婚約破棄って何かしら?
こちらでは久しぶりに筆を取ります。生暖かい目でご覧下さい。アルファポリス先行です。
「ルージュ・レッドライン嬢、お前との婚約は破棄させてもらう。」
ツラカ伯爵が私の目の前で婚約を破棄しようとしている。
我が家にとってはそれは非常ーに困る。
私、ルージュ・レッドラインは火の車になっているレッドライン男爵家の為に婚約したのだ。
我が領地はなにごともなければ、余裕で暮らせるくらい農地が広い。
ただ、産業があまりに農作物に特化した領地であるためめちゃくちゃ自然災害に弱い。
そう、何事もなければ…。
三年前は水害に遇い不作、去年は干ばつが起こり不作、今年はと言うと蝗の被害に遇い不作。
農民に対して支援を行っていたことでわずかに残っていた蓄財は底をつき困り果てた両親を見て私は決断した。
以前から婚約申し出のあったツラカ伯爵と婚姻し支援を取り付けようと。
ツラカ伯爵は現在42歳、それに対して私は12歳である。
明らかに年が離れた結婚に対して猛反発した両親に対して必死に説得し血の涙を流しながらもふたりとも最後は納得した。
当時の理不尽さを考えると今でも涙が出る。誰が趣味でもないのに脂ぎった吹き出物だらけの顔に加え、鼻毛は飛び出しっぱなし、歯もでっぱなしのアラフォー男性に誰が恋心を抱けるのだろう?
婚約した理由は、もちろん彼の持つ財力である。
顔は死ぬほど嫌いなので借金さえなければ、この男との婚約を変わってもらえるなら変わって欲しかった。
だが
「婚約破棄なんて…ひどい。」
心と裏腹なセリフをはかざるを得ない。
「僕の大好きなエレンちゃんを泣かせる君にはほとほと愛想が尽きた!!」
ツラカ伯爵の隣には私より明らかに年下の少女が一人。
ん、どっかで見たような…。
あ、絵画の先生が開いたサロンにいらしてた。
まずい、泣いた原因があれだとしたら…ロリータ趣味を暴露した伯爵からの婚約破棄より内容が…
「お前の絵を見て泣き出したと言うではないか!!猫の絵を見たつもりが醜い虫だらけの絵をみせられた…うぐ。」
伯爵からの暴露に焦り思わず口を正面から押さえた。ほぼ、聞かれてしまったよな。
「ほほほ…私としたことが目についた蝿を叩き落とそうとした為に申し訳ありませんわ。お許し下さ…」
口から手を離した瞬間…小さな影が落ちた。
思わず目を閉じてしまったが、目を開けるとそこには金髪が無くなったツラカ伯爵の姿が…
「わーすごーい。こんなふわふわすごいねーかあさま。」
と、ツラカ伯爵の頭にあったもので微笑ましく遊ぶエレン嬢。
それを見るツラカ伯爵はかつらが取れたことへの焦りの表情を浮かべている。
カオスである。
「ツラカ伯爵…お髪が」
焦って声が漏れてしまった。
「ああ!もういい!!お前の家にやった持参金はやる。その代わり二度と顔を見せるな!ルージュ嬢」
慌てて立ち去るツラカ伯爵をエレン嬢が追う。
「ま、ま、ってえ。ケーキ食べに行くやくそくでしょ。」
今のツラカ伯爵を目の前にしてケーキが食べられるエレン嬢を想像して感心せざるを得ないルージュ嬢であった。
ご拝読いただきありがとうございました。