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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
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290.休息中の遭遇者

 休息をして10日、予定よりものんびりしているのは思ったよりも皆が疲れていたことがある。

 体調をすこし崩す程度だけど、しっかりと休むのに越したことはないし、ベレッタさんについては寝込んでいる。やはり慣れない馬車旅は予想以上に疲れがたまっていたみたい。


「寝込むときは、体の疲れからくるものが多いということですね」


 ちょうど良いとアキュラさんとベレッタさんは体調と病気について話し合っていた。神様に祈る事もするけれど、治療するという事から色々考えている。


 のんびりとステアーは川に入っては魚を捕まえ、体が濡れては車体の上で昼寝しながら天日干しになっていた。ステアーは昼間はほとんど眠り、夜はじっと周囲を警戒している。シグさんもステアー用の夜食を作るので、それを夜を警戒しているハスタルさん達に渡すのが日課になっていた。



 わりと少しずつ改良している土壁、悪用されたら怖いので出ていくときはもったいないけど壊す予定。

 そして野営用の休憩所はかまどだけではなく、干した毛皮や燻製干し肉などがあるためというか、時折臭いに誘われて肉食の獣が来るのだけれど、追加の肉と毛皮になるだけで特に危険な事はない。

 お肉は狩猟して燻製干し肉、皮はなめして服にしたりベッドや掛布に使ったりと幅は広い。

 骨も色々使い道があるし、料理の出汁を取るのにも簡単な道具の材料になったりと便利。


「頭の骨はリョウに飾るよ~」


 少しだけデュロの美的感覚を疑わしく思ってきている。動物の頭骨を自分に付けたがるというか、ここに留まっている間に猪と鹿の頭骨が6個くらい車体の投網に飾られてしまった。


「あとね。 これ作ったんだよ」


 デュロの手には骨を削って作ったらしい釣り針と、魚取りに使えそうな銛が出来ている。出来の善し悪しは良く分からないけれど、デュロは工作が好きなのかもしれない。

 ただなんで骨細工なのだろうか、木でも良いと思うのだけど。


「デュロ、そろそろ刺繍の練習時間ですよ。 次は花と月をやりましょうね」


 シグさんがデュロを呼ぶ。刺繍もやっぱり貴族であったベレッタさんは色々知っていたので、練習量はそこそこ増えているみたい。


「は~い……」


 すごく嫌そうな顔をしながら返事をすると、シグさんが待っている休憩所に歩いていった。

 やっぱり刺繍はデュロは苦手と言うか嫌いなのは変わっていない。木工と言うか骨細工は好きなのになんでだろう。






 ここ数日何も変わらない落ち着いた夜。今夜は半月によって照らし出され、木々が揺れる音が普段よりも大きいと感じた時、怪我をした3人が暗い森の中を歩いているのが見えた。

 護衛の人が持つ松明の火が見えたのか、こちらに向かってくるように進行方向を変え、遠巻きにも見えるのは革鎧を着ているし、腰に短剣を差して手に槍を持っている。


「魔獣に襲われて怪我人がいるんだ! 助けてくれ!!」


 年齢はたぶん20代前半くらいで男1人に女性2人、怪我をしているのは女性の1人、なんとな~くいままでとは違う嫌な予感と言うか、男の顔が月夜でもわかるくらいの美形なんですが。

 それはともかくこの世界に来てからゴブリンとかワイバーンとかドラゴンとかは見たけれど、魔獣と呼ばれるものは見たことが無い。

 襲われて困っているというなら、最低でも助けるべきなのだろうけれど、村での一件があってからなんとなく疑ってしまう。

 土壁に面する形で作った足場から護衛の人が声を上げる。


「そのまま待ちなさい! それ以上近付けば敵対者とみなす!」


 警戒に当たっていた護衛の人がどうしたものかといったん下がり、寝ていたイルレさんとハスタルさんを起こして事情を説明した。


「うーん。 本当に怪我人だったら助けた方がいいけれど」

「また嘘だったり厄介ごとだったりしたら困るからねぇ」


 2人ともあまりその気になれないようだけれど、さすがに見捨てるという事も出来ない、そんな判断をしているみたい。


「せめて土壁のすぐ前で休むくらいは許可はどうだろうか」

「魔獣が分からないけれど、何かあったら対応できるくらいがいいし、その許可でいいんじゃないかしら」


 話し合いで中に入れる事は出来ないけれど、食べ物と傷を塞ぐ布と薬を渡し土壁の前で休む事を許可する事に決めた。


「これで治療しな。 土壁の近くで休むのは良いけれど、中には入れられないよ」


 ハスタルさんが足場から薬と食べ物を入れた籠を縄で下ろし、受け取るように促す。


「ありがとう、……ございます」


 男は少し睨むようにこちらを見るけれど、こちらとしても妥協した範囲内だし、そもそも助ける義理も何もない赤の他人、善意で薬や布を上げるわけだし睨まないでほしい。

 こちらに歩いてきた3人、怪我をしている女性は足を引きずっているようにしているけれど、それほど外見から怪我の様子が見えないし、くじいた程度じゃないだろうか。


「見たところ酷い怪我ではないだろう。 それにうちらは商会、無料で手当の道具と食料を分けただけ善意ってもんだよ。 無理に中に入ろうとしたら怪我じゃな済まないよ」


 ハスタルさんはそう言うと、斧を腰から外して手に掴んだ。威圧を兼ねているんだろうけど、やっぱり見た目男のハスタルさんがやる意味はあると思う。こちらを侮っている様子も無理強いするような様子も見えないし。


「魔物が近くにいるんだ! もし迫ってきたら受け入れてほしい!!」

「お願いします! 私達だけじゃ手に負えないんです!!」


 怪我をしているらしい1人は声を出さないけれど、残りの2人は魔物が来たらと訴えている。

 もちろん来たのならみんなの安全の為に戦うけれど、それでもやっぱり中には入れたくない。赤の他人だし、土壁の内側は仮でも皆が暮らしている場所、前回の事もあるし知らない人達なのもあって断るかな。


「その時考えるよ。 それにあんたら冒険者だろ。 町や村に行くならともかく、商会に魔物を押し付けようと考えてやしないだろうね」


 ハスタルさんが言うまで余り考えてなかった。自分が生き残るために他者や他グループに魔物を押し付ける、あり得ない事じゃないし、その危険性は皆が居る今は特に気を付けないと。


「ばっ、馬鹿にするな! そんなことするつもりはない!!」


 大声を上げて否定しているけれど、男の人からは怒っているようで動揺が少しだけ見えるし、女性は怪我人の手当てをしているけれど、手際が微妙に悪いというか引きずっているように歩いていたのに、腕に薬を塗っているように見える。

 一度怪しんでしまうと何もかもが変な気がしてしまう。

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