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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
302/313

302.デュロ

 カイは小規模なギルド 硬殻の剣 の登録冒険者で、提携先で同登録扱いになる広域ギルド 蒼転の剣 の王都にもある支部、さらにそこからグリーナーさんが所属しているギルド 獄門 からの紹介で商隊を探す依頼を受ける事が出来た。

 グリーナーさんの案内で紹介をしてもらっているところ、聞こえたきた中にグリーナーさんは二つ名というか、打たれ強さと勇猛さからグレートブルというあだ名があるらしい。

 何はともあれデュロもグリーナーさんの紹介と言うことで、結構強面の試験官相手に木剣か長棒を使った試験を受ける事になった。ギルドの裏にある訓練場のような場所なので、自分も見ていられるのが助かる。


「弱いのはギルドに入れられないからね。 それなりに戦えれば合格だよ」


 試験相手である相手の強面の女性戦士の人は、グリーナーさんよりは細身とはいえ、立派な革鎧を身に着けて大柄、左手に木剣で右手に円形の小さな盾を持ってる。


「それじゃかかってきな!」


 合図とともに容赦も躊躇もなく、一歩踏み込みながら槍に似せた長棒をデュロは突き出した。試験官の女性はデュロを甘く見ていたらしく、みぞおち付近をとっさに右手に持っていた円形の盾で防いでいた。


「やぁぁぁ!」


 気合と共に何度も顔や胴体に足と狙うけれど、それでも相手の人には余裕があるらしく、盾と木剣で余裕で受け止められるか受け流されている。なんとなく動きが自分にも見えているのは、カイとイルレさんの訓練をいつも見ていたからか。

 試験はデュロの息が上がるまで続けられ、合格と言うことでギルドに登録された。なので正式にいくつもある探索部隊のうちの一つ、それに混ざる形でカイと自分も探すことになったのだけれど、カイは男の冒険者が居るのでかなり不機嫌。

 しかしアキュラさんがベールを使って顔を隠したように、カイもベールとマスクを付け、体の線を隠すような外套で身を覆っている。普段はそこまでしないのだけれど、やっぱり顔で相手に関わられるような事を避ける為に今回は着けて行くと言っていた。





 翌日から探索部隊と一緒に王都を西南の街道を進むけれど、特に何かあるわけでもなく通り過ぎる旅人や商人の人達は普通に道を歩いている。探索部隊の中で自分はゴーレムと言うことで、夜営に必要なモノを積んだ荷車を最後尾で牽引し、カイは自分の上に探索部隊を眺めていた。


「デュロは、今のところは大丈夫か」


 デュロは探索部隊の中に混ざり、槍を片手に歩いている。中古の革鎧を武具屋でしっかりと整備したもの、槍と剣は新品だけど手に馴染むまでしっかりと練習をしていた。何かあればカイと自分が命の危険が無いように助けるけど、出来れば危ないことにならなければ良いのだけれど。

 王都を出て二日、怪我をしたまま馬に乗って急いでいる旅商人を見かけ、探索部隊のリーダーが話を聞き商隊襲われているという。

 石壁で作られた野営地に籠って抵抗しているけれど、急いで救援を求める為に護衛の人達にけが人が出るのを覚悟のうえで囲いを突破してきたとのこと。

 1人にけが人を任せ、1人は王都に発見の報を伝えに走らせ、残りの皆は教えてもらった野営地へ急いで道を進み、街道から少し離れた場所にある石壁で囲まれた小さな野営地のようなもの、そこに籠ってなんとか持ちこたえていた。

 30人位の盗賊のようにみえるけれど攻めあぐねているのは、守っている護衛の人達が強いのか、それともけが人や死人が出るのを嫌って食料が切れるのを待っているのか。


「野郎共! やるぞ!」


 探索部隊のリーダーが声を上げ、各々武器を手に持つ、デュロは探索している部隊の中に混ざり、槍を手に一緒に駆けていく。

 他の探索していた雇われた人達を含めて10人、軽く考えて3倍なのだけれど、それでも誰も臆することなく向かっていった。


「リョウ」

「わかってるよ」


 車上に座っているカイに小声で答え、部隊には混ざらず、後方で探索部隊の荷物の入った荷車を牽いていたので、荷車と自分を繋ぐロープを外す。

 そして石壁に向かい、そっと念動力で襲っている人達を押し退けながら石壁の横に車体を付ける。


「商会からの依頼で救援に来た。 商隊の者達は無事か」


「救援か!? 護衛に怪我人はいるが、商人連中と荷物は無事だ!」


 カイが車体の上から声をかけると、石壁の中からは無事だと声が返ってきた。怪我人が居るのは仕方ないにせよ、死人が居ないのはよかった。

 何はともかく無事ならあとは盗賊の人達の排除しなくちゃならない。


「そのまま守りに徹していろ。 こちらは時期に終わる」


 カイは車上から降りると向かってくる盗賊の人達に向き直った。

 一方でデュロは躊躇なく相手の胴に槍を突き立て、そして引き抜くと返す動きで腰に下げていた小さなナイフを他の盗賊に投げている。カイの様に当たりはしないけれど、それでもとっさに避けようとしたり、警戒して囲もうとする事が出来ずにいるみたい。

 ただデュロの表情は焦る事もなくどことなく不機嫌そうで、戦いを楽しむとかそういう漢字には見えない。


「1~2人程度なら油断しなければ、今のところは大丈夫そうだな」


 カイは時折デュロの方を見ながら、自分の剣を抜かず買った槍を使い一突きごとに1人、軽く振り回し棒部分を叩きつけて1人と片手間に片付けている。


「だが、やはり未熟ではあるか」


 カイが持っていた槍を投擲すると、離れた場所で弓を構えていた人を貫いた。ギルドに雇われた人達も腕が良いらしく、次々と盗賊の人達は打ち取られ、盗賊の人達が減り5人になると逃げ出そうとしたものの、追いかけられ1人残らず打ち取られ終わった。


「無事で何よりだ。 怪我人で酷いものはこちらで運ぶが」


 探索隊のリーダーが商隊の責任者と話している間、手慣れた人が斧で盗賊の首を切り落とし、証明として革袋に詰め込んでいく。さすがにデュロはそれに関わらず、防具や槍についた血の汚れを落としていた。

 顔色は悪くないし吐き気を催している様子もない、ただいつもとは違って不機嫌な表情のままで、気分が高揚しているような感じもない。


「デュロ、気分はどうだ」


 カイが声をかけるとデュロはこちらに歩いて来るけれど、表情は良くも悪くもないというかただ不機嫌なまま、カイの近くに立ち止まると少し俯いた。


「あんまり、良くないです。 倒しても達成感も勝ったという実感もなくて」


 カイは俯くデュロの頭に手を置くと軽く撫でた。


「デュロ、戦士と殺人鬼は違う。 殺し合いを楽しみにしてしまえば、もう後には戻れない。 その気持ちを忘れるな」


「……はい」


 カイとデュロが話をしていると、探索隊のリーダーと商隊の責任者の話がまとまったらしい。


「よ~し! 全員王都に戻るぞ!!」

「探索隊は護衛しつつ帰還だ! 報酬は高くもらえるぞ!!」


 カイとデュロが車体に探索隊の荷車の革ロープを繋ぎ直し、隊列の最後尾をゆっくりと進む。カイとデュロは車上に座っていたけれど、あまりデュロの状態が良くな気がしてしまう。不機嫌というよりも、何かを考え込んでいるような。


「今回の依頼は終わった。 帰りは休もうか」


 カイは上部ハッチを開き、中に入ると普段はカイが使っている布団にデュロを横に寝かせる。


「デュロがやらなければ、オレが盗賊を殺していた。 そして殺さなければ戦えない商人達は、殺されていたか奴隷にされていただろう。 捕えたとしても、処刑されるだけだ。 やる以外方法はなかった」


「カイさん。 私、人を殺して」


 実感が出てきたのか、デュロの目に涙のようなものが浮かび始めていた。


「体と心が疲れている今は休め。 起きたらまた話そう」


 目を瞑ったデュロの手をカイは握り、優しく頭を撫でながら落ち着き眠っても一緒に居続けた。

 デュロは高揚するようなこともなく、気分が悪くなるタイプで少しほっとした半面、徐々に麻痺していきいつかは慣れてしまうことになるんだろう。

 それでも、デュロがその道を進むというのなら、自分は止める事はない。

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