72.信仰が無い?
それにしても、カイは男と話すとやっぱり気疲れするみたい。男嫌いだから仕方ないけれど、出来れば変わりに男の人達から情報を集める事が出来る仲間がいれば良いんだけど。眼が覚めたらカイに提案してみようかな。
町の広場だけあって変な事が起きる事無く、衛兵の人が定期的に巡回に来るだけで静かな夜。町の外はやっぱり火を焚いても危険で、落ち着かない。
なんで戦車の体になったのか疑問だったけど、たとえどんな能力を持っていても、平和ボケした日本人がファンタジーな世界を生きるなんて出来ない。魔物もいれば盗賊もいるし、法治国家ではありえない裏取引まである。これが良くも悪くも、自分にとって最適解な姿だったかもしれない。
朝になるまで夜空を眺めたり、新しい車体の調子を見たりしているうちにようやく朝が来た。
日が昇り始めると他の野営していた人達も起きはじめ、朝食の準備をしたり片づけをしてる。カイはまだ眠っているようだけど、ようやく体を横にして眠れたんだし、いまは静かにしておこう。
昼の少し前くらいにカイは眼を覚まし、大分すっきりした表情をしている。
「遅くなったが、まずは蒼転の剣のギルドに向おうか。 酒場とは別の情報が欲しい」
車体の上に移動したカイを確認し、ゆっくりと走り出す。
「誰かさ。 代わりに情報収集してくれる人、加えたらどうかな?」
「信頼できるかどうかから選別するのが手間だ。 だがそれらしい奴を見かければ、声を掛けてみるとしよう」
色々考えるところもあるんだと思うし、とりあえずは見つかってくれれば良いけど、何も出来ない事が少しもどかしいなぁ。
広場から大通りに戻り、昨日見かけていたギルド 蒼転の剣 ザイル支店の前に止まる。商人の町だけどダカツの町と違って、石造りで派手な装飾は全く無い。
「では少し待っていろ」
カイが一人でギルドに入っていくのを見届けた後、毎回外で待つのも慣れたかな。
もの珍しい眼で見られるのも相変わらずだし、これが終わったら、鎖とか荷網とかで丸太でも車体に括りつけてみようかな。そしたらもう少しゴーレムっぽく見えるかもしれないし、擬装ネットだっけ、それもあるから色々やってみようかな。
あれこれ考えていると、今回は誰一人扉や窓から飛び出してくること無く、たぶん30分くらいしてカイがギルドから出てきた。
車体に乗ったのでゆっくりと走り出す。
「妙だ。 信仰らしい噂はここでもないのだが、やはり神の気配がこの町ではする。 もうすこし街中を調べてみるとしよう」
信仰らしい噂がないってことは、誰かが秘密に信仰しているのかな。そうだとしたらあんまり良い感じじゃないかもしれない。




