこの場所から探し出せるはずがない。
「どした? リリス坊」
「いや、その....そんな大量の物の中から探し出せるのかと思って......」
シャトーはなんだ、そんなことか、と言わんばかりに笑った。
「任せとけって! すぐに見つかるぜ!」
シャトーは手に力を籠め、扉をゆっくりと開けた。