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第四話

調停者、家族説明を受ける

神鳥から与えられた血は劇的な効果を上げた。

聞いてみると、古くから『聖血』などと呼ばれ、病気や怪我に神がかった効果があるのだとか。


「人間相手なら生きてさえいれば、どうにかしちゃうわよ」

「とは言え、若君にどんな影響があるか解らないんですから危険だったかもしれませんよ」


何その考えなし。

どうして産まれた直後からこの人?鳥?たちに殺されかけてるの、俺。

まあ、他に選択肢が無かったのも理解してるけど。

あ、『聖血』の影響か五感がやけにはっきりとしてきたし、空腹も収まった。成長の促進効果もあるのかな。

一家に一瓶欲しくなるね。

おかげで周囲の状況も認識出来るようになったし、自分の性別が男だというのも判明した。やっと一人称を俺で話せる。

まあ、まだ首すらすわってないので周囲を見回すのすら難しいのだが。

そこは火食鳥のイリクさんが抱っこして散歩してくれたので解った部分が大きい。


簡単に言うと、此処は火口だった。


そんな馬鹿な。正確には火口に作られた横穴の中。かなり広い。よくゲームなんかで滝の裏にある隠し部屋みたいなものである。


ただし、流れる滝は溶岩だが。


住処から出れないよ。


そこには何かの枯れ草が敷き詰められており、まごう事なく鳥の巣があった。

後、卵の殻。これにも魔力を感じる。

しかも結構強い気がする。まあ、基準が解らないから判断が難しいのだが。

少なくとも俺が操る魔力よりは遥かに大きい。


「あうぅー」


いくら『聖血』を飲んだとは言え、まだ言葉を話せたりはしない。


(かかさまは、いないのー?)


「そうですね、若君はかなり理解力が高いみたいですね。一応説明しておきましょうか」

「あら、イリク。お願い出来る?」

「はい、お嬢様がするよりは良いでしょう」

「眷属にサラッとディスられたわ⋯⋯」


なるほど、眷属だったのか。

という事は、この神鳥は火食鳥より格上ということになる。


「こちらはファニーお嬢様。不死鳥、フェニックスとか呼ばれていますね。その一族の嫡流ですね。うーん⋯⋯若君には難しいかもしれませんが、従姉様に当たります」


大丈夫です。知識はあります。


「若君の母様、ニリー様の妹御の娘になりますね。聖属性と火属性に絶大な親和性を持っておられます」


おお、流石はフェニックス。と言うか名前初めて知ったよ。母親含め。


「姉様はねー、人間に恋しちゃって人化まで習得したんだけどね。その人間が貴族?とか色々面倒なしがらみを持つ人でね。結ばれはしたけど添い遂げる事は出来なかったのよー。あ、ちなみに姉様って呼ばないと拗ねちゃうから、こう呼んでるわ」


と笑うファニーさん。笑って済ませて良いのだろうか。

視線をやると、イリクさんの表情が引き攣っているんですが。


「で、もっか行方不明です。傷心で不安定でしたから。まあ、何百年かしたら帰ってくると思いますよ」


時間感覚がおかしい。

ハーフの俺がそこまで寿命があるかも怪しいのに。

まあ、居ないのなら仕方がないんだろうが。


「で、私が不死鳥の眷属筆頭、火食鳥のイリクです。人化出来ますし、色々と便利な小間使いです」


小間使いって言い切ったよ、この人!鳥?

眷属ってのはそれで良いのだろうか。


「若君が人型でお産まれになりましたし、色々必要な物を揃えないと、ですね」


確かに服とかも無さそうだし。

不死鳥のハーフだからか今は暑さを感じたりはしないけど、何か暑さ対策も必要かもしれないな、将来的に。

空腹は『聖血』のおかげで覚えずに済むかもしれないが、栄養的にどうなのかも不明だしな。定期的に食料の買い出しもお願いしなければならないかもしれない。


「じゃ、ちょっと物置漁ってきますね。何か使えるものあるかもしれませんし、人里に行くなら金銭も必要ですからね」


そう言うとイリクさんは壁に向かって歩き出す。

え?と思っていると彼女の姿が搔き消える。


「あぁー!」


驚きの声が自然に出る。


「大丈夫よ、坊や。あそこに転移の魔方陣があるの。物置、まあ人間は宝物庫と呼ぶ場所に繋がっているの」


おお、ファンタジー。色々と異世界なんだな、と思わせてくる。

まあ、神鳥が居たり卵から産まれたりだから今更感もあるけど。


「念話のおかげで坊やに高い知能があるのが解るから便利よねー。今説明している事も理解しているんでしょう?」

「うー」


肯定の声を上げる。知能はあっても身体がなあ。まだ言葉を喋る事すら出来ないからなあ。

そう考えると本当に念話は便利だ。魔法が便利と言うべきかな。

今も集中すれば自分の中にある魔力を感じる。感じるどころか、既に浄化と念話は出来てしまった。

他にも色々出来そうな気もするが、懸念事項もある。

全身に魔力を巡らせると違和感があるのだ。想定よりも身体が大きいような、常に魔力が放出されている部分があるような感覚。

はっきり言うと四六時中魔法を使っている状態だ。首がすわっておらず、視線を動かすしか出来ないので全身が見れないのがもどかしい。


「お待たせしました。若君に良さそうなものと、かさばらなくて金銭的価値のありそうな物を持ってきましたよ」


イリクさんが大小様々な物を両手に抱えてやってくる。

多分、イリクさん。視線こそ声のした方向に向けているものの、明らかに不自然な量の物質の山に隠れてイリクさんの姿が見えないのだ。

ゆりかご、謎の壺、調理用具一式、枕やベッド、鏡に絵画、こぼれ落ちる宝石などなど⋯⋯。

絶対に持ち切れないよね、人間には。


「あら。鏡があるのね。坊や、自分の姿が映るのよ。見てみる?」


そう言いながらファニーさんが鏡をかぎ爪でそっと鏡を荷物の山から取り出し、俺の前に設置した。


「あぁー!」


思わず叫んでしまう姿が鏡の中にあった。


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