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結婚式と収穫祭②

 広場の中心に舞台が設置されており、その前に料理や酒が置かれており、村人たちが思い思いに飲食していた。まだ、宴は始まったばかりのようだったので、そこまで酔っているものというのは少ないように見えた。こっちの新郎勢は酩酊組が多いのはなぜか、本当に不思議だ。


 僕達は舞台の裾、村人からは見えないように幕が張られている裏に待機することになった。新婦と新郎は舞台の両端からそれぞれ入るらしいが、離れたところにエリス達の姿を見ることが出来た。他の新婦たちとは異なり、ミヤの特性のドレスのため、一段と輝いて見えた。彼女たちの指にはアウーディア石の指輪が嵌められており、共鳴しているせいか、輝きがいつもより増していた。エリス達がこちらに気付いたのか、手を振ってきたので、手を振り返すと、何を思ったのか、マグ姉がこちらに近づいてきた。近くで見ると、いつもよりとてもキレイだ。


 「ドレスの感想は後で聞くわ。それよりも、この人達はどうしちゃったのよ。酔っ払ってるじゃないの!! こんなんじゃあ、式が台無しになってしまうわ」


 そういうと、手に持っていた鞄から薬を取り出し、僕に渡してきた。これを酔っている人に飲ませるようにといって、元の場所に戻っていった。受け取った薬を見ると、白い粉末のようだった。これを飲ませるのか。僕は、係の人を呼んで、水を用意してもらい、粉を飲んでもらった。すると、さっきまで酔ってふらついていた者の顔がいつもの顔に戻っていった。ライルも元に戻ったようだ。


 「村長さん。見苦しい姿を見せちまったな。緊張に負けて、酒に逃げ込んじまうなんて、オレもまだまだだな。あのまま、式に出てたら、レイヤになんて言われていたか。本当に助かった」


 ライルが礼を言うと、さっきまで酔っ払っていた連中も僕に頭を下げて感謝をしてきた。この人ら、どんだけ嫁さんを怖がっているんだよ。僕は、彼らの将来に一抹の不安を感じながら、苦笑いで感謝を受け取った。それにしても、マグ姉の薬は一体何だったんだ。酔いが一瞬で覚める薬って、一体……。


 舞台では司会者らしい人が、場を盛り上げつつ、新郎と新婦を舞台に誘導した。僕達は,舞台に上がると新郎と新婦が向かい合わせになるように立っていた。エリス、ミヤ、マグ姉、リード、シェラが僕の正面に立って、こっちを見つめている。ミヤの作ったドレスのデザインは魔界のものなのか、かなり大胆なものだ。ドレスによって強調され、よりスタイルの良さが映えている。美しいという言葉しか出てこない。


 ただ、僕を見る彼女たちの目は恍惚としたものであった。それもおそらくはカリスマ+のついた、この服のせいだろう。他の新婦も自分の夫となる新郎を見つめようと必死になっているのが伺える。新郎達も僕の嫁さん達を見ないように必死になっている様子だ。なんか、いろいろとすみません。ただ、ライルだけはレイヤを一心に見つめていたのが印象的だった。レイヤもライルを見つめている姿を見て、やはりお似合いに二人だなと感じた。


 それも一瞬の話で、すぐに会場の雰囲気に意識を戻されてしまう。新郎新婦を見たさに舞台にすぐ側まで村人が押し寄せ、ちょっとした暴動になりかねない事態になっていた。僕が前に出ようとしたが、暴動を抑えた者がいた。ゴードンだ。


 「皆のもの。落ち着きなさい。ロッシュ村長の前で恥ずかしいと思わないのか!!」


 その一声が聞いたのか、村人たちは舞台から少し離れた場所に移動し、静かに式の成り行きを見守っていた。さすが、ゴードンだ。村の皆にこれほど慕われている者はそうはいまい。やはり、ラエルの街を任せたいものだな。そんなことを考えながら、式が進行していく。流れ的には、村人達の前で、夫婦になる者達が夫婦になる誓いを立て、異議が出なければ、晴れて夫婦となるというものだった。今年が第一回目となるので、どうゆう流れで式を行うか、何度も協議され、この方法で落ち着いたのだ。


 司会者もそれに従って進行をしようとしていたのだが、どうゆうわけか、愛の告白という段取りにないことを言い始めたのだ。新郎側がかなりざわつき、司会者も間違いに気付いたが、村人はその催しに興奮し、収集がつかなくなってしまった。そのため、愛の告白をせざるを得ない状況に追い込まれてしまったのだ。


 これはかなりマズイぞ。何も考えてなかった。僕は、どうやら最後の方になるみたいだけど、五人分考えないといけないの? だめだ、全く思いつかない。こうゆう時は、周りを見て、落ち着こう。丁度、隣にはライルがいる。僕はライルに話しかけようと、覗き込むと、ライルの額から滝のような汗が吹き出していたのだ。焦点が定まらず、ボソボソと小さな声で呟いている。僕は、これは良くないと思い、ライルを肘で突いた。


 「ライル。大丈夫か?」


 「ダメだ。もうダメだ。オレは逃げ出したくなってきたぞ。村長さん、オレはどうすれば良いんだ?」


 いつになく弱気なライルに、僕は相手に素直に想っていることをぶつければ良いんだ、とアドバイスと言えなくもない事を言って、自分を落ち着かせた。僕もかなり混乱しているな。ただ、ライルのその言葉で、少し落ち着き、想っていることか、と小さく呟いていた。


 考えても仕方がないな。僕も素直に思いつく事を言えば良いんだ。その後の、ライルの名告白は村人の間で長く語られることになった。その後に続いた僕の告白は、なんとも言えず、地味なものであった。味噌汁がどうとか、訳のわからないことをどうやら口走っていたみたいだ。結婚式は僕にとっては早く忘れたい出来事になってしまった。


 その後は、新郎新婦はそのまま舞台を降りて、祭りに参加せずに、村人に見送られながら、共に暮らす家に戻ることが強制されたのだ。そう、いわゆる初夜を迎えるために。祭りは、このまま夜通しで行われることになっていて、村人達は広場に集まってるため、居住区は一部を除いて、静まり返っていた。


 僕達も屋敷へと戻っていった。道中は、ミヤに僕の告白のダメ出しを永遠と聞かされた。こんなに美女に囲まれて嬉しくない瞬間もないだろう。ただ、落ち込んでばかりもいられない。今夜、初夜だ。ここには五人の女性がいる。とても長く忙しい夜になるのだ。もちろん、エリスとリードは無理だろうが。


 そんな僕には秘策があるのだ。リリから譲ってもらったエルフの秘薬だ。これを飲めば、朝まで枯れないという一品だ。その薬が僕のポケットの中にある。これを行為をする前にひっそりと飲めばいいだろう。


 屋敷に着くと、僕達は居間に集まった。今夜のことについて話すようだ。その前に、とマグ姉が僕のポケットからエルフの秘薬を取り出し、これは今夜は不要になるわよ、と言ってきた。僕にはマグ姉の言っている意味が分からなかった。


 「ロッシュ。今夜は、シェラだけを相手にしなさい。シェラ以外は婚前とは言え、行為を済ましてあるわ。今夜はシェラに譲って、私達は公平になるわ。その変わり、明日からはちゃんと順番になるわよ。シェラもそれでいいわね?」


 シェラはいまいちよく分かっていない様子だった。初夜という文化を知らなかったらしい。マグ姉から教えてもらうと顔を真っ赤にして、どうして良いかわからない様子だった。それを見かねたのか、ミヤがシェラに初夜の権利を譲るように迫ると、シェラも腹が決まったのか、マグ姉の提案に従ったのだった。


 「それとロッシュ、この薬は別の機会にしましょう。一人くらいなら、こんな薬がなくても満足させられるでしょ?」


 そう言われて、黙っていたんでは男ではない。当り前だ!! と息巻いて、シェラの手を掴み、僕の寝室に連れて行った。


 その後、僕とシェラは共に一夜を過ごした。

 

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