プロローグ ゲーム世界が動き出した
とあるゲーム世界を震撼させたプレイヤー達の話を聞いたことはあるだろうか?
ゲーム技術と医療技術の発達したことによって現実世界での全ての感覚をシャットアウトし脳に直接ゲームのデータを送り込むことによって、まるで自分がゲーム世界で実際に動いているように感じるVRMMOが主流となりつつある現代日本で、日本のVRMMOゲーム市場の売り上げの上位を占めているのは『All Summer City DAYS ―常夏の都市の日々―』というゲームだった。
プレイヤーは大物ギャングや犯罪組織から現代都市を守るべく豊富な武器にスキルや乗り物を駆使して戦闘したり、あるいは都市のギャングと協力してプレイヤーの金品を奪ったりと様々な依頼をこなし、都市のどこかにいる影の支配者を倒してゲームはクリアになるとされている、ほのぼのとしたタイトルを裏切るような内容だ。
ともあれ世界中の人たちが自分達のチームを作って派手な銃撃戦やスリルのあるドライブを楽しんだり、あるいはギャングの集団と共に都市で大暴れしたりと日常生活ではあり得ないスリルが楽しめるのがこのゲームの楽しみ方の1つ。
また戦闘ばかりだけではなく自分の店を開いて自由に好きなものを売ってみたり、のんびり釣りをしたり、あるいは公園でゆっくりと休憩したりと自由自在に都市での生活を楽しむことができるために、幅広い年齢層のゲームユーザーを獲得しているのもこのゲームの特徴だ。
そしてこの話は・・・そんなゲーム世界である時は笑って、ある時は喜び、ある時は苦しみ、ある時は泣いて、ある時は必死に戦った・・・プレイヤー達の話である。
・・・が、その前に『All Summer City DAYS ―常夏の都市の日々―』の世界とゲーム中に使われるステータス項目について説明しておこうと思う。
『All Summer City DAYS ―常夏の都市の日々―』の舞台となるのはアメリカのニューヨークがモデルとなった高層ビルが立ち並ぶ町並みの現代都市を中心とした広大な島で、島の中央にある超大規模な都市の名前は『オールサマーシティ』といって通貨は$(ドル)だ。
世界中の銃器や車や料理や娯楽などが存在しており、それに加えて『オールサマーシティ』の周辺には森林や山岳地帯や砂漠に海など様々なエリアがある。
世界中の観光地がモデルになった美しい風景を眺めながらバイクでツーリングしたり、或いはハワイの砂浜がモデルになったビーチでのんびり釣りをしてみたりと銃を撃ったりする以外にもプレイヤーのプレイスタイル次第でこのゲームは様々な遊び方が出来るのだ。
次に主にゲームで使用するステータス項目を説明すると、まずプレイヤーのレベルは最高100レベルまで上げることが可能で1レベル上がる度にステータスポイントが三ポイント入手できる。
その入手したステータスポイントを自分の好きなようにステータス項目に振ることで、自分の好みにあったアバターを作ることが可能だ。
そしてこのゲームでは他のゲームにはないオリジナリティー溢れるステータスが多く存在し、プレイヤーのステータス項目には
『Hit Point 体力』
『Agility 素早さ』
・・・等の、どのVRMMOにもある項目に加えて・・・
『Shooting Ability 射撃能力』
『Driveing Technique 運転技術』
・・・等といった『Dext 器用さ』だけではどうしても一纏めに出来ないステータスはこのゲームオリジナルの表現がされている。
他にも様々なこのゲームオリジナルのステータス項目も存在しているが、ともあれゲームで使用する基本的な項目について説明しておくと・・・
『Hit Point 体力』 以後 HP
これが0になると死亡扱いとなり、死亡すると都市の中央で復活する。
回復アイテムはあるものの、蘇生アイテムが存在しないこのゲームにおいては結構重要な項目だ。
次は『Strength 筋肉量』以後 STR
これは重い武器や装備を着けるために必要な能力であり、同時にゲーム世界におけるプレイヤーの筋力が向上するので女性プレイヤーであっても素手でリンゴを握りつぶすことが出来るようになったりする。
次は『Agility 素早さ』 以後 AGI
これは走る速度に直結するので重要な項目であり、これにポイントを振ると長い時間をより速く走れるようになる。
次は『Defence 防御力』以後 DEF
これはHPが減りにくくなるだけではなく、全ての攻撃に対してタフになる。
例えば痛覚管理システムのお陰で大口径のハンドガンを胸に撃たれても強い衝撃を受けて倒れた後に、多少痛みを感じる程度だがDEFを上げると痛覚管理システムが衝撃や痛みを更に軽減してくれるので、大口径のハンドガンを受けても少し痛みを感じてよろめくだけで済んだりするようになる。
次は『Evasion 回避力』 以後 EVA
これを上げると何かヤバイ予感がする、といった感じで危険なものを本能的に感じとることが出来る。
実際にはゲームシステムがプレイヤーの近くにいる敵NPCの位置を感知したり、悪質な商売人NPC等を感知するとプレイヤーに知らせてくれるというシステムの感知範囲が広がるというものだ。
基本的にはこの5つのステータス項目にスキルポイントを振ることが出来る。
じゃあ『Shooting Ability 射撃能力』や『Driveing Technique 運転技術』等は何なんだというと、これらはステータスポイントを振ることで増えるものではなく、銃器の使用累計時間や車での累計走行距離によって増えていくもので、ゲームを開始当初のプレイヤーのステータスはこんな感じだ。
〈 ステータス一覧 〉
名前 《 プレイヤー A》
称号 《無し》
職業 《無し》
副業 《無し》
所持金 《0$》
懸賞金 《0$》
HP 《100》
STR 《0》
AGI 《0》
DEF 《0》
EVA 《0》
< 特殊ステータス >
射撃能力《1LV》
運転技術《1LV》
※その他の特殊ステータスはプレイヤーのゲーム中の行動により追加される。
と新しくゲームを開始した当初のプレイヤーは皆このようなステータスであり、ゲーム中のプレイスタイルやステータスポイントにどういう振り分けをしたか、職業はどんなものに選んだかによって特殊ステータス項目は変わってくるという、自由度の高いキャラクターメイキングもこのゲームの特徴だ。
ともあれこのゲームは様々なプレイスタイルのプレイヤーが様々な遊び方で楽しむことが出来る自由度の高いゲームであり、運営のサポートもしっかりしているのでバグ等は基本的に存在しないし、あってもすぐに改善される。
ところがそんな自由度の高くて、バグ等も極僅かだとされているゲーム世界で非常に優秀なステータスとプレイヤー自身の能力はあるのに色々と残念なプレイヤーだといわれる一人の男がいた・・・