75/戦闘開始
第四話「サヨナラの色」(前)
超女王に使役された男の一人。スーツの男が懐から拳銃を取り出し、陸奥に向かって発砲する。銃弾は常人には視認できない速度である。ジョーに分かったのは、陸奥が日本刀を逆袈裟に振り抜いたことだけだった。
耳を貫くような甲高い音が空間に響く。陸奥が銃弾を日本刀で斬り伏せたのだとジョーが気付いた時には、陸奥は駆けだしていた。男の銃撃は連続で、陸奥が間合いを詰めるまでに三発。しかし、そのどれもを、陸奥は足を止めないまま日本刀で弾き落とす。男は接近した陸奥に対して、拳銃を持った方の腕を振り下ろしたが、陸奥はそこで左腕を振り抜いて旋回。そのまま遠心力を利用して、右手で握った日本刀の峰で、変則の片手「胴」を男の脇腹に打ち込む。
拳銃を持った男が陸奥の一撃で崩れ落ちた時、ジョーの背後に殺気が現れる。太い腕が勢いよくジョーを後ろから羽交い絞めにしてくる。横目で認識したのは、警備員風の男である。この建物にいる人間は、自分たちの仲間以外は皆、超女王に使役されていると考えた方が良さそうだ。
ジョーは相手が服を着ていたのを幸いと、その男の襟を後ろ手で絡め取ると、そのまま身体の重心の位置を落下させ、変則の片手背負いを仕掛けた。
スポーツとしての柔道ならそのまま自分が前転して「一本」を取るために相手の背中を地面に叩きつける所だが、今回は実戦である。ひい祖父から学んだ古流柔術の投げ技を使用する。自身が回転はせず、そのまま相手の頭を直接地面に垂直に「落と」す。
鈍い感触が手から伝わり、警備員風の男はそのまま沈黙する。




