1.鋼鉄の体!?
拝啓 姉上 兄上 妹君
この度 僚一は異なる世界に一世代の限定出向が決定いたしました。
あの世で会うことは在りませんのでご理解ください。
享年38歳 僚一
書き上げた遺書?伝言?を今の世界の死神様の使いに手渡す。
「確かに受け取りました」
「宜しくお願い致します」
骸骨の頭部に真っ黒のローブという、典型的な死神スタイルの死神のお使い様に丁寧に頭を下げられ、反射的にこちらも頭を下げてしまう。気がついてからあれこれ説明され、死んだ事や死因を教えられたのだけれど、選ばれたので他の世界に転生してくださいと言われ、物語の主人公のようではいと答えてしまった。
死神のお使い様が消えると、残った後光ではなく頭部光り輝くお爺さん神様がすぐ前に立った。
「それでは準備は良いな。ではこの世界から我が世界へ転移!」
異世界の神様らしいお爺さん神様に導かれ、別の世界に魂だけが送られる。光速に流れていく光の線に目が慣れないが、お爺さん神様だけは認識できた。
「あの、それで私は何をすればよいのでしょうか?」
「200年ほどワシがおぬしの世界で映画や本など遊び呆けていたら信仰が激減しての。 カルト教団が好き勝手に活動してワシ以外の神がほとんど消えてしもうた」
「200年!?」
「ワシら神にとってはほんの一時なものよ」
そういえば俗っぽい服と言うか、日本の神様っぽい着物を着ているが彩色が派手で何かしらのキャラものっぽいバッグを持っている。この神様割と俗っぽいのでは。
「はぁ、それでその教団をどうにかすればよいので?」
「うむ。お主は中々話が早い。最有力候補を他の神に持っていかれた時はどうしたものかと思ったが、お主も中々良さそうだ」
豊富に蓄えられた髭を触りながら首をかしげている。
「お主の世界は平和で神々も多様で力も非常に強い。 それ故に人の中にも魂も稀に強いものがおってな。 頼んでワシのように世界が弱っとる世界に融通してもらうのじゃよ。 まぁ、壊れかけの世界を終わらせたり、遊び場として魂が弱かったりどうしようもない者を集め、蟲毒のような事をしとる神もおるがの・・・・・・」
「それは・・・・・・酷いですね」
少し暗い表情になると杖を握る手が軽く震えている。
「その世界の神が一人も居なくなるとの。 他の世界を統べる神々の新人や低級神達の練習場にされて世界は9割9分駄目になる。 ワシは引退間際で次の世代に任せて遊び呆けていたら酷い有様じゃよ。
引退するつもりじゃったが、また次世代が育つまではお預けじゃ! そしておぬしはカルト教団をどうにかして神様を信仰するようにするのじゃ!」
光に紛れ全てが消えていく。どうやら着いたらしいが、まだ聞きたいことはあるが時間切れみたいだ。意識がはっきりすると真っ暗な荒地に一人?いや 戦車一台。
元
上代 僚一 38歳 男 独身 彼女無し 工業技術系正社員
趣味は戦車のプラモデル製作と読書と筋トレ。
現
リョウ 生後0日 性別無し 独身 彼女無し 戦車?
趣味は不明というか何が出来るかわからない。
つまり現在私は戦車になっております。まぁあれです。無機物転生という奴ですね。自販機とか畑とか剣とかラノベ読んどいてよかった。上下左右は砲塔を動かさずに視認でき、ジャンプは無理だが履帯が意思どおりに動いてくれる。
「ステータス!」
とりあえず叫んでみたが何も表示されないし頭に浮かんでこない。しかし発声は出来るみたいだ。
「あっ、プロフィール?」
頭の中に情報が表示される。感覚的には戦車視点のVRといったかんじなのだろうか。
名前:未決定
種族:スティールマシンゴーレムレアユニーク種
性別:無し
Lv:3
状態:無傷
型式:10式(ひとまる式)選択中
装備:
10式戦車砲(44口径120mm滑腔砲)APFSDS or HEAT-MP
12.7mm重機関銃M2(砲塔上面)
74式車載7.62mm機関銃(主砲同軸)
スキル:自動修復1・自動弾薬補充1・自動燃料補給1
需品装備:なし
備品:なし
SP:200
判りやすい。これくらいなら一般人?だった私でもわかる。スキルのおかげでとりあえず動き続けられそうだ。
「型式選択中って、いや独り言は不味いか。頭の中でいけるかな?」
見た目がこれでブツブツ言っているのは不気味だし個人的にも嫌だ。やはり戦車は強くて格好良くないと。
型式選択に意識を向ける。
使用可能型式一覧
10式戦車(選択中) 61式(無傷)
100SP 60式自走無反動砲
300SP 60式装甲車
600SP 74式装甲車
2000SP 74式
3000SP 74式G
4000SP 90式
5000SP 90式改
10000SP 10式改
何故日本の戦車限定とか、存在しないはずの90式改とか10式改とか突っ込みたい。夢は広がるけど、戦車系の必要SP高過ぎじゃないかね。夢と希望を維持する為にグレードアップ戦車の詳細は読まないで置こう。何はともあれ朝になったら移動しよう。とりあえずハゲ神様が言っていたカルト教団をどうにかしないと。
私が呼ばれた理由、それはカルト教団によって世界が乱されまくり、他の存在への信仰が途絶えたせいでほとんどの神様が消えたり、精霊の力が大幅に弱り困り果てている。つまりそのカルト教団を潰して欲しいということだ。平和的解決出きるならそれに越したことは無いんだけど、そもそもそれが出来るならこんな姿で送り込まないよな。
手はなんというか感覚は無い。前に歩こうとすると前進、後ろに歩こうとすると後進、歩きや走る程度で速度が変わるみたいだ。首だけ動かそうとすると砲塔だけ、振り返ると信地旋回、その場で振り返ると超信地旋回らしい。
エンジン音はしないけど稼動している振動があるので、どうもまるっきりそのまま同じというわけではないみたいだ。そのあたりはゴーレムと言うことなのだろう。
とりあえず荒地から離れようと移動していると空腹になってきた。無機物なのに空腹はどういうことかと意識を向けると燃料が半分以下まで減っている。自動補給といっても少しずつらしく、巡航速度とはいえ移動し続ける10式には消費と補給のバランスが悪いみたいだ。
いったん停車し、説明を表示すると10式・90式・74式・61式だと自動補充量1より消費量のほうが多い。60式自走無反動砲を選択し残り100SP、選択を変更すると体を若干変化する違和感があり、体を動かしてみると超信地旋回ができない。詳しくはないが戦車によってはできない種類もあるようだ。
とりあえず60式自走無反動砲に変更すると空腹が消え、走り続けても空腹にもならず妙な感じだけどずっと満腹状態を維持している。その上情報見る限り徐々にだが未選択の10式の燃料も補給されてる。非常時以外はこのままがいいのかもしれない。
主武装60式26口径106mm無反動砲×2
副武装60式12.7mmスポットライフル
装甲がアルミで薄くて頼り?ないけど、動き回るには都合がよさそう。
物凄く簡単な説明 雑記
10式戦車:
2010年に採用された自衛隊の最新戦車。世界標準よりちょっと小さくて軽い。小回りが利いて火力と走りは標準をやや超える。装甲も世界標準くらい。
60式自走無反動砲:
1960年に採用された自衛隊の車両
古いキャタピラ(履帯)の銃弾に耐えられる装甲車両で、ロケット砲を二つ積んでいる。
スポットライフルはロケット砲の狙いを定める為の光る銃弾を撃つもの。
ロケット砲の名前は無反動砲で、自動車位なら吹き飛ばせるくらい。