来てほしくない人 4
「!!!」
「オーガっ!」
男の短剣は確かに無防備だったオーガの胸に刺さった
はずだっただろう。
「......おや」
「..........」
驚きを含んだ声を出した男が見たものは、柄以外がなくなった(ルビ)短剣と、展開された魔法陣。そして、多分魔法陣を展開した俺の手。
「なんのつもりだ?」
そんなことはさせない。短剣がオーガの胸の伸びる直前に、とっさに展開した「ブラックホール」......魔法陣に触れたものを無条件に飲み込む魔術が短剣を飲み込んだ。
「リリス坊!」
シャトーがよくやった! とこちらに向かって飛び込んだ。
「....リリス?」
その直後に繰り出されたオーガの特大の光線を間一髪で交わした男は怪訝そうな顔をした。
「今、リリスとおっしゃいました?」
「ああ、言ったぞ?お前には関係ないだろうがな!」
保護者らしく、俺とオーガの前に立ったオーガが啖呵を切った。確かに俺の名前がリリスだろうとシャトーだろうとこの男には関係がない。こいつの狙いはオーガだということは先ほどはっきりと分かった。
ただ一つあるとすれば、俺はこの男に会ったことがあるかもしれない、という可能性だ。
「もしかして貴方、リリス・フルーレンとおっしゃるのでは?」
「......!」
なぜ俺の名前を知っている?俺はこいつの名前を知らないのだが?
「りりす、知ってる?」
「おいおいどういうこどだあ!?」
オーガとシャトーも驚いている。こちらが聞きたい気分だ。
「何故、俺の名前を?」
その言葉を聞いた男の顔が見てわかるほど固まった。
「な、な......」
何故そんなに驚くんだ? もしかして、俺は一度名前を聞いていたのか?それは失礼なことをし
「私の名を忘れたの言うのですか?!」
俺の思考よりも早く男が抗議の意がこもった声で叫んだ。
「あ、いや....その、以前にお会いしたことがるのであれば、その」
俺が答えに窮していると、男はそのまま叫んだ。
「リリス様! リリス様はこの私、サランディア・クルスを忘れたの言うのですか!?」
サランディア・クルス........ああ、もしかして....