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第二話

調停者、いきなり死にかける

「どうして⋯⋯?どうしてなの?」


目の前で鳥⋯⋯仮に神鳥とでもしようか。

彼女は困惑を隠そうともせずに片翼で頭⋯⋯顔?口元?を押さえている。

えらく人間臭い行動だ。


「ふえぇぇ⋯⋯」


話しかけようとしたが、情け無い声しか出ない。これ、自分の声か?


(産まれたばっかりだもん、当たり前だよね!)


ヤケクソ気味に叫ぶ。


「ああぁぁぁー!」


泣いてません、俺?


「お嬢様!今凄い魔力が生まれませんでした!?って、こっちが産まれてるー!?」


一人の女性が駆け込んで来る。何やら愉快な声を上げている。ちなみに彼女は人型だ。


「何でですか!?」

「突然魔力が膨れ上がったと思ったら、出てきちゃった⋯⋯」


神鳥が呆気にとられた表情を浮かべて返答する。

いや、自分は鳥の表情が理解出来る現状にびっくりだよ。


「そうじゃないでしょう、お嬢様!どうして若君が人型なんですか!」

「そうよねえ⋯⋯」

「人間とのハーフだから可能性こそありましたが!卵の時点で鳥型って話だったじゃないですか!」


良く解らないが自分は人間と神鳥のハーフらしい。で、卵が産まれたので中身も鳥型だと思い込んでいた、と。


⋯⋯。


自分でもそう思うかな。


「不思議よねぇ⋯⋯。ところで、人間の赤ちゃんが産まれた時って、どうしたら良いのかしら?」


のんびりとした口調のまま小首を傾げる。

本当に人間臭い。ちょっと愛嬌がある気がする。


「そうですよ!産湯も何も準備してないですよ!とりあえず浄化しましょう!」

「突ついて汚れとか取れば良いのかしら。」

「下手したら死にますよ、それ!」


どうやら自分は殺されようとしているらしい。巨大な鳥に啄まれる赤子。中々に見たくない光景だ。

老人説が否定されたのは非常に喜ばしいのだが、まだまだ問題は山積みといった感じかな。

ふう、やれやれだぜ。


「浄化魔法ですよ!って、水魔法だ!二人とも使えないです!」


駄目な大人の見本市ですか、ここは。

もしくはパニックに陥った猫型ロボットをリスペクトしているのでしょうか。


「えぇー、うぅー」


このままでは自分は死ぬ。とりあえず浄化とやらを自力で試してみよう。赤子に出来るとは思えないが、何事もチャレンジだ。ひょっとしたら何かチートが発動するかもしれないし。


「ぶぅー」


卵から孵った後も、自分の身体の中に「それ」が存在しているのが認識出来る。なら、後はイメージだ。

多分「それ」は魔力だ。違う可能性も勿論あるが、何となくそう思う。

水魔法。きっと青。力は小さいがコントロールは比較的簡単。

ゆっくりと頭上に放出し、とにかく清潔なイメージ。

水の塊を具現化。作成。いける。


放出。


自分の全身に清らかな魔力の込められた水が注がれる。美しい。虹すら見える。

マイナスイオンに溢れている。

だが、冷たい。あの世すら見える。

プラマイで考えたら、間違い無くマイナスですね、はい。

温度を考えていなかったよ。と言うか出来ると思わなかった。

産まれ落ちて即座に禊。そして身罷る。

どんな生贄だよ。しかも自死って。


「あら?今の魔力って⋯⋯」

「若君!凄い!というか瀕死!温めないと!」

「炎なら得意よー。全力で聖火のブレスで」

「灰も残りませんよ、それ!?」


産まれたての赤子に駄目な大人と確信された二人の騒ぎが遠くなる。

もう一回『彼』に会えるかなあ、と思いつつ、意識が遠のいていった。

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