第三話「王子とユリちゃん」
女性キャラ?
そんなものは存在しなかった。
「さて、二人目を探そうか!」
「アテはあるんですか?」
お供その1、もとい執事のレイスが問いかける。
「あるっちゃあるかな…レイは荷物の準備しといてよー」
「え、ちょっと!?」
そう言って部屋を出ていくルーファス。
一人部屋に残されたレイスは誰に言うでもなくぼやく。
「せめて、何が必要かとか、どこに行くのかとか、言って行けよ……。」
〜 in 王宮図書館〜
王宮図書館。
それはクルエル王国城内部にある、巨大な図書館のこと。そこには数十万の蔵書が揃い、中には失われた幻の本があるとも言われている、読書家なら一度は訪れてみたい本の空間。
そこにルーファスは足を踏み入れる。
「おはよーー」
人は数人しか居なかったが、全員が一斉にルーファスの方を見る。
しかしルーファスは気にしない。
そのままカウンターまで行き、本の確認をしていた司書に話しかける。
「ねぇねぇ」
「なんでしょうか?」
「ユリちゃん居る?」
司書は突然出てきた『ユリちゃん』という単語に少し眉を顰めてから
「もしかしてラフル殿のことですか…?」
「そそ」
「でしたら奥の部屋にいらっしゃいますので、どうぞこちらに。」
そう言ってカウンターの奥への道を開ける司書。
「ハイハイありがとねー」
奥の部屋に続くドアを開いて、中に入り、机に向かって何やら書いていた人物に声をかける。
「ユリちゃんおはよー、げんきー?」
するとユリちゃんと呼ばれた人物は
「おはようございます王子、元気ですけど僕の名前はユリちゃんじゃないって何回言ったら分かってくれるんですか!?『ユリ』じゃなくて、『ユリウス』です!!」
「うん知ってる。でも呼び方変える気ないし、ユリちゃんの方が雰囲気と背格好的にあってるからむしろ改名したら?」
「そんな殺生な……。」
ユリウスは身長も低く、体格もあまり良くない上に童顔ときている。
それなのに『ユリ』だなんて改名しようものなら、男としての大切な何かを永劫に失ってしまうだろう。
「ねぇねぇユリちゃん」
ユリウスが悲しみに打ち震えていることなどどうでもいいかのように、普通に話しかけるルーファス。
「………なんですか?」
涙を拭いて健気に要件を聞くユリウス。
「ヒキニート居る?」
「クロウさんはヒキニートじゃないです!!」
「いや、どう考えてもヒキニートでしょー」
「違います!確かにちょっと人見知りが激しくてコミュニケーション能力が壊滅的でお仕事途中でほっぽり出して帰ってきちゃったりしますけど、クロウさんはヒキニートじゃないです!ちょっと素晴らしくインドア派なだけです!!」
全て一息で言ったらしく肩で息をしている。
「ユリちゃんもさ、俺に負けず劣らずボロクソに言うよね。」
「はっ!? 僕としたことが……!」
ついでに、彼らが話しているクロウという人物。本名はクロウ・ココノキ。
主に暗殺などの仕事を請け負っているのだが、いかんせん人が苦手らしく、途中で仕事をほっぽり出して帰ってくることもしばしば……。
まぁ、彼には種族的な理由もあるのだが。
「で、いるの?いないの?」
「いますよ。」
そう言って部屋の右横にある扉を開け、中にいる人物に声をかける。
「クロウさん、王子が呼んでますよ。」
「………………。」
返事はないが、足音が近づいているから問題はなさそうだ。
短いですね。ごめんなさい。
次回、ヒキニートことクロウさんの正体が明らかに!
とか言ってみたり………。
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