さかさまワールド
強い雨だった。屋根を叩く音がカツンカツンと部屋に響いた。
夕食を終えた僕は、部屋でやることも無く、だからといって何かをやろうとする気も起きなかった。
片付いていない部屋の床を、ただ寝転がっていた。
そこで僕はベッドの下に何かキラリと光るものを見つけた。
転がりながらベッドに近づき手を伸ばすと、それは無色透明のビー玉だった。
手にとった僕は、すかさず天井につるされた蛍光灯に掲げる。近くにいるようで遠くにいるような映像がそこには写った。
こんなことをして遊んでいたなぁ、と少し感慨深い気持ちになった。
そのとき、ドカンと大きな音が聞こえると同時に、閃光が飛び込んできた。
何事かと思い外を見ると、上空に怪しく光る雲の群れができていた。
この天気だ。雷が鳴るのも当然か。
俺は窓から外の様子を訳もなくただ見ていた。
次の瞬間、大きな音と閃光が同時にこの部屋は光を失った。
いや、全世界が光を失ったような気がした。
真っ暗な部屋の中で俺は町の様子を見つめていた。
赤いテールランプが並んでいる。
信号は目を閉じたままで、赤い列は動かない。
その光景がとても美しくて、僕は見入っていた。
そして、そこにもう一度青白い光が放たれる。
一瞬で儚い。
僕は手にしていたビー玉からこの景色を覗いた。
すると、赤い列がぼんやりと球体の中で宙に浮いていた。
おお、と思わず言葉を漏らした。
世界が逆さまになったようだった。
球体の中に映る景色はピント外れ。でもそれがとても美しかった。
時計の針の音が響く部屋の中、その灯火だけをじーっと見続ける。
そこに青白い光が飛び込んだ。
赤い灯火をなぎ倒すように勢いよく光った。
さかさまだった。球体の中を一瞬で駆け抜けた。
僕は溜め息を吐くしかなかった。
しばらくすると、部屋は白い光に満たされた。
赤い灯火は綺麗な列を作ったまま動き始めた。
僕はビー玉をポケットに入れ、強い雨が降る外を眺める。
あの閃光が頭から離れないまま、片付いていない床に寝転がった。
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