fifty and nine
「マヨちゃん?悪いんだけど、これからちょっと来られる?」
今朝9時、計ったかのように、毎朝出勤するその時刻に合わせて、楽園からかかってきた電話の向こうは、井澤ホーム長の声。
「こういった相談、せっかくの休みに呼び出しておいて、私としても悩んだんだよ?」
ホーム長室に入って腰をおろすやいなや、切りだされた。そうして、インスタント・コーヒーを入れてくれながら言うのに、『シオン中野』といって、バスに乗って30分の所に小さな特別養護老人ホームがある。住宅街の中にあるその『シオン中野』は、三十名そこそこのお年寄りが入る規模の大きくないホームで、『アガペの楽園』とは入所者同士・職員同士の交流など、古くから姉妹施設のような関係にある。
そこで雇っていた若い女ケアマネが、どうした事か、認知症を患った入所者に悪さをした。我慢できなくなると、ライターの火を押し当てたり、縫い針を突き刺したり、睡眠薬を飲ませたりと、鬱憤を晴らしていた。部屋でお婆さんの顔に連続ビンタを加えていたのを、たまたまある新人職員が失敬してそこのトイレを使わせてもらっていたのも知らないで全部聞かれてしまい、結局、施設長と事務長の前で二年ものあいだ続けていたストレス発散歴を白状させられたのが先週だ。




