異世界転生? ちげーよ妹転生だ
「やあ、君にちょっとお願いがあるんだ」
「誰ですか、あんた?」
俺は普通の高校生、雅だ。俺は布団に入って普通に寝たはずが何やら神殿のような場所で目が覚めた。
常識的に考えれば目が覚めた気がしただけで夢の中なのだろう。
「まあいいか、おやすみなさい」
「寝るな! これ現実だから! 頼みがあるんだよ!」
「ええー、夢の中なんだから融通聞かせてくださいよ、俺はさっさと寝て疲れを癒やしたいんですよ」
ちなみに目の前にいるのは幼女である。なんか一枚の布を巻き付けた服を着ている。ちゃんと厚い布を使っているので通報案件ではないが……
「で、なんのようですか? さっさと言ってください」
「神なのに……私神なんだぞ……扱いひどいぞ、泣くぞ」
夢の中とはいえ幼女に泣かれると寝覚めが悪い。
「で、その神様が何の用っすか?」
「うむ、妹は欲しくないか?」
「欲しい!」
なに!? 妹!? 超欲しいんですけど!
「実は異世界で面倒なことになっておってな」
「あ、やっぱいいです」
「いるって言うたろ!」
「いや、だってそれ異世界に行けって流れじゃないですかそれ……俺は現世にそれなりに満足してるんで異世界とかいいですわ。おやすみなさい」
「まて! 異世界に行けとは言ってないじゃろ! ちょっと異世界から来てもらうだけじゃ!」
「来てもらう?」
「うむ、実は私はこの世界の神もやっとってな……」
「そうっすか」
「さらりと流すのう……まあ、話が早くていいわ、実は数年前日本を監視しておったんじゃが……」
何を言う気だろうこの神様?
「妹もの? とか言うのに可愛い妹が大勢でておっての、萌えアニメとかよばれとった」
「はあ……」
「で、わしも妹が欲しくなったんじゃ」
話が見えてこない……この自称神が妹好きと言うことしかわかんないぞ。
「で、実はここ以外にもわしの担当の世界があるんじゃが……そっちではわしはたいそう信仰されておっての……神というのは信者なら多少には干渉できるんじゃ、病気を治したりとかが有名じゃな」
「すごいっすね、でもそれが何か?」
「うむ、その世界の大半はわしの信者だったと言ったな……そしてわしは妹が欲しかったんじゃ……で、信者にちょいちょいと細工をしての……」
何をしてるんだこの神!
「で、二人目以降の子供は必ず妹になるように設定したんじゃ」
「何やってんだおい!」
やべー神だった。
「それでその世界には二人目以降の子は必ず女子が生まれての……その……」
「面倒ごとの予感しかしない! やめて!?」
「まあ、ちょびっと人口比が崩れたんじゃ……」
「やる前に考えろよ! そりゃそうなるだろ!」
「それでその世界では口減らしのようなことはしたくないとたいそう男が生まれるようにと信者が祈りを捧げてのう……わしも無下にはできんのじゃ」
「異世界に転生しろと?」
「違うと言うたじゃろ……その世界は人権意識が高くての口減らしはできんのよ。で、女の子を引き取ってくれと協会にたくさん信者が来ての……」
ろくな予感がしないんだが。
「要はわしが異世界に飛ばすから安心せいと神託を告げたのじゃ、でその女の子の転生先が必要じゃろ?」
「まさか……」
「その……少しでいいから妹をお主の妹としてくれんかの?」
「でも突然妹ができたら両親が驚きませんか?」
「ちゃんとその辺は記憶をいじるから安心せい、ちょっと両親の結婚遍歴が増えるがおぬしはちゃんと両親の子じゃ」
やべえ、妹鳥欲しい。一人っ子だったので「お兄ちゃん大好き」とか言ってくれる妹は欲し……
「ちなみに顔は……?」
「言ったろう、わしは可愛い妹が欲しかったんじゃ。全員美少女じゃぞ」
「マジで、妹欲しいですください!」
「うむ! お主ならそう言ってくれると思っとったぞ。わしもちゃんとした兄のところに送らないと責任があるからの。ちゃんとシスコンを選んでおるんじゃ」
妹がいないのにシスコン……人の性癖をのぞき見てるんだろうかこの幼女……
「ではよろしく頼むぞ! 「みんな」を幸せにするんじゃからな!」
意識が遠のいていく中で俺は「頼むぞ」以降がよく聞こえなくなりっていった。
カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる、目が痛いくらいだ。じゃあ起きるか、変な夢だったな……
むにゅ
ん? 何か柔らかいものが……
ふとベッドを見ると隣に超絶美少女が寝ていた「二人も」……
「ヒャッホー! え!? あの夢マジだったの!? 妹!? すごいじゃん神様マジ感謝!」
「ん……お兄ちゃん、おはよ」
隣で寝ていた妹1(仮称)が呼びかけてくる。
俺は「お兄ちゃん」という呼び方に感動しつつベッドから降りる。
「おはよう! 二人とも今日も可愛いな!」
早速シスコンぶりを見せる俺、両親ももういい年なのに「もしかしたら妹ができるかも」とシミュレーションしていたのは無駄じゃなかったな!
「えへへ、でもそんなこと言ったらお姉ちゃんが怒るよ?」
お姉ちゃん? ああ、隣で寝ている妹2(仮称)か?
「お兄ちゃん! 私たちはどうなんですか!」
階下から何人もの声が聞こえてくる。え!?
バーンと部屋のドアが勢いよく開けられると入ってきたのは「3人」の妹だった。
「え!? 五人!?」
「あ、お兄ちゃんとは初めましてってことになってますね。でもやっぱり隣で目覚めるのは私が……でもじゃんけんで……」
「えーと、あの」
「私は神様にお兄ちゃんへの説明役を頼まれまして、説明後はちゃんと記憶がなくなるのでご心配なく」
え!? え!?
「っていってもお兄ちゃんに人数を教えれば後は察してくれるって言って詳しくは教えてくれなかったんですけど……『10万』だそうです」
「は!? 何が!?」
「いえ、私は数だけ伝えればよいとしか聞かなかったので……」
ふとその妹3(仮称)がポカンとする。
「あれ? お兄ちゃんおはようございます、私は起こしに来たんですけど……あれ? 何かお兄ちゃんとおしゃべりしてたような……」
どうやらちゃんと記憶が飛んだらしい。
「10万」の意味を俺はしばらく考え、あり得ないと頭を振っていた。
いや、さすがに10万もいるわけが……
「あーあ、せっかくお兄ちゃんと一緒に眠れる日だったのに……次は当分先だよねえ……」
と、(仮称)が言っている。これはあれだな……
「ちょっと忘れちゃったんだけどさ、この町に何人妹がいたっけ?」
「まったく、しょうがないお兄ちゃんですね、まあ数が数なのでわからなくもないですけど……」
「で、何人いるの?」
俺はまさかそんなことはないだろうとかすかに希望を抱いて聞いた。
「私たち以外であと99997人ですね!」
「あの幼女ケンカ売ってんのかあああああ!」
俺の叫び声が家中に響いた。