第九話「ごはんはとてもだいじです。」
遅くなり、謝っても謝り切れません!
今回戦闘とも呼べないような臨場感もなにもない何かが混入しておりますが何卒ご容赦ください。
「ご・は・ん!ご・は・ん!」
飛び起きた後、キラキラとした瞳で延々とごはんコールを続けているケラード。辞める気配を見せないそれに、ルークが制止をかける。
「ケラ君、あのね、ご飯より大事な話があるからちょっと黙ってくれるかな?」
「ごはんよりだいじなのか!わかったぞ!」
そう言ってごはんコールを辞めて、話を聞こうとする。
そんなケラードに、ルークが至って真面目な顔をして
「ケラ君、最近分かったことなんだけどね」
「うん」
「実は俺たちは兄弟だったんだよ!」
少しの間があった後、
「……まじ…?」
驚きと少しの疑いが入り混じった目でルークを見つめるケラード。そんな彼にルークは
「俺の目が!この瞳が!嘘を吐いてるように見えるの!?」
真に迫る勢いでケラードに問いかけるルークに、ケラードはどんどんと涙目になっていき
「ごめんルー!おれが悪かった!疑ってごめんっ!」
お互いにひっしと抱き合う二人。そんな彼らを見ていた3人は
「なんかいきなり茶番始まったんですけど大丈夫ですかね?」
「ルークさん……あんなに真に迫る勢いで嘘が吐けるなんて凄いです!」
「はい!?今なんて言いました!?」
「ユリ、そこは褒めるべきではないぞ…。」
「えぇっ!?でも、僕にはあんなこと出来ないですし……。」
そして瞬間的にレイは思うのだ。
クロウさん…ツッコミできるんだ……。と
「さて、感動の運命的再開シーンも終わったことだしー、盗賊釣りやりますか!」
「いやいやいや、待ってください。何ですか盗賊釣りって。ふざけてるんですか?ふざけてるんですよね?分かりましたふざけてるんですね。」
ルークの真に迫る演技での運命的再開の後、もはや分かり切ってはいるがルークの突拍子もない提案にレイは頭を悩ませていた。
「いやー、予想通りのツッコミありがとう。やっぱレイ兄はツッコミ担当だよね!」
女性が見れば一発で落ちる会心の笑みでウインクをされるものの、女性では無い上にそもそも見慣れすぎて逆にげっそりするレイ。
「でさ、やっぱ旅っつたら盗賊じゃん?だから今夜辺り釣ろうかなーって思ってさ!」
「釣ろうかなーって思ってさ!…じゃないですよ!まだ旅始めて半日ですよ!半日!なのに盗賊とかハードル高すぎじゃないですか!暇なら盗賊じゃなくてそこら辺の不定形の『何か』でも踏んでたらいいでしょう!?」
ルークに向けてツッコミの嵐を発動させていたレイを見ていたユリシーズ。
「怒涛のツッコミ+暇に対する対処法まで……レイさん、凄いです……!」
「ユリ、褒めるべきポイントがズレている……。」
「えっ!?またですか!?」
どうやら唯一まともに思える彼もまた、どこかしらおかしいようだ。
「いやいや、何も盗賊十数人を釣ろうってわけじゃ無いんだよ?」
「はぁ……?じゃ何するんですか?」
「やっぱ釣るなら大物&大量ってことで、盗賊団、釣りに行こうぜ!」
「………は?」
場の空気が一気に低下する。ポカポカとした暖かな空気は消え去り、肌を刺すような凍てつく温度が馬車の中を満たす。
「あー、すいません。ちょっと聞こえなかったんでもう一回言ってもらえます?」
これまた射殺すような目でルークを睨みながら問う。そんなレイに今まで饒舌に話していたルークもしどろもどろになりながら
「いや、その、出来心っていうかー……テンションがハイになってたっていうかー……えーっとぉ……。」
「なるほど、あなたの話はよーくわかりました。つまり、こうしろってことですね。」
そう言いながら冷気を纏った拳を振り上げるレイ。
「ちょっ!ちょっ!ちょっと待って!謝るから!ちゃんと謝るからその冷気を纏った拳を俺に向かって振り上げるのはやめて欲しいかなってぇぇぇぇぇぇ!?」
「問答無用!鉄拳制裁っ!」
ルークの脳天にレイの拳が直撃すると思われた刹那。馬車全体が大きく揺れるのと、馬の嗎が聞こえた。
「? どうしたんでしょうか?」
「おばちゃん?どした・・・」
レイの鉄拳から逃れるように、御者台のほうから外を見たルークがそのままの姿勢で固まる。皆が不思議に思っていると、外から声が聞こえる。
「命が惜しけりゃその荷馬車をここにおいてさっさとどっかに行っちまいなぁ!」
どこかで聞いたことのある・・・というか最早お約束の展開が予測できる。
「うわ・・・なんかもう嫌な予感しかしないんですけど・・・。」
と、レイ。
「ももももしかして・・・盗賊・・・・!?」
怯えるユリシーズに
「・・・だろうな・・・。」
特にどうもしないクロード。
三者三様の意見が出揃ったところで、ケラードが
「ごはん・・・。」
寂しそうにつぶやいたのをルークは聞き逃さなかった。
「ケラ君、今お外にケラ君のご飯を横取りしようとしてる悪いやつらがいるんだ!」
「なんだと!?」
『ご飯を横取りされる。』この一言がケラードの本能に呼び掛ける。「横取られる前にやっつけろ!」と。
馬車から勢いよく外へと飛び出していき、馬車を取り囲んでいる盗賊(?)の前に立ちふさがる。御者台のヘーゼルおばさんから危ないと声がかかるが、ケラードの耳には届いていない。
「あぁ?何かと思えばガキじゃねえか。てめぇはお呼びじゃねえんだよさっさと家へ帰んぐがぁ!?」
ケラードに近づきながら話しかけていた男が勢いよく後方へ吹っ飛ぶ。その異様な光景に他の仲間たちも今の男が何をされたのか全く分からず、唖然とする。
「おれのごはんを横取りするなんて、絶対にゆるさないぞ!」
腰に手を当てて、怒り心頭といった様子で宣言するケラード。一連の流れを見ていたレイが、
「どうしたんですかあの子凄く強いじゃないですか!」
「俺事前に魔狼の子って言っといたよね?」
「いや、詠唱無しで魔法使えるなんて正直言って完全に予想外ですよ。」
そう、ケラードは近づいてくる男に向かって風の塊をぶつける魔法を使ったのだ。
「や、エアブロウくらいならケラ君でも使えるよ?もともと風と相性は良かったし、魔法で一番大切なのは想像力だしね。逆にいえばある程度想像力があれば中級魔術辺りまで使えるようにはなるんだよ。」
「そりゃそうですねど、あの年で風の中級魔術は凄いですよ?風は実体がなくて想像が難しいとされていますし・・・」
「あーうんまぁ、それについては魔狼だけの特殊な理由があるんだけど・・・めんどくさいからまた今度話すよ。レイ、ユリちゃんの弓鑑定しといてねー」
そう言って自身も馬車から降りて、ケラードの方へと歩いていく。
「鑑定って、ちょっと!どこ行くんですか!?」
「ケラ君の援護だよー、流石に全部任しちゃうのは悪いしね。おばちゃん、あとは俺らが片付けちゃうからさ、再出発の準備だけ済ましといてくれる?」
「そんなルークちゃんまで!危ないからおよしなよ!」
制止をかけるヘーゼルおばさんに、ルークは笑って
「だーいじょうぶだってー、ちゃちゃっとやっちゃうからさ」
「ルークちゃん!」
「くっそ・・・今のは一体何だったんだぁ?腹に重たいのを一発もらった気分だぜ・・・魔法か・・・?」
さきほど吹っ飛ばされた男がよろよろと立ちあがる。
「レズ!大丈夫か!?」
近くにいた仲間が、男のもとへと駆け寄る。
「あぁ、気をつけろよ・・・あのガキ多分魔法を使いやがるぜ。」
「あんなガキがか!?」
「ウソだろ・・・」
「とにかく、どうにかして対策を考えねぇと・・・」
そこまで話したところで、陽気な声がかかる。
「いやー、ずいぶん派手に吹っ飛んだねぇ。楽しかった?」
「! 新手か!?」
「そだよー」
言わずと知れた、ルークである。
「ちっ、魔法のガキは後回しだ!先のこのなよなよ野郎を片付けろ!」
「ちょ、なよなよ野郎って・・・傷つくなぁ・・・。ま、いいか。」
丸腰のルークに、数人の男が切れ味はあまり期待できそうにない剣を振り上げる。
「荷馬車を置いて逃げなかったてめぇが悪いんだぜ!死になぁぁぁ!」
ルークの頭上に剣が振り下ろされる!
『ギィンッ!』
「なっ!?」
「なんか今日俺振り下ろされるの多くね?」
金属同士がぶつかる音が響いた後、振り下ろされた剣はルークの頭上で止まっており、彼の手にいつの間にか握られていた金属の棒の様なものが、剣の行く手を阻んでいた。
「いつの間にっ!」
「ふっ、これぞルークちゃん秘蔵の・・・」
「ひ、秘蔵の・・・?」
「魔力伝導率100%!俺専用のミラクル☆ロッド(という名のただの棒)だ!」
「なん・・・だと・・・!?」
あっけにとられる盗賊たち。そのすきを突いて
「ケラ君!そっちのやつらぶっ飛ばしちゃってー!」
「わかったぞー!」
そう言って突進していくケラードを見た後、残りの盗賊へと向き直り
「さて、俺らの道を阻んだ覚悟はできてるよね?本当なら再起不能になるまで叩き潰すんだけど、おばちゃんがいるから今回は動けなくなるだけで済ましてあげるよ。」
「あん?何言ってんだ?お前みてえななよなよ野郎に何ができるってんだぁ?」
「今にわかるよ。『ストームヴァイパー』」
盗賊たちの間を一迅の風が吹き抜ける。
「はっ!今のがどうしたってんだぁ?ただの涼しいか・・ぜ・・・?」
一番前にいた男がいきなり地面に倒れ、それにつられるように前から順に倒れていく。
「涼風の毒蛇、ただの風に感じられても魔法は魔法。次からはもっと警戒すべきだね。しばらくしたら動けるようになると思うけど・・・保証はできないかな。」
ルークたちが乗っている馬車は荷馬車を改造したような感じで、外から見ると荷馬車にしか見えません。
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まだまだ拙く短いですが、気が向いた時に読んでいただけるとありがたいです。
読んでいただいて居る方に感謝です。