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さかさまワールド

作者: 朝永有
掲載日:2017/10/08

 強い雨だった。屋根を叩く音がカツンカツンと部屋に響いた。

 夕食を終えた僕は、部屋でやることも無く、だからといって何かをやろうとする気も起きなかった。

 片付いていない部屋の床を、ただ寝転がっていた。

 そこで僕はベッドの下に何かキラリと光るものを見つけた。

 転がりながらベッドに近づき手を伸ばすと、それは無色透明のビー玉だった。

 手にとった僕は、すかさず天井につるされた蛍光灯に掲げる。近くにいるようで遠くにいるような映像がそこには写った。

 こんなことをして遊んでいたなぁ、と少し感慨深い気持ちになった。


 そのとき、ドカンと大きな音が聞こえると同時に、閃光が飛び込んできた。

 何事かと思い外を見ると、上空に怪しく光る雲の群れができていた。

 この天気だ。雷が鳴るのも当然か。

 俺は窓から外の様子を訳もなくただ見ていた。

 次の瞬間、大きな音と閃光が同時にこの部屋は光を失った。

 いや、全世界が光を失ったような気がした。


 真っ暗な部屋の中で俺は町の様子を見つめていた。

 赤いテールランプが並んでいる。

 信号は目を閉じたままで、赤い列は動かない。

 その光景がとても美しくて、僕は見入っていた。

 そして、そこにもう一度青白い光が放たれる。


 一瞬で儚い。


 僕は手にしていたビー玉からこの景色を覗いた。

 すると、赤い列がぼんやりと球体の中で宙に浮いていた。

 おお、と思わず言葉を漏らした。

 世界が逆さまになったようだった。

 球体の中に映る景色はピント外れ。でもそれがとても美しかった。

 時計の針の音が響く部屋の中、その灯火だけをじーっと見続ける。

 

 そこに青白い光が飛び込んだ。

 赤い灯火をなぎ倒すように勢いよく光った。

 さかさまだった。球体の中を一瞬で駆け抜けた。

 僕は溜め息を吐くしかなかった。


 しばらくすると、部屋は白い光に満たされた。

 赤い灯火は綺麗な列を作ったまま動き始めた。

 僕はビー玉をポケットに入れ、強い雨が降る外を眺める。

 あの閃光が頭から離れないまま、片付いていない床に寝転がった。

読んでいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 好きです。いい作品だな~と思いました。ただただ美しい情景の羅列と実感とがあって。幻想的な、光の刺すようなデジタルな、色彩。語りのリズムにどことなく志賀直哉の『城の崎にて』を思わせるものがあ…
[良い点] 主人公の見ているさかさまの景色がありありと浮かんできました。 [一言] 執筆活動頑張ってください。
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