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46 国会終了後のひと時


 あれから2か月以上が経過して、時期はもう春だった。この2か月間は目の回る忙しさで、怒涛の勢いで過ぎて行って、あっという間だった。

 国会も終わったことだし、ようやくある程度整備の整った化物ランド、クレタ島の党本部が所有する別荘へ来ていた。


 第68回国会の模様も中継されていたから、当然それ以降のニュースはEMF問題で持ちきりになった。それはギリシャだけにとどまらず、EU諸国は軒並み怒髪天を突く勢いだし、世界中に知れ渡ってしまって、続々と経済制裁が申し渡された。

 日本皇国から援助の凍結が申し渡された時など、その日のうちに誘夜から抗議の電話がかかってきた。一体どういうつもりだと激昂する彼女を宥めるのには骨が折れた。案外ヒステリックな所があるらしく、マルクスも間に入って彼女を抑えてくれた。一応説明して納得してはくれたが、


「結果を出さぬと、今後一切の援助は差し控えるように、政府に進言する構えじゃ! 心せよ!」


 と、怒られた。アルヴィンは女性に本気で怒られるのは新鮮だ、などとのんきな事を言っていたが、セルヴィ達には、とてもではないが楽観視できる状況ではない。


 ギリシャは間もなく破綻する。スワップも打ち切られて3月いっぱいでお仕舞。EMFはもちろん、IMFなどの援助機構からは総スカン。


「全く。こんな国はギリシャと韓国位なものじゃ! 忌々しい!」


 と、誘夜はブチ切れて電話を叩き切ったが、本当にその通りだ。


 だが、この国の忌々しさとも、今季限りでオサラバ。EMF横領問題の責任を取って、内閣は解散及び総辞職が既に決定している。関与した者達は、検察の特捜が動いて全員逮捕された。

 情報提供者であり、関係者だったエフクリディス・ツィプラスだけは、ニコラスの情報操作でその関係した痕跡は消し去った。安全は守ると約束したので、約束は果たした。


 国会の最後で、内閣のリコール請求が上がった。野党は勿論、与党の半数以上がアルヴィンに寝返って、圧倒的多数で辞職が決まった。

 だが、経済が破たんに追い込まれる状況なのは目に見えていたし、前回も総辞職で慌てて選挙したばかりだったので、流石に今回は7月まで暫定政府として現職を置き、その後通常通りに選挙を行おうという事になった。

 でなければ、第68回国会が放送された当日から始まった暴動に、誰が責任を取るのか、という話だ。自分の尻位、自分で拭いていただきたい。


 国会が終わったからと言って暇なわけでもない。それぞれアルヴィン達も自分達にあてがわれた委員会などの官職があるので、そっちの仕事もしなければならない。ちなみにアルヴィンは軍事関係の委員長だ。他の党員もそれぞれ、福祉関係だったり、教会関係だったり、教育関係だったり、色々だ。

 一般的には、こういう時期に視察に行ったり、他国を訪問したり、研修に行ったりする。折角なのでアルヴィンは、経済の勉強をしようと思って、アメリカを訪問したあと、日本、フランスも訪問する予定だ。この3国は世界3大通貨の大規模レート保有国なので、絶対に外せないルートだ。


 そんな事を考えていたアルヴィンが、セルヴィお手製のハーブティを飲んで、みんなと談笑している。そこにセルヴィが茶菓子を持って、テーブルに置きながら言った。


「ねぇ、選挙の準備のこと、まだみんなに言ってないけど」

「あ、忘れてた」


 もう準備していたのかと、ルキア達が驚いて視線をよこすので、セルヴィが教えて上げた。その手法に納得した面々は、満足そうにお茶に口をつける。


「それなら、間違いなく我が党が与党でしょう」

 マルクスは満足そうにしてポリシアの肩を抱く。

「好きだねぇ、そーゆーの」

 ルキアはちょっと呆れながらも、笑ってアナスタシアの髪を撫でる。

「イイじゃなーい、イイじゃなーいっ! 地味子も意外にやるじゃなーい」

 ボードレール氏がクネクネと喜ぶ。

「ボードレール先生、その地味子っての、いい加減やめねぇっすか? さすがに失礼っすよ」

 ゴブリンのイヴァン氏がたしなめるが、ボードレール氏は「お黙りっ」と、ハンカチでイヴァン氏のおでこをはたいた。それに青筋を浮かべるイヴァン氏。

「これこれ、ケンカはよしなされ」

 ナハトコボルトの老人、ショーペン氏がオロオロと仲裁に入る。


 それを見ながらセルヴィは、ここ最近の殺伐として忙殺されそうな日常を思い出しながら、

(あぁ……なんて平和なんだろう……)

 と平和の余韻に浸っていた。


 だが、何度も言うが、ギリシャは崩壊寸前。既にカウントダウンは始まっている……のだが、時間の概念が可笑しい化物たちは、暢気に構えているのだった。

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