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仕返しと策謀

「それでは、私はこれで失礼いたします」


 数分後、やっとショックから立ち直ったクルスが扉の前で一礼した。


「やっと帰るのか......」


 心底うんざりした様子のシャトーが早く帰れと言わんばかりにシッシッ、と手を振った。


「くるす、かえる?」


 オーガは自分を狙っていた相手の帰城が嬉しくないのか?


「....これからどうするんだ?」

「帰って国王陛下に報告します。私の仕事はそこまでですね」

「いいのかあ? お前、オーガの暗殺に失敗したんだぞ? 処罰されたりしないのかあ?」


 ここぞとばかりにシャトーがニヤニヤしている。まあ、それは俺も気になっていたが......



「処罰、ですか? そんなものありませんよ。『龍王は強すぎて私には強すぎた』と言えばいいんですから」


 まあ、強いのは事実だが....そんな簡単でいいのか?




「それに、ここ森にリリス様がいるとなればむしろ好都合。処罰など痛くも痒くもありません」


そう言ったクルスは今までに見た事がない顔をしていた。所謂、何かを企んでいる顔だ。


「どういう意味だ?」


 俺と、恐らくシャトーとオーガも、クルスの意味を測りかねていた。


「リリス様、私は先ほど『国軍編成に先立ってこちらに赴いた』と申し上げましたよね?」

「ああ」

「本来であれば私が先に龍王を暗殺し、それを国軍が討伐した形にする予定でしたが......」


 国軍が来ると。


「国軍が来るって、オレ達にとっちゃちーっもいいことじゃなんだが?!」

「つよいの、いっぱい!」


 確かに、というか正しくその通りだ。俺達が炎鳥と戦っている間に自滅していった大規模討伐軍がどんな規模だか知らないが、国軍となれば相当数の猛者は来るだろう。おそらく、魔術師団も含まれている。


「勿論、その中には名だたる戦士や術師も含まれてますが......ときにリリス様」

「なんだ?」




「リリス様は、自分を陥れた人間がのうのうと暮らしているのは、如何なものと思われますか?」

「いや......別に何とも....少し癪だとは思うが」


 そういえばいたな、そんな奴が。ここでの生活に慣れすぎて忘れていた。俺を陥れたのは何人かいたはずだ。医務長と、他数人の取り巻き。だがあいつらは王族専属の医者だ。いくら術や医学優れていたからとはいえ、国軍に編成されることはないと思うが?




「実は先日、()()()()の尽力でその医務長様が連行されまして......勿論、罪名はリリス様に関する虚偽の密告です。その医務長が『此度の国軍に自分を編成して、十分な活躍をしたら国外追放だけは許してほしい』と喚いているそうなんです」


 クルスはそこで言葉を切り、にやりと笑った。


「ですから私が国王陛下に『龍王の魔術は()()だから、彼を連れて行けば力になる』と進言するのです。こう見えて私、結構な"力"があるんですよ?そうすれば、どういう状況になるか、リリス様ならお分かりのはずです」


 ああ......なるほどな。


 ちらりと隣を向くと、クルスの言わんとしたことを理解したシャトーが、とんでもね―奴だな、と呟いていた。


 



 

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