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来てほしくない人 8

「えー・・・・あの、この度はリリス様と竜王様と....お付きの方には大変なご迷惑を....」

「いやいやいいってことよ! 勘違いなんて誰にでもあるからさ! それに、まあ、遠くから見ればオーガと炎鳥って割と似てるし、な?」


 謎の侵入者....所謂 「招かれざる客」 の魔術師、サランディア・クルスは目の前の人《城》の復旧作業を手伝いながら、何度も謝っていた。


いや、俺に同意を求められてもだな....確かに炎を吐いて空を飛んで大きな翼をもっている強いモンスターという点では似ているかもしれないが....


「オーガ、にてない!」


 ほら、当のご本人はこうやって主張しているし。


「確かに竜王様のお姿は先程拝見させていただきましたが、似ても似つかぬほど美しものでしたね....まるで宝石のような鱗、雄大な姿......あのようなものはそうそう見れるものではありません!」


 うっとりしながら言わないでくれ。あと怖いなその魔術。記憶の中だから....ガルーンのほうに炎鳥と戦っているオーガがちらっと映ったのか?


「ん!」


 オーガが満足気ならいいか。


「あと、単純に情報量の問題ですね。何この龍の森はまだ未知の土地。王国中心部からもそこそこありますし、一応入口のところに追放された囚人用の観察所みたいなものがありますけどね」

「まー・・・・だったら見間違えるのも仕方がないか」


 シャトー(人間)はよいしょ、と扉を直しながらオーガに聞こえないようにぼそりといった。俺も家具の修繕は終わったから、そろそろ完了か?


「よし! これで完了だ! オレが言うんだから間違いない!」


 お城(本人)が言うんだったら大丈夫だろうな。少し疲れたし、休憩でもするか?


「りんご、たべる!」


 どこから持ってきたのか、オーガが籠に入ったリンゴをずい、と差し出した。俺とシャトーと、クルスにはちょっと小さめのリンゴを。


「オーガ、ありがとう」

「お、オーガ気が利くじゃないか!」

「私もいただけるのですか!?」


 若干小さいけどな。多分腹いせだろうな。ソファに座りリンゴを一口食べると、蜜がたっぷり入っていてかなり甘かった。




「ところでおまえ、オレと張り合うなんて相当な腕を持ってるな。どこの術師だ?」


 リンゴを食べ終えたシャトーがクルスに本題を切り出した。それは俺も聞きたかった。俺の中では 「俺を王宮に招き入れた行き倒れのちょっと偉い魔術師」 だから、クルスに関する情報はオーガとシャトーとほぼ同じだ。まあ、かなりの腕を持つ人間だということは間違いないだろうが。


「ああ、まだ私のことをお話ししておりませんでした。幻獣の王たる龍王様に名乗るのは当然のことですね」


 リンゴを食べ終わったクルスはとても美味でした、とオーガに礼を言い、そのまま続けた。



「私はサランディア・クルス。王国魔術師団名誉団員です。司祭の家系でしたので....皆様からは 『死の讃美歌』 と呼ばれていますね。今回は、来る国軍動員に先立ちまして、秘密裏に 『黒龍』 の調査と、殺害の使命を国王様から直々に仰せ仕りまして、こうしてやってきた次第でございます」



 待ってくれ、情報の流星群はやめてくれ。どこから、どこから....


「えー、っと....?」

「んーと? オレはどこから処理していけばいいんだ?」


 突然もたらされたとんでもない事実に俺も、シャトーも困惑するしかなかった。

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