影響と感情
「はー、やっと帰ったか」
「かえった!」
クルスが去った大広間で、シャトーはやれやれ、とソファに腰かけた。オーガは窓から手を振っているが、多分木が茂りすぎて見えてないぞ。
「もっとちゃんと調べてからきてくれってんだ!」
シャトーが言っていることは最もなんだが、俺はお前に聞きたいことがあるんだ。
「なあ、シャトー」
「ん? なんだ?」
「どうしてお前は人間の姿をしているんだ?」
「......今更か?」
まさかお前にツッコまれる日が来るとはな。本当はもう少し早く言おうと思ってたんだが、あの状況だったから言えなかったんだ。
「シャトー、にんげんなれる!」
オーガは知っていたのか。なんでもっと先に言ってくれなかったんだ。
「あの状況で聞けると思ってるのか?」
「それもそうか......」
シャトーはまー、ばれちまったモンはしゃーないな、と言うと、ゴホンと咳払いをした。
「実はだな、オレは昔はフツーの城だったんだが、ある時オーガたちの幻獣族が住み着いたんだ。ま、オレの元々の主人はとうの昔に死んじまったし、幻獣だろうが住んでくれるんだったら本望ってやつよ」
幻獣よりも先に人間が存在して、さらにこんなに大きい城を作れることが疑問だが、まあこの際いいだろう。もしかしたら人間じゃないかもしれないしな。
「そしたらよ、ほら、幻獣って魔力が強いだろ? だから、オレもあてられっちまってさ、意思を持ったって訳よ。そこからは早かったぜ? いつの間にか人の形もとれるようになってさ」
あてられてからの経緯が欲しいのだが? 強い魔力を浴び続けると少なからず影響を受けるのは確かだが、その過程が知りたい。そもそも他者に影響を及ぼすほどの魔力を持った奴がいないからな。
「そしたらあいつら喜んじまって、いろいろ教えてくれたって訳よ」
いろいろ、というのは社会常識ではなく強い魔術のようだな。あと言語か。
「ま、この姿は結構気に入ってるんだが、なんにせちょっとめんどくさいんだよなあ。やっぱり城のほうが落ち着くっていうか。ま、今回は特別な!」
まあ、今回は緊急事態だったしな。というか、つまりお前の中では炎鳥の戦いは緊急事態扱いされていないということか。
「まあ、だいたいわかった」
「シャトー、かっこいい!」
確かにそこら辺の自称美形よりはいい、モテそうな容姿ではあるが....
「そんなことよりリリス坊! とっとと話し会おうぜ!」
言うことを言い終えたシャトーがソファーから勢いよく立ち上がり、おれに詰め寄った。何のことだ。何を話し合うんだ。
「決まってるじゃないか! 仕返しだよ! し、か、え、し!」
人の体を得たことで一気に感情が豊かになったシャトーの言葉は、いつも以上にワクワクしていた。