表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
293/313

293.お金の欲望

 夕方になるまで移動を続け、火が完全にくれる前に街道をすこしだけ逸れて夜営の準備を始め用としたのだけれど。

 少し離れているものの、やはり後を付いてきた人達は付かず離れず、夜営の準備を始めているようで、何かしようとしているのか準備が少ない。焚火くらいはあるようだけど、それだけで毛布になりそうなマントさえ持っていない。


「夜、留まって眠らずに行く方が良いかもしれない」

「確かに、あの人数で来られたら強行突破されてしまう。 食事も早めに」


 ハスタルさんが状況から夜にも移動する事を提案し、イルレさんも同じように注意し休まないようにした方が良いと考えているみたい。

 でも、本来眠っているはずの夜の移動は皆の負担になる。気を付けたって荷車はどうしても揺れるし、睡眠不足になってしまう。


「いや、皆は休め。 オレとリョウが終わらせる。 こちらが譲渡して穏便に済ませようとしても、選択しなかったのだからな」


 カイは剣の柄に手を置き、少し機嫌が悪そうにしている。大事だったり殺人にならないようそれなりに気を付けているだけに、皆が頑張って稼いだお金を奪うために襲ってくるなんてイライラしても仕方ない。






 夜も深くなり皆が眠りにつき、今日は警護の4人とも起きて警戒している。カイもステアーを撫でながら車体の上で眠らずに警戒。

 夜の間も旅をするような人の気配が全くなくなった頃、松明を握り皆剣に槍に弓とこれから襲って来ますと、もうこれはあからさまに狙っているのがわかる姿でこちらに歩いてくる。


「来たよ……」

「11人、やっかいだね」


 護衛の人達は皆武器を掴み、荷車に近付けないように構えた。

 自分はカイを乗せたままゆっくりと動き街道へと出る。


「ステアー、行け」


 そんな中カイは車体の上から降りると、木剣とナイフを手に向かってくる人たちの方に歩いていく。ステアーは静かに車体の後方から飛び降りると以前の様に夜の闇に紛れて行った。


「最後の警告だ。 帰らないのなら命を奪う」


 返答の代わりに矢をつがえた姿が目に入った。念動力で丸太を投げようとしたとき、すでにカイが投じたナイフが弓を持つ男の首に突き刺さる。

 ナイフが突き刺さった男は弓から手を放し、首をかきむしる様にしたのち地面に倒れた。

 何が起きたのか良く分からず、唖然とみている人達に向かって走るといつもデュロとの練習に使っている木剣を右手に握り締め、相手の腕を斬るのではなく叩きつけると骨が砕ける音が夜に響く。


「ぎゃぁぁぁ!!」


 剣を使うほどでもないってことなのだろうけど、切るよりも見た目がえげつない。打ち付けられた腕は折れ曲がり肉が裂けて骨が見えている。

 腕に足、首や頭部と木剣を打たれたところが折れ曲がり、まともな死に様とは思えない状態なのだけれど、それでも抵抗して仕留めなければ、あの剣や槍は皆に振り下ろされる。

 強盗や盗賊にお金を渡して穏便に済ませても、それはきっと手軽にお金を得られる方法だと考えて、もっとそう言った行為をするから先々を考えれば仕留めるか衛兵に突き出すしかない。それにお金を渡したって安全とは限らない。


「畜生! あと少しで大金が手に入ったってのに!!」


 一番後ろにいたらしい一人は声を上げて逃げると、離れた場所に繋いであったらしい馬に飛び乗り離れていく。カイはまだ残る3人を仕留めている最中で追いかけられない。


「リョウ! やれ!!」


 カイの言葉に12.7mm重機関銃の銃弾を実弾のまま狙いを定め、発砲すると大きな音と一瞬だけ発砲による光が起きる。

 弾丸は男の胴体を貫き馬の首の一部にもあたったみたい。馬は大きく暴れまわり、男を振り落とすと何度も踏みつけ絶叫の声だけではなく骨が砕ける大きな音が響いた。

 1分ほどすると徐々に馬も大人しくなり地面に倒れ、ステアーは暗闇から姿を出すと馬の首をしっかりと噛み止めを刺したようだ。

 馬に踏まれた男の方は、もう息絶えているみたいというか、すでに腕や足が馬に強く踏まれて千切れてしまっていた。

 カイが木剣で倒した人達も、首が折れて死んでいたり、頭部を砕かれたり、手や足が折れて骨が見えた場所から酷く出血して倒れて動けなくなっている。


「ステアー、馬は非常食になっても味はそれほどでもない。 夜食は猪肉を用意してやるから辞めておけ」


 カイと共に野営地まで戻り、血で汚れた木剣を夜営に使っている焚火に投げ込む。ステアーは納得したのか、馬から口を離すと駆け足でカイの足元まで戻った。


「1人だけまだ生きているようだけどどうする?」


 最初に腕を折られた人がまだ生きていたようで、ハスタルさんが動かないように手斧を突きつけている。


「もはやその腕は元には戻らん。 まともに働けず、元よりまともに働けても犯罪で稼ごうとした奴など、生かしておいてなんの役に立つ。 殺してしまえ」


 カイが言う通り、あの街道沿いにある大きな休息広場にいたというか、見ていた人全員が追いかけてきたわけじゃない。あのとき30人近く留まっていた中で、追いかけてきたのは10人くらい。やっぱり気にはしたり小さな噂になったとしても、生活が少々大変な旅暮らしだとしても、やはり恨み辛みに妬みがあっても襲わない事を選んだ。

 それだけでも大きな違いで決定的な差、追ってきた人達は事情はあれど、暴力をもって奪い富を得る方法を選び実際に追いかけてきた。


「そりゃそうだね」


 ハスタルさんは躊躇なく命乞いをしている男の頭に斧を振り下ろす。みんなが寝ているからまだよかったけれど、これをみんなが見るのは過去のトラウマを思い出すかもしれない。

 頭部を真っ二つにされた状態を見れるだけ自分も慣れたのかもしれないけれど、自分自身が辛い目に会ったのとでは慣れるにも違いがあるし、どれだけ辛かったのか想像もできないのだから。


「しっかしすごいゴーレムだね。 カイさんが誰にも譲らないって言うのも良く分かるよ」


 斧に着いた血などをボロボロの布でぬぐい取りながらこちらに歩いてくる。やはり護衛とか色々な仕事をしていただけに、命のやり取りについては自分よりも非常になれていた。

 護衛になってもらった人達も、躊躇なく死体を街道から外れた場所に引きずっていき投げ捨てている。


「リョウは相棒だ。 欲しければ信頼を得てオレを殺す事だな」


 焚火の横でカイはステアーの食べる肉を焼きながらそう答えると剣の柄に手を置いた。

 ハスタルさんは首を横に振ると苦笑する。


「そんなつもりはないよ。 荷車の中型ゴーレムだって魔法が使えないうちらが苦労して魔力補給してるんだし、こんなでかいの魔法が存分に使えないと無理よ」


 あぁ、そういう感じで認識されているからここ最近欲しがられることが無いのか。かなり大きいからその分魔力が必要で、ゴーレムがモヒカン商会長の販売で広まったおかげでそう言う事が広まったのかな。


「今夜はオレがステアーと共に夜警をする。 片付いたのだから3人は休んで早朝から頼む。 夜明けまでさほど時間がないかもしれないがしっかり休め」


「……私が残る。 昼間も寝て休んでいたから余裕もあるから」


 槍を持っている護衛の人が残り、ハスタルさんを含めた3人が今夜は休む。

 肉を食べた後、ステアーは車体の上に戻りいつも通り寝転がりながら警戒、自分も同じように今夜もしっかりと警戒する。なんにせよ自分は眠る事などできない身なので、夜は懐中電灯で車内で役に立ちそうな雑誌を読むかじっと考えている事しかすることはないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ