12.罪悪感
「リョウ、初めて人を殺した気分は良くないだろう」
カイの言葉に身が一瞬固まる。
「そりゃ・・・・・・良くないよ。 前世でもした事がないし、吐きたいのに吐けない辛さもあるし」
小声でカイだけに聞こえるように話すと、カイは少し心配そうな表情になる。
「あの世界は確かに平和だった。 目から写る世界もTVに写るニュースも平和だった。 それでもここはそうじゃない」
カイの話しぶりだと人形だった時の記憶もあり、たまたまTVが見える位置に置いてあったため、ニュース等を記憶していたみたいだ。
「オレが創作された世界よりはマシでも、ここは戦地と思ったほうが良い。 辛い者に対して掛ける言葉は知らないが、それでもオレが傍に居る。 大丈夫だ」
「・・・・・・大丈夫だよ。 うん、大丈夫。 今は戦車だから大丈夫」
正直前世だったらくじけていたと思う。でも、今は身も戦車になったせいなのか、心もある程度堅くなったのか非常に辛いだけで済んでいる。もしかしたらこの世界に耐えさせるため、人じゃなくて戦車として老神様が転生させたのかもしれない。
「無理はするべきだが、限界は超えないでくれ。 そのためにオレが居る」
そう言うとカイは自らハッチを開いて車内から出て行った。
「・・・・・・がんばろう」
小声で呟くとハッチを閉じ直し意識を車外に向ける。
すでに壊れた木壁も応急処置が終わり、荷造りを終えて出発する寸前だった。昨日よりも緊張感を持ってギルド森の騎士の冒険者は馬車を護衛していた。
「陣形は変更なしだが、周囲の警戒は厳しくしてくれ。 ではいくぞ」
馬車を囲うようにギルド 森の騎士に所属する冒険者達は周囲をきっちり警戒し、何事も起きないように注意している。相変わらず最後尾をリヤカーを引きながら走っている、気は晴れないけれど何もしていないよりかは幾分かましだった。
憂鬱な気分のまま走り続けて半日、道中何事もなく村に到着しそうだ。
「そろそろ村が見えてくるが警戒を緩めるなよ!」
リーダーの男の大声が響く。最後尾に居るので状況は見えないけど、一応緊張感を持って護衛にあたってるみたいだ。自分は気分の悪さがいまだ抜けてないため、余り集中できず周囲の風景をただ眺めているだけ。
「リョウ、少し上に乗るぞ」
カイは砲塔まで上がると周囲を見回している。何をしているのかわからないけど、理由があるとは思う。
「何かあったの?」
「オレならここまでに二回は仕掛けていたが、どうやら気にしすぎだったようだ」
何をどうやって仕掛けるのか聞きたいような、怖くて聞きたくないような、警戒するにも頼りにはなるけど読めるということは、同じように考えられると言うこと。
「恐らく別の盗賊と思われる者達が遠めに見てはいるが仕掛けてくる様子がない。 残念だが護衛の仕事である以上今回は見逃してやろう」
護衛でなければと率先して殺しに行くと言う言葉に衝撃を受けた。カイはこちらの気持ちを察したのか砲塔の上に座る。
「リョウ、あの者達は仕留めなければ他の者を襲う。 盗賊など放置しておいても民衆や兵站の邪魔なだけだ」
そのとおりだとは思う。理由があっても盗賊行為を行う者と、理由があっても行わない者は絶対の差がある。犯罪者だから何しても免罪符になると考える人やラノベはあったけど、それでもやはり相手を殺してしまうのは最終手段だと思う。
「リョウはリョウの譲れない考えで動けば良い。 だがオレが居る事は忘れないでくれ」
カイはそういうと車体を降りて最後尾の警戒に戻った。




