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プロローグ

そもそもが突然だった。


いきなり「貴方は死にました」と言われて納得出来る人間がどれだけ居るのだろうか。

少なくとも自分は混乱した。

泣き喚かなかっただけマシだなあ、などと冷めた考えも頭をよぎる。

良くあるラノベのような展開。

まあ、仕方がないと受け入れる主人公の心理が解らない。


「だが、受け入れないと先には進めないぞ?」


『彼』は私にそう告げる。

正確には性別は把握出来ないのだが、便宜上そう呼ぼうかと思う。


『彼』は自らを担当者と言った。

俺が死んだ理由、状況を説明してくれた。


曰く、超常の力を以ってでも止めなければならない、存在が許されない人間が居た。

曰く、その人間は魔術的な方法でしか死なない身体になっていた。

曰く、現代日本では外からの力を加える必要があった。

曰く、俺は偶々巻き込まれた。


⋯⋯ 。

酷くね?


「そうは言ってもなあ。あのタイミングが一番被害が少なく済んだのだから。御主には悪いとは思っておるが、こうして詫びもしようと申しておる。せめて話を聞いてはくれぬか」


真っ白な世界の中、より白いシルエットが言葉を紡ぐ。

より強い白は周りの白を認識させないなんて知らなかったよ。


「そんな事を考えんと、現実を見つめて欲しいのだがな」

「いや、この状況が一番現実離れしています」


思わず反論する。『彼』の存在感が強過ぎるので無意識に敬語を使ってしまうが。


「然り然り。いや、この場に人間⋯⋯正確には魂だが。神以外の者を招くのは久方ぶりなのでな。お互いの認識がズレてしまっているのかな」


何となくだが笑っているという雰囲気が伝わってくる。彼を象る『白』が僅かに動き、感情を伝えてくるのだ。


「どうして俺をそんな特別扱いするんですか?」


一応敬語。だいぶ砕けた口調にはなっているがギリギリ敬語。敬語って難しいし、慣れていない、のかな?

意識しないと敬語では話していなかった?

モヤっとした感覚。油断したらタメ口になってしまいそうだ。

不敬極まり無い。


それに、どことなく『彼』には親しみを覚える。不思議な感覚だが、そういう存在なのか、もしくはそう感じるように気を遣ってもらっているのか。


「まあ、巻き込んでしまったというのが一つ。御主の魂がこの場に呼ぶに耐え得る強さを持っているのが一つ。後は久方ぶりに神以外と話したかったのが一つかの」


結構個人的な理由が混じっていた。

それって神様的にはどうなんでしょう。


「簡単に言うと、だ。御主には生まれ変わって欲しい。で、こちらからの頼み事を時々やってくれると更に助かる。勿論、それなりの力は与えよう」

「チート転生ですか?」

「身も蓋も無い表現だな。あながち間違いでは無いが。とは言え、持って生まれた能力よりも、生まれてからの努力の方が重要なのだがな」


ふむ。当たり前の事だな。俺も生きてる間は⋯⋯あれ?


「生前の記憶はだいぶ消えてしまっておるかな?神気に当てられて死んでしまったから無理も無いがな」


「さらっと怖い事言いますね」


まあ、魂とやらが消滅しなかっただけマシなのかもしれない。

とゆーか、神気に当てられて死ぬって何それコワイ。

お約束のトラック無双じゃないんですか。

現状、自分の姿を確認出来ないし。ただ五感が働いて周囲が解る、という奇妙な状況だ。

魂に欠損があっても解らないぞ、これ。


「で、頼み事とは?」

「うむうむ、随分前向きになってきたな。良いぞ良いぞ」

「まあ、生前の記憶があればもう少しゴネたんでしょうが⋯⋯」


そう伝えると『彼』が苦笑するのが伝わる。


「すまぬな。しかし、御主の様な存在が居れば助かるのだ。今回のように、その世界の者で処理出来なければ外から力を加えるしかなくなる。そうすると御主のように巻き込まれてしまう者も出てくる」

「かなり責任重大じゃないですか?被害をなるべく出さずに解決しないとならないんですよね?」


正直俺には荷が重い。自分のせいで被害が拡大するとか考えたくない。


「いや、最終的に解決さえしてくれるなら問題は無い。今回の一件も被害自体は少なかったのだがな」

「何か問題でも?」

「一部海水温が上がり、潮の流れが変わったり、生態系が変化した」

「被害甚大じゃねーかっ!」


思わず突っ込む。あまりにも恐ろし過ぎるだろ、それは。


「うむ。だから、だ。なるべくはその世界の存在で解決して欲しいのだ。御主を転生させようとしているのも、そういった調停者が現在居らぬ世界でな」

「日本は良いんですか?」


素朴な疑問。とゆーか「うむ」じゃないだろう。生態系を変化させるとか人間業じゃない、あ、神か。


「地球には調停者が居るのだよ。ただ、今回は少々トラブルが発生してな。まあ、それは良い。つまり調停者が出来なければ外から力を加えるまで、だ」


色々と気になってしまうが。

地球の調停者とかトラブルとか。


「最悪、調停者が何もしなくても世界が滅ぶとかは無い。神々が動くのでな。ただ、どうしても力加減がなあ。それで調停者が居ると楽が出来る⋯⋯世界の為になるのだ」


楽が出来る、って言ったよね今。


「はあ⋯⋯断らない方が身の為ですかね」

「その様な言い方は個人的には好まぬ。が、止む無しだな。何、基本的には好きに生きてくれて構わん。時々こちらから調停者としての仕事を伝えるので気が向いたら力を貸してくれたら良い」

「意外と緩いんですね。そんなスタンスで問題ないんですか?」


時々、とか気が向いたら、とか。それくらいならむしろ調停者なんて必要無いんじゃないだろうか。


「ふむ。御主がこれから生まれる世界は大きな問題は無いのだよ。それに詫びを込めて転生させるのに仕事漬けでは意味が無いのでな。極端な話、世界が滅びそうになったら動いて欲しい、くらいの軽い仕事でな」


『彼』が笑う雰囲気が伝わる。その言葉を信じるなら非常に好条件だ。

まあ、好きに生きて良いのなら問題無いだろうか。


なんて騙されてたまるか。

世界が滅ぶ危険性があるって事じゃないか、それ。


「まあ、赤子からのスタートだし、しばらくは生きるだけで精一杯だろう。で、何か希望はあるか?」


俺の心の内を知ってか知らずか。『彼』は話を先に進めようとする。

⋯⋯誤魔化してないよね?

とは言え、転生条件が気になるのも事実。特殊能力やスキルといったものだろうか。

まあ、とりあえず希望を伝えてみようか。


「最初はあまり人と関わりたくないです。その世界に情が湧き過ぎると自分の事が後回しになりそうですから。後は最低限生き抜く能力と戦う能力は欲しいですね」

「ふむ。慎重と言うか臆病と言うか。まあ、好ましいがな。人以上の身体能力と魔法の才能、後はそこそこの外見。生き抜き、成長出来る環境くらいでどうか」


質問と言うより確認。こちらの要望以上である。至れり尽くせりである。

まあ、戦う云々がスルーされたり、魔法が存在する世界ってのもサラっと示唆されたんですが。

親切なのか不親切なのか。


「問題無いどころか⋯⋯良いんですか、そんな好条件で?」

「何、少ないくらいだ。気にするな」

「ありがとうございます」


素直に礼を言う。前世の記憶は殆ど無いが、やり直すには恵まれ過ぎた条件だ。

色々と疑問もあるので、小一時間ほど問い詰めたいところだが、ぐっと我慢。

転生条件が変更されたら堪らない。


「では、早速転生といくかの」

「お世話になりました」

「うむ。達者でな、新たな調停者よ」


不安は残るものの、間違い無く感謝はしているので、心から感謝の想いを告げる。


『白』が動いたのが伝わる。

次の瞬間、白い空間が爆発的に白さを増し、目が開けられなくなる。その白さと反比例して俺の意識は落ちていった⋯⋯。


初投稿です。

温かい目で見守って頂けると幸いです。

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