第一話「王子とは一体なんだったのか」
そこは優雅な音楽とともに、貴族たちが談笑と会食を行う場所。
つまり、パーティー会場である。
あるものは噂話に華を咲かせ、またあるものは、他の有力な貴族たちに取り入ろうとしている。
そう、ここは貴族たちの娯楽の場でもあり、同時に情報交換の場でもあった。
そして、貴族たちの頂点に立つ者も、当然この会場にいるわけである。
生まれながらにして勝ち組の枠に入ることが許され、尚且つ絶対的な権力の支配者。つまり、王。
そして、その王に取り入るための友好的な手段が、王子、または姫との政略結婚である。
この国、クルエル王国の王には3人の王子がいる。
長男のサディク・クルエルは生真面目で誠実な男であり、また、容姿もそこそこに良いため、未婚の娘たちの憧れの的である。
次男のオリエス・クルエルも、容姿は良いのだが素行が少しよろしくない。しかし、それを差し引いてもお釣りが来る絶対的なカリスマ性がある。
問題は三男のルーファス・クルエル。上二人はいかにも王族らしい金髪碧眼なのに対して、ルーファスはなぜか銀髪銀眼。さらに、特技もこれといった特技が無い。
サディクは剣術が、オリエスは話術が巧みなのに、ルーファスは特にない。強いて言えば、運がいい。あと悪知恵も働く。
運がいいのはまだ良しとしよう。悪知恵が働くとは何事か。明らかに王子の特技ではない。そのせいで最近貴族たちの間で、三男のルーファスは王の本当の子供では無いのではないかと囁かれるようになっていた。(特に本人は気にして居ないようだったが。)
しかし、容姿だけは三人の中で頭一つ分ほど飛び出ており、憧れを抱く女性は少なくない。が、その性格ゆえに親が良い顔をせず、諦める女性も多い。
まぁ、貴族の中にもハイエナのような奴らはいるわけで、
「三男でも構わない。王族に連なることが出来れば確実にのし上がることができる!」
みたいな思想を持った貴族たちの娘は、ルーファスに声を掛けるのであった。
一つ言っておこう。三男ルーファス・クルエルは、容姿は極上。だが、性格に難ありである。
特に誰とも会話せず、ぼーっと外を眺めていたルーファスに声が掛けられる。
「ルーファス殿下、少しよろしいですかな?」
「?」
ルーファスが声の方へと顔を向けると、中年くらいの小太りの男性と、その横で軽く微笑んでいる若い女性の姿があった。
「ルーファス殿下、もし迷惑でなければ私の娘と一曲、踊ってはいただけないでしょうか?」
中年男性の言葉に合わせて、隣の女性が一歩前へ出る。
「お初にお目にかかりますルーファス殿下。わたくしはセラナ・クラナと申します。」
それに対しルーファスは
「あぁ、クラナ公爵家の…」
と、なんだかあまり興味のなさそうな返事。
三人の間に気まずい空気が流れる。
「あの…殿下。繰り返すようになりますが、もし、迷惑でなければ娘と一曲踊っていただけ……」
中年男性がそこまで言った所でルーファスが口を開く。
「え、なんで?」
「………殿下……?」
状況が飲み込めないといった風にこちらを見る中年男性。
「何で俺が踊らなくちゃいけないの?」
「い、いえ、迷惑でなければと思いまして………。」
必死に取り繕う中年男性。
「ふーん? じゃ、『迷惑』だからどっか行ってくれる? 俺さー、踊りとか得意じゃないからホント『迷惑』なんだよねー。」
やたら迷惑を強調して話すルーファスに、いろいろズタボロされた二人は、すごすごと引き下がっていった。
今回初投稿なので、いろいろと拙い所はあると思います。指摘していただけるとありがたいです。
自分が女の子苦手で上手く描写できないので、女の子少なめになります。主人公ハーレム状態とかもありません。
それでもいいという、懐の大きい方は見ていただけるとありがたいです。