表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
1章 旅立ち
6/313

6.とりあえず強いらしい

 村を離れ、次の村に向ってのんびり走っていると木が倒れる大きな音が響き、何事かと思い停車して音がした方を向くと必死な形相で2人の剣士が森の中から飛び出してきた。


「た、たすけてくれ!」


 何事か分からず、とりあえず助けてくれと言われたら助けたほうがいいはず。何事かと尋ねようとしたがそのまま横を通り過ぎていった。

 訳も分からず走り去る2人を眺めていると木をなぎ倒しながら現れたのは竜だった。前世ではゲームやアニメでしか見たことないドラゴン、戦車の自分よりも大きく恐ろしい牙と爪だがぎりぎり恐怖より興味が勝って耐える事ができた。


「我々に従わぬ愚か者達がまだ居たか。 さぁその身を白く染め上げるのだ!」


 その後ろには頭の先まで隠した真っ白な導師服に身を包む連中が変な事を口走っている。白く染めるってどういう教義なのかさっぱりわからない。ただどうみてもカルト教団以外の考えに至らないほど分かり易くて助かるけど、被り物にも太陽のような目玉のようなモノが描かれているし、なんでどの世界もカルト教団は白い色で腹黒いのを隠したがるのだろうか。


「あれがカルト教団かな」


「捕らえて拠点の場所を聞き出そう。 ただの人間ならそれほど拷問にも時間はいらない」


 確かに本の中では拷問をしていた描写もあったけど、思考が戦争よりで ただの人間 や 拷問 などの言葉が簡単に出てくるのが少し怖い。


「あの、出来れば穏便にですね?」


 カイは良く分からないのか不思議そうな顔をしながら首をかしげている。


「ではどうやって聞き出す?」


「え~、縛り上げて話すまで何も与えないとか」


 正直他人をどうにかして情報を聞き出す方法なんて知らないのだから、カイの言うとおりにした方がいい気がする。ただ拷問を生で見たくない気持ちだけが強いというか、本のとおりに目の前で順番に拷問されたら吐けない車体だけど吐く気がする。


「それで良いならまずそうしよう。 オレが奴らを捕まえる」


 剣を掴むとカイは車体から飛び降りる。相手はドラゴン1匹と10匹くらいの狼に人間が3人、カイなら一人でも大丈夫そうな気がするけど、むしろ大丈夫じゃないのは自分だ。

 車体を白い導師服を着た3人の方に向けると60式26口径106mm無反動砲の照準を向ける。


「やれ!」


 白服のリーダーらしき男が叫ぶとドラゴンが大口を開け炎のブレスが眼前に迫り、とっさに全速力で移動し履帯が激しい音を立ててその場から逃れる。


「とっ、とりあえず反撃!」


 ブレスを避けると同時にドラゴンに対して60式26口径106mm無反動砲 二門を発射、車体後方に煙を吐き出しながら撃ち出された弾はドラゴンに当たり大きな爆発を起こし煙を巻き上げた。

 ほっと一息しかけたが、煙が晴れると怪我一つないドラゴンが居る。


「嘘だろ!? 一応無反動砲って古いけど対戦車武器なのに!?」


 ドラゴンは大きく咆哮を上げ、怒りに満ちた目でこちらを見ているため怒らせただけでほとんども効果がなかったみたいだ。


「十烈覇竜剣!」


 カイの声に視線を向けると腕が無数に分裂して見えるほど凄まじい剣撃でカイは迫ってきていた狼の群れをばらばらに切り刻み、止まることなくカルト教団達に向っていく。あと2分もしないうちにたどり着きそうだ。


「その剣士を止めろ! 私があのでかいゴーレムをしとめる!!」


 リーダーっぽい白服がそう叫ぶと他の導師達は護衛をさせていた狼達もカイに向わせ、咆哮を再びあげたドラゴンが大口を開けてこちらに向ってくる。


「え、あっ、ちょっと!」


 狼でさえ怖いのに初の戦いがドラゴンってどんな状態!? 恐怖で動けずその場に止まっていると両前足で押さえつけられかじられ車体がひしゃげていく。


「ぎゃぁぁぁ!」


 痛みはないけれど叩かれ踏みつけられ、尻尾で吹き飛ばされたことで車体が拉げ悲鳴を上げてしまった。アルミ装甲とは言え8トンもある鉄の塊を振り下ろされた尻尾の一撃でひどく拉げさせるなんて考えもしなかった。


「10式戦車に変更! 変更!!」


 必死に叫ぶと光が身を包み一瞬で姿が10式戦車に変更される。


「姿が変わった!? 変異新種のゴーレムか!!」


 白服の導師のリーダーっぽい男は竜に命令を出しているっぽいのだけど、カイがそいつを倒すより先にこちらがどうにかしないと身が危ない。


「バック走!」


 全速力で後退し竜の追撃から逃れ急停車し主砲を発射、APFSDSが一撃で体を貫通し大穴を空けてドラゴンは絶命した。

 戦車なのだからそうそう死ぬはずもなく、冷静にやれば勝てる。でも冷静であるには平和な日本の一般人だった自分には経験が足りなさ過ぎた。


「はぁ・・・・・・こわかった。 カイそちらはどう?」


「こちらも捕らえたが二人とも自害してしまった。 最低限の気骨はあるようだが」


 カイは首を横に振ると血で汚れた曲剣ファルシオンをカルト教団から剥ぎ取った白い布で拭っていた。横には白い服が真っ赤に染まった人型のものが一纏めにされ布がかけられている。


「一人はある程度吐いてくれた。 ここから北西に教会がありてそこに20人位居るそうだ」


 ほんの一分足らずの短時間で情報を聞き出すのに一体何をしたのか怖くて聞けなかった。


ざっくりとした説明

APFSDS:

多数ある戦車の砲弾の種類の一つ。

当たって爆発する弾ではなく、貫通する事に特化したモノ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 穏便に話して事足りるなら腐らないと思うがな(笑)
2022/01/26 09:36 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ