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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
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299.二度目の王都

 護衛の人達と一度合流、その後に2日ほど休んだ後再び分かれ、王都につくとすぐに書状を携え、ソミールレイル侯爵の下にカイにアキュラさんにベレッタさんと向かう準備を始める。

 皆はいつも通り広場に待機だけれど、兵士の詰め所にお土産兼賄賂を持参しつつ訊ね、酔っ払いや盗人などに気をかけてもらえるようにと、相応に銀貨と料理を兵士長にイルレさんが渡して話を付けてくれた。


「まぁ気にするな! 定期巡回の時に広場には休憩を兼ねて立ち寄る様にしといてやるさ!!」


 小さな儲けよりも安全を優先、仕事中の兵士の人達には銅貨一枚分、兵士長の人には二枚分安くすると言う事で、頻繁に来てもらえることを快諾してもらえた。


 広場ではカイとアキュラさんにベレッタさんとお土産と言うか、献上品を込めて色々持っていく。

 一つ目は侯爵夫人お気に入りかつ専売のバターミルク石鹸が詰まった箱。

 二つ目はエイケさん力作のお味噌が入った壺。

 三つ目は新たに作った山羊のミルクと高い果実油で作ったヤギミルク石鹸もベネリさんの力作。

 最後の四つ目は約束していた稼いだお金の貯えから、その三分の一を革袋に積める。

 品物の用意できたとき、イルレさんが兵士の詰め所から戻ってきたので、大変だけどまず先触れというか尋ねると言う事をソミールレイル侯爵邸に先に尋ねてもらい良い日取りの確認を取ってもらった。

 五日後に尋ねてくるように折り返しの連絡が使用人からあり、まずは当日まで品物の買い出しや今遅れている護衛の人達の牽引ゴーレムを修理してもらわないと。



 広場で毎日開く屋台の方では、約束した通り昼頃と夕方頃に一回ずつ兵士の人達が巡回ついでに立ち寄り、休憩と食事をしていく。


「ミソナベもう一杯!」

「ミソ魚焼きをくれ」

「エールが欲しいが、仕事中は仕方ないか」


 ほぼ決まった時間の上に少し割引しているけれど、兵士の人達が頻繁にくるので良い過ぎた人や表立って探ろうとしてくる人はまったくいない。


「さて、そろそろ巡回に戻るぞ」


 兵士の人達が食事兼休憩を終え、そのほとんどが巡回に戻り始める。その中で広場で問題が起きないようにと2~3人の兵士が残り、今度は一般の人が主なお客になる。


「ミソナベを持ち帰りで鍋一つお願い」

「ミソ魚焼きと雑穀パンをくれ。 大盛りで」


 バターを加えるようになったので味もかなり良くなったらしく、余り匂いを感じない自分の嗅覚にも、味噌鍋と味噌焼肉にミソ焼き魚から美味しそうな匂いが漂っているのが分かる。

 匂いに誘われたのかふらりと立ち寄る人や、味も良く具材も多いのに比較的安いと毎日混雑していた。


「この籠いいわね。 一つくださいな」


 少しだけれど、貴族の裁縫を学んだ皆が蔓を編んで作った籠の側面、そこに一つだけ装飾となる編み込みを入れたものは女性によく売れる。普段作っている三つ編みを利用した少しだけ丈夫な蔓籠、それにほんの少しだけ装飾を加えただけで値段は変わらない。

 ステアー商会は順調、当の狼のステアーは立派な大人になり、美しい灰色の毛並みと2mを超える気風ある姿に、何を勘違いしたのか売ってくれと言ってくる人も出てきていた。






 侯爵邸を訪ねる前日、遅れて到着した護衛の人達のゴーレムは、状態の悪化はしていないようだけれどやはり動きが随分と遅い。

 一部が壊れた牽引ゴーレムをゴーレムを取り扱っているモヒカン商会まで移動させ、入り口で修理を頼むと商会の裏に案内されモヒカン商会長が出てきた。


「よし、お前らアレを持ち上げろ」


 すぐに他のゴーレムに命令し、壊れた車輪と車軸を見ながら他のゴーレム達に持ち上げ支えさせ、小さな杖のようなものを持って下に入り込んで状態を調べ始める。やっぱりゴーレムに詳しいので、壊れた原因をしっかりと見極めるのだろうか。


「こりゃぁ、思ったより苛酷に使ってやがるな」


 モヒカン商会長がゴーレムの下で何かを叩く音が響き、状態を調べているらしい。何かを引きはがす音がしたあと、車軸のようなものを掴んだまま車体の下から這い出してきた。


「さて大体わかったが、前よりさらに丈夫にしてやる。 金次第だがな」


 持っていた車軸みたいなものを地面に置くと、従業員と思われる人達に机と椅子を用意させ、そこに座ると木板にアレコレと書き込む。一緒に来ているイルレさんとハスタルさんも、席に着くと話と言うかゴーレムについて纏めていく。

 暇な状況ではあるけれど、車体の上に居るカイと共に様子を見ている。特に口を出す必要もないし、牽引ゴーレムが丈夫であることに


「希少な鉱物を使うが、まぁ出来だろ。 金は大目にもらうぞ」


 イルレさんは躊躇なく、カイから渡されていた金貨の入った革袋を机の上に置いた。


「任せるよ。 ゴーレムに関しては信頼できるし、旅の安全には変えられないからね」


 修理以外でどのようなオーダーをしたのかわからないけれど、安全はある程度はお金で買える。それはこの世界でも同じ、護衛の人を雇うのも、巡回する兵士に気をかけてもらえるのも、多くの意味を含めてお金のやりくりの結果、だから使う時はカイも止めないし追加で渡した予算を躊躇なく使う。


「金払いが良いな。 10日くらいはかかるが、まぁ結構待つことになるのは覚えておけよ。 発注してもそう簡単に集まる材料ばかりじゃねぇからな」


 モヒカン商会長は従業員に木板を渡して店内に戻っていった。とりあえずこれで一旦はお終い。モヒカン商会長の腕を信じて、もっと丈夫になって出来上がるのを待つだけ。






 ソミールレイル侯爵邸

 当日、門番にも話が通っていたので、スムーズに中庭へと案内される。以前よりも血色がよくなった侯爵夫人が中庭に設けられたテーブルで待っていた。

 ベレッタさんは丁寧に久しぶりということで貴族らしい長い挨拶が行われ、その後に戻る様に命じた本題に入った。


「ベレッタの男爵家、第一夫人の息子が二人とも病死したのです。 正当な後継者はベレッタだけとなりました」


 確か女性の貴族の後継者は、夫を迎えて家を残すだったっけ。もし後継者誰一人いなかったら、親戚などから養子を迎えるとか。


「ベレッタ、あなたはどうしたいですか」

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