第六話「目的地」
前回の投稿よりかなり日が空いてしましました。すいません。
いろいろ忙しかったんです。
もう少し投稿スピードを上げられる様努力はします。
「ちょ、ちょっと待って下さい……。今、最後にヴァラヴォルフって言いました?」
「言ったけど、それがどうかしたの?」
「ヴァラヴォルフ…どこかで聞いたような……?」
レイスが考えるような仕草をする。
「まぁ、それは置いといてさ、旅に出るにあたって俺から忠告と、とある設定を説明しておきたいんだけどオッケー?」
「王子から忠告ですか?」
「そう!それ!」
質問を返したユリウスにルーファスが人差し指をビシッと突き付ける。
「な、なんですか!?」
「その王子って呼ぶの禁止な。」
「え…じゃあ何て呼べば…?」
ユリウスが困惑した表情を浮かべる。
「そこで設定の説明に移るんだが、みんなで偽名を使おうと思いまーす。」
「…何のために…?」
「いやー、本名使うとさ、いろいろやらかしちゃったときに足がつくかもしれないじゃん?そしたら城からの追手が来ると思うんだよねー、ほとんど家出同然で出ていくわけだし?」
「まぁ、それは当然でしょうね。しかし偽名を使うとしてもどのように決めるんですか?」
「実はもう考えてあったりするんだよね。覚えやすいように本名をちょっといじるだけにしておいたから。」
「いやに準備がいいですね…。」
「あ、それとー」
ルーファスが何かを思いついたように付け足す。
「兄弟設定だからみんなファミリーネームは同じだから。」
「「兄弟!?」」
レイスとユリウスの驚きの声が重なる。
「うん。年齢的にもそんなに無理はないと思うよ?ちょっとケラ君が危ないけど、まぁ、そんときはそんときでしょ。」
「んなアバウトな…っていうかそのエンケラードさんというのはどのくらいの年恰好なんですか?」
呆れたように聞き返すレイス。
「あーうん。魔狼の獣人でさ、確か歳は9,10歳くらいだったと思う。」
「9,10歳って、子供じゃないですか!?危険もあるかもしれないのに…。」
「だーかーらー、魔狼の獣人だって言ったじゃん。下手な騎士より頼りになるっての。」
ムスッとした顔のルーファスが言い返す。
「まぁ、いいでしょう。では、偽名を教えてください。」
「僕もそれ凄く気になってたんですよ!早く教えてください!」
「はいはい、わかったよ。じゃ、発表しまーす。」
ポケットから紙を取り出し読み上げる。
「まず長男はクロウ。名前はクロードでいいよね?覚えやすいし。」
ずっと黙っていたクロウがうなずく。
「クロードさんかぁ、素敵な名前ですね!」
ユリウスの言葉にもうなずくクロウ。
「じゃ、次男はレイス。名前はあんまりいいの思いつかなかったからいつものレイで決定な。」
「ちょっと、私の扱いひどくないですか!?」
レイスが抗議するが、軽く流される。
「はいはい、じゃ三男は俺で、名前はルーク。んで四男はユリちゃんで、名前はユリシーズ。ま、ユリちゃん呼びは変わらないってことで。」
「ユリシーズ…わかりました、僕は今日からユリシーズと名乗りますね!」
「で、五男がケラ君なんだけど、あんまり隠す必要もないからケラードになりましたー。つーわけで五人兄弟になったけど…反論のあるひとは挙手!」
誰も手は上げない。
「よし、ないね。ファミリーネームはメーベルだから、俺だとルーク・メーベルって感じになる。」
「なるほど、案外まともな名前で助かりました。で、明日はどこへ向かうんですか?」
「それなんだけどねークロード兄さん。この国で一番の田舎ってどこにある?」
早速偽名と設定を使い始めるルーファス。
「…北の端に辺境都市アリダスというところがある…。」
「治安とかはどうなってる?」
「治安に関しては可もなく不可もない。だが近年税が重くなっていると風のうわさに聞いた。」
「流石、暗殺兼諜報をやってることだけはあるね。そのアリダスってとこに行こうと思ってる。」
「なんでまたそんなところに…何か理由でもあるんですか?」
「いや?特に理由はないかな?強いて挙げるとすれば気分。何をするかは行ってから決めるよ。そんでさ、ユリちゃんは今夜徹夜だから。」
「ええっ!?何でですか!?」
ユリウスが心底驚いたような表情をしてのけぞる。
「あ、レイも付き添いで徹夜確定だから。」
「私もですか!?」
「ユリちゃん武器とか使ったことある?」
「ゆ、弓ならちょこっとだけ齧ったような・・・」
「じゃ、レイはユリちゃんに基本的な弓の使い方を指導しといてねー、それじゃーここで解散っ!」
そう言ってそそくさと図書館から出ていくルーファス。その背中は、心なしか明日への期待に満ち溢れているような気がした。
‐辺境都市アリダス、バラム男爵邸地下牢‐
「キヒ、キヒヒヒ・・・こ、こいつら2匹がいる限り儂は安泰じゃ・・・ら、来年からは王都での立食会にも出席することができる・・・。」
暗く湿った空気が立ち込める地下牢に、男の独り言だけが響く。
男の目の前の牢には縮こまって震える二つの小さな影。男はその二人にねっとりとした視線を送ると、そのまま地下牢を立ち去った。