乙女の断罪 壱
「なんということだ........」
「申し訳ありません。このような結果になるとは、私も思っておりませんでした........」
国王の前で行われている「大規模討伐報告会議」は、かつて無いほどに静まり返っていた。
否、かつてと同じような光景だった。
「端的に申し上げれば、今回の『龍の森大規模討伐』は失敗、死人こそ出ていないものの、怪我人多数........そして、ほぼ全員が記憶を一部失くしている、という状況でございます。」
「うむむむ........」
大臣からの報告を聞いた国王は、厳しい表情だった。そもそも、今回の討伐は様子見程度の物を想定しており、これほどまでの甚大な被害が出ることは予想していなかった。しかも、多くのハンター及び王国治安部隊から、嘗てこの国に襲来した「黒い龍」の目撃情報が多数寄せられている。今回の被害の元凶はおそらくその龍で間違いないだろう。
「これ以上放置しておくと、我が国の脅威となるであろうか........」
「は、恐れながら申し上げますと、今回の御一件でかの黒龍を刺激してしまった可能性がございます。国王様に御命じなさっていただければ、国軍の出動も可能でございます。どうか、御判断を。」
「そうか........」
国王は、目を閉じ、しばらくの間熟考した。ガルーンだけでなく、彼もまた、黒龍の被害を目の当たりにしている。だからこそ、今回の「大規模討伐」で、龍の討伐も一つの目標であるとガルーンに伝えたのだ。
そして、失敗した。このままではまた、あの龍が国に攻めてくるだろう。
「うむ、分かった。この王の名において、国軍編成を命令する。」
王の顔に迷いはなかった。
「「「はっ!!!」」」
その後、国軍の具体的規模、出陣日程等の論議が行われ、王国会議は終了した。
大臣の声の元、国王がいつもの通り退出しようとしたその時、
「国王陛下、いえ、お父様と、皆様。少し、時間をいただいてもよろしくて?」
勢いよく開けられた扉の向こうには、兵士に木箱を持たせ、王宮の医務長を引きずったエミリア(とリコ)が堂々と立っていた。