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花屋と幼馴染み  作者:
5/8

季節が過ぎたマリーゴールド

「はぁぁぁ…」

  放課後の教室で、紅葉は1人反省会をしていた。休んでいた分のノートを取ろうと唯から借りた現国のノートを忘れた挙げ句、今日に限ってそんな唯が当てられてしまったのだ。

  その場で答えが分かるくらい凄い唯だが、ノートを取りなさいと先生に注意されていた時の唯を思い出すと今でも背筋がゾワゾワする。

  負い目を感じた紅葉は、日直だった唯に変わり日誌を書くと自ら名乗り出し、今に至る。


「書き終わったし、出してこよーっと」


  よしっ、と気合いを入れ直し、紅葉は日誌を片手に職員室へと向かったのだった。



「…失礼しましたー」

「次からは気を付けろよー」


  職員室を出て、紅葉はまたため息をついた。日誌を出しに担任のもとへ向かうと、今日の担当は唯だろうと言ってきたのだ。理由を簡単に説明すると担任は爆笑、それに対して紅葉が文句を言うと、説教のような先生の話しが淡々と始まったのだ。

  次からは何か美味しいものでもご馳走することで許してもらえないかと考えて、次がない方がいいと紅葉は頭を振った。


  ふと顔をあげると紅葉は、あっと声を上げそうになったのを飲み込んだ。気づけば自分の教室を通りすぎ、廊下の端の美術室まできていたのだ。

  紅葉は以前、達彦が絵を描いていたことを思いだし、少し覗いてみようと考えてニヤリと笑った。達彦には完成したら見せる、と言われていたが、チラッと見るだけなら許してくれるだろう。

  紅葉は足音を消してそろりそろりと美術室のドアの小窓を覗いた。


「え…」


  紅葉の顔から笑顔が消えた。数秒間動けなかったが、校庭から聞こえるホイッスルの音で意識が現実に戻ってくる。ゆっくりと後ろに数歩下がると、美術室に背を向けて猛スピードで自分の教室へ駆け込んだ。

  バクバクと音を立てる心臓を、制服の上から押さえ込み、紙とペンを取り出すと、震える手で唯への伝言を書き、荷物を持って下駄箱へ走った。


「あれ?紅葉今日は早い…」

「ごめんねっ。先に帰るっ」


  部活中の唯の声に振り向きもせず、紅葉は家まで走った。紅葉本人は唯に隠しきれたと思っているが、唯にはお見通しであった。


「も、紅葉…?」


  走る紅葉は、泣いていた。唯はポカンと一瞬思考が止まったが、涙の意味を考えるとひとつの答えに辿り着く。


「…あいつ…」


  唯は目に見えるほどの怒気をはらんだ鋭い視線を美術室へ向けた。その様子を見ていた陸上部の部員、及び顧問の先生までもが怯えていたが、本人は気にも止めなかった。

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