うっかりとフラグ
「いやーオレとしたことがうっかりしていたな! すっかりもう錬成したと思っていたぜ!」
「つくる!」
終わったつもりでいたシャトーがほい、と魔導書錬成用の魔法陣を展開した。嫌に気が利くじゃないか
「リリス坊! 羽と魔法石以外の材料って何だっけ?」
「....水晶と、水と、クスノキの枝だ」
前言撤回だ。ただの気まぐれらしい。
「そうだったそうだった」
「ん! ある!」
こちらは本当に気が利くオーガが小箱に入っていた材料を魔法陣の上に置いた。褒めてくれと、言わんばかりにであったが。
「....流石だな。どこかの誰かとは違って気が利くな」
オーガが満面の笑みを浮かべたのと、シャトーがはて、と首をかしげたのがほぼ同時だった。
「『....祝福を』。できたぞ。『炎鳥の翼』だ」
「「おおー!」」
古い文字で「炎鳥の翼」と書かれた魔導書はうっすらと赤みがある表紙だった。光を当てると紅に輝いているようにも見えるな。
「やっぱりレアモンスターの書はきれいだなぁ....よし、リリス坊! 早速城に使ってみようぜ!」
「つかう!」
待て待て、これは防御魔術だが?攻撃する人がいないと効果を実証できないのだが?というか、テストしないままいきなり城に張るのは危険過ぎるぞ?災害級の攻撃で人生が終わるぞ?
「なるほど....じゃあ、モンスターの群れでやってみようぜ!」
「もんすたー、やる!」
こらオーガ、いくら可愛い顔をしているとはいえそんな物騒に聞こえることを言うんじゃない。....多分そこまでは考えていないと思うがな。
炎鳥の討伐が終了してから数日、俺達は非常に平和な暮らしを満喫していた。「最強の防御」を張ってからオガーの魔術練習で城が破壊されることを心配する必要が無い。それに食料の討伐も格段に楽になった。
だがこの森に来てから最も快適な生活を送っていた俺の元に、その生活を破壊する者が来るのは、そう遠くはなかった。