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自由王子の愉快(?)な冒険記  作者: シャオシン
第一章「家出?いいえ、城出です。」
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第五話「天才とスーパー名前負け」

「えーっと、とりあえずぶっつけ本番だと不安要素がありすぎるらしいから明日の予定を決めようと思う。」


 夕日が傾く午後5時半頃、貸切にした王宮図書館にルーファス、レイス、ユリウス、クロウの4人は集まっていた。


「王子が明日の予定を立てるなんて、珍しいですね。なんかドキドキしてきちゃったなぁ・・・。」


 ね?クロウさん。とクロウに同意を求めるユリウスと、それに小さくうなずくクロウ。

 そんな二人に椅子ではなくテーブルに腰掛けたルーファスが


「だってさぁ、せめて予定くらいは立てろってレイがうるさかったし。それに最後の一人も伝えとこうと思ってたしね。」


「あたりまえでしょう!旅に出るのに予定を立てないなんて愚の骨頂ですよ!あと、テーブルじゃなくて椅子に座ってください。」


「えー」


 ぶーぶー言いながら椅子に座るルーファス。


「ま、予定立てるのは俺じゃなくてレイだから、俺は本読んでるよ。」


 そう言いながら本棚の本を手に取りパラパラと捲る。



「では、明日の予定ですが……。」


 レイがそう切り出したところで、


「あー!?」


 ユリウスがルーファスを見て大声をあげる。

 正確には、ルーファスの捲っている本を見て、だ。


「ど、どうしたんですか!?」


「王子!それ貸出厳禁の本じゃないですか!なんで読んでるんですか!?」


「うん、知ってる。」


「そうですよ!貸出厳禁で……って、王子今なんて……?」


 ユリウスが確かめるような視線でルーファスを見つめる。

 それに対しルーファスは本を読みながら当たり前の様に


「や、だから知ってるって。禁術書でしょ?魔術の。」


「………………。」


 3人が絶句してルーファスを見る。


 いや、クロウは単に眺めているだけかもしれない…。


「懐かしいなーと思ってさ。」


「あの………懐かしいってもしかして……。」

 ユリウスが青ざめた顔で問う。

 それはまるで冤罪で死刑宣告を受けた被害者の様な顔色で……。


 しかしそんなユリウスのことはお構いなしに、ルーファスの口からは思い出が語られる。


「俺7歳くらいの時に一回コレ読んでんだよ。でさ、悪戯用にいろいろ改造していろんな人驚かしたの思い出したんだよなぁ。」


 話している間も本を捲る手は休めない。


「んで、正しい使い方ちょっと忘れ気味だったから読み直そうかと思って。」


 読み直すというよりかは捲っているだけだが……。


 それを聞いたユリウス達の反応はというと


「……そんな……禁術を習得するだけでもかなりの無茶なのに更に改造するなんて……!」

「王子…貴方ってひとは……。」


 クロウは安定の沈黙。


「どしたの皆?俺なんか変なこと言った?」



 説明しておくが、ルーファス王子にこれと言った特技がないというのはあくまで周りの人間の評価である。

 ルーファスの本質は一言で言ってしまえば『天才』厳密に言えば魔法に関しての天才。


 例えば一冊の魔術書があったとしよう。それをルーファスと普通の魔術師が読むとして、一週間後にどこまで理解したかを聞いてみる。

 普通の魔術師なら、理解するのに最低でも二週間はかかる。

 なら、ルーファスはどうか。


 ルーファスなら一週間でその魔術書に書いてある全ての魔法の構造を理解し、更に自分が扱いやすい様に改造して、実戦投入することができる。


 誤解の無い様に言っておくが、魔法の構造を理解するのと実戦投入するのとでは大きく意味が違ってくる。


 理解するというのはつまり、その魔法に対しての知識が備わるということ。


 実戦投入とは、その魔法を制御し安全に発動できるということ。つまり、習得するということである。


 ルーファスは理解と習得を同時に行うことができる。


 ゆえに『天才』


「……………。」


 4人の間に気まずい沈黙が流れる。

 パラパラと本を捲る音だけが聞こえる。


「ま、それはいいとしてさ、予定立てないの?」


 しばらくして本を読み終えたルーファスが立ち上がりながら切り出す。


「立てないんだったら先に五人目の紹介やっちゃいたいんだけど。」


「どうぞ……。はぁ、予定立てる必要なかったですね。普段馬鹿ばかりやっているので完全に失念していました…。」


「えぇ!?レイさん知ってたんですか!?」


「そりゃ、小さい時から一緒に居ますからね。15の時にそれ聞かされて失神しかけたの覚えてます。」


「レイさん、その気持ち僕今すっごくわかります。」


 気苦労同盟が結成された瞬間だった。




「えーっと、じゃ、五人目の紹介しまーす。本人は今自宅で準備してるから居ませんが、名前は……えっーと………。」


「もしかして名前は忘れたなんて言いませんよね?」


 先ほどの衝撃的なカミングアウトから、いくらか持ち直したところで五人目の紹介を始めるが、早くもトラブル発生。


(ヤバイ……いつも略して呼んでたからフルネームが思い出せない……いや、ファーストネームは分かるんだ、でもファミリーネームが思い出せない……!)


「えーっと、ちょっと待てよ、今頑張って思い出してるから………。」


「たかが一人の名前をなんで忘れるんですか、全く………。」


「いや、本当フルネームは長いんだって!えーっと……あ、思い出した!」


「で、五人目のというのは一体誰なんですか?」


 レイスが半分呆れた様に尋ねる。


「いいか、よーく聞いとけよ?行くぞ?」


「いいから早くしてください。」


「エンケラード・ヘルヘイム・ガルム・ヴァラヴォルフ、略してケラ君だ!」


「…………は?」


「えーっと……?」


 レイスとユリウスが怪訝そうな顔をする。


「あの、もう一回言ってもらっても…?」


「だから、聞いとけよって言ったじゃん。行くぞ?」


「い、いつでもどうぞ!」











「エンケラード・ヘルヘイム・ガルム・ヴァラヴォルフ、略してケラ君だ!」





























ケラ君がなんであんなすごい名前なのかは自分でもわかりません。


でも、名前負けっていいですよね。

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