来てほしくない人
「今日も気持ちのいい日だな、リリス坊!」
「そうだな。陽気も丁度いい」
「ぽかぽか!」
いつも通りの朝食を終え、俺とオーガ、シャトーは窓の傍で寛いでいた。採光性抜群の巨大な窓の近くは温かかく、狼の姿になったオーガは気持ちよさそうに丸くなっていた。
「今日はどうする? 素材でも集めに行くか?」
「いいな。何かいい魔術でもあったのか?」
「ああ、この前炎鳥と戦っただろ? その時に思い出したんだが....」
シャトーがよくぞ聞いてくれた! と言わんばかりに喋り出そうとしたとき、オーガの耳がピクリと動いた。
「だれかきた!」
「「えっ?」」
俺とシャトーは同時にオーガに聞き返した。誰かが来ただって? この森の最深部であるこの城に? 俺ですら100年に一度の奇跡扱いされたのだが?
「そんなことがあり得るのか?」
「どあのおと、きこえた!」
「いや、でもなあ....オーガが聞き間違えるはずがないんだよなあ。ましてや今はいつもより耳がいいんだぜ?」
それもそうだ。幻獣族の王たるオーガの力はすさまじい。シャトーが言ったことであれば信用度はかなり落ちるが今回はオーガだ。
「じゃあ....本当に誰かが来たのか」
「そうみたいだな」
すると、今度は僅かではあるもののコンコン、とドアを叩く音が聞こえた。
「......どうする?出ないのは失礼じゃないか?」
「そう、だなオーガを出すのはちょっとまずいしな......」
まあ、いきなりラスボスが出ていくのは問題しかないな。
「俺が行こうか?」
「いや、ここはオレが行こう。なんたってこの城の主だからな!それに不審者だったら驚いて帰ってくれるだろう?」
そうだな。確かに初手で燭台が浮いていたら俺なら帰る。
「シャトー、いく!」
「おうよ! 直ぐ帰ってくるからな!」
シャトーはオーガに自信満々に言うと、広間から出て行った。
「....誰だろうな。フロウさんだったら不法侵入してくるし....新手のモンスターか?」
「ん....?」
その時、俺とオーガの耳に大きな爆発音がはっきりと聞こえた。