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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
291/313

291.旅は道ずれ世は情け じゃない

 暗い空が少し明るくなり始めた頃、森の方から何かが近付いてきたらしいのか、ステアーは起き上がると車体の上で唸り声をあげずに毛を逆立てている。

 何かが近付いているのだけれど、視線を向けるだけでは何も見えない。出来ればライトを付けたいところだけど、余計な人達がいる以上そんなことはできない。


「何か……来たな。 全員起こしてきな」


 警戒に当たっていたハスタルさんがもう一人の護衛の人に声をかけ、起きた護衛の4人で足場からステアーが睨んでいる森を見ている。


「……獣、でしょうか」

「朝日が出かかっているのに、虫や鳥の声さえ聞こえない。 まともな相手じゃないよ」

「不味いかもしれない」

「最悪ここから引き離して撒く」


 少しして木々の間から体長3m近い巨体が見えてきた。額に二本角が生えた人型、そして手に丸太のようなこん棒を持つ鬼だ。


「オーガだ!」

「あんなものに追われてたのかい!!」


 どうやらかなり不味い分類らしい。

 4人は足場から土壁の外に飛び降りると、オーガが土壁に近づかないようにと誘導するように槍と弓で攻撃を仕掛ける。

 厳しい相手でもちゃんと護衛として働いてくれる。すごく信頼できる良い人達だ。

 そんななか別方向に走る音に気が付いて視線を向けると、あの3人が逃げ出していた。最初から魔物を押し付けて、自分達は逃げる算段だったのかもしれない。でも、それは許さない。

 鎖の投網を投げ3人を纏めて捕える。重石代わりに投網の端には石などが縄で括り付けられているので、簡単には逃げられないだろう。





 遠巻きに野営地から引き離すようにハスタルさん達は頑張っているけれど、あんな大きな丸太のようなこん棒の一撃を受けたらただではすまない為、遠巻きやチクチクと攻撃するくらいしか出来ないらしく、効果があるようには見えない。

 イルレさんは皆を守る為に足場の上で剣を抜いてはいるけれど、手を出してもどうにもならないとおもっているようだし、自分が手を出すべきか考えているとカイが車体の上に上がってきた。

 数日間じっくりしっかり休んでいたので体調も良いらしく顔色が良い。


「はぐれオーガとはな。 リョウ、思いっきりそこの木を投げつけてこちらに注意を向けろ」


 伐採して乾燥中だった丸太二本を念動力で持ち上げ、エンジンを全開に回して一本をオーガに向かって投擲。エンジン音に気付いたオーガはこちらに振り返っていたので、防ごうとした腕に丸太の破片がいくらか突き刺さったようだけれど、倒しきれるものではなかったらしい。

 怒ったようにこん棒を振り回し、こちらに向かって走り始めた。


「もう一本用意しろ。 あとはオレに任せておけ」


 カイは車体から飛び降りると剣を抜いてオーガに向かって走り始めた。

 オーガはカイを気にせず、新しく持ち上げた丸太を睨んでいるようで、その真下にいる自分が何かをしていると思ったのだろうか。

 再び投げた丸太はオーガが雄たけびと共にこん棒で叩き落としたけれど、オーガはカイによって左足を膝から斬り飛ばされ地面に倒れる。カイはそのまま倒れたオーガの上に飛び乗り素早く首に剣を突き立てた。

 聞こえてくる何か硬いものが砕ける音と共にオーガの腕が一瞬動いたと思った後、そのまま地面に倒れたまま動かなくなった。

 血で汚れた剣をカイが引き抜くと布でふき取る。


「思ったより脆い。 これならまだ鉄巨人の方がましだったな」


 カイはどこかつまらないものを相手にしたような、そんな言葉を言いながらオーガから降りるとこちらに向かって歩いていく。怪我一つないし調子も取り戻したようでよかった。


「本当に、カイさんが居れば不安なんてないねぇ」


 イルレさんはどこか呆れながら剣を鞘に納める。自分も良くカイだけいれば自分自身は不要なんじゃないかと思うことがある。

 自分が塞いでいた土壁から移動するとエイケさん達は恐る恐るオーガを捌くために出てきた。魔物のオーガだって立派な商材になるらしく、これから頑張って解体するらしい。

 とりあえず大変な事は片付いたけれど、こちらに魔物を押し付けようとした3人組は、護衛の人達に縄にくくられて引きずられてきた。

 ついでに鎖の投網も回収して車体の上に載せてくれた。


「さて、どうしようか」


 理由はどうであれ見知らぬ商会に魔物を押し付けて逃げようとした事実は確実。イルレさんは腕を組みながら青ざめている3人を見下ろしている。


「とりあえず口輪を噛ませて、近くの町辺りで衛兵に事情を話す。 どこのギルドに属していても、他者に魔物を押し付けて逃げるなんてろくでもないことだからね」


 ハスタルさんの話ぶりでは、ギルドに所属するには最低限の倫理観っていうのはある程度はあるらしい。つまりこの3人がしたことは、倫理観があまり発達していないこの世界でも許されない事になる。


「ま、そうなるね。 せっかく休んでいたのにごたごたまで起きて、とんだ厄介事だよ」


 話し合いの結果、ハスタルさんを含めた3人でゴーレム牽き荷車を使用し、問題を起こした3人を町に引き渡す事になった。

 その間の護衛は1人だけになるけれど、10日以上留まっていた中で危険な事は特になかったので、交代でイルレさんが夜を見回る事で対応することになっている。自分も注意はしているし、狼のステアーも夜は気を付けているから大丈夫なはず。


「それじゃ、あたいらがこいつらを町に突き出してくるから、その間は頼むよ」


 それから昼過ぎ頃、解体の終わったオーガの素材を乗せ、縛り上げた3人を荷車の後ろに括り付けてゆっくりと野営地を出ていく。


「ついでに色々買ってくるから」


 護衛の人が軽く手を振り、それをみんなで見送った後出入口に再び自分が収まり門の代わりに閉じる。

 カイは調子を整え直して元気になったけれど、まだもう少しここに留まって体調を崩している皆の調子を整える予定。

 急ぐ旅ではあるけれど、そこそこの旅商会としてみんながいる以上無理は出来ないから。

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