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非幸福者同盟  作者: 相羽裕司
第三話「拠り所の守り人」
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68/男女

 しばらく歩き続けていたら、乱立するビルディングに掲げられた看板に、セクシーな女性の群れが映っている一角に出た。アイドルというのとはまた違った趣で、一言で言うならアピールが露骨な女性たちの写真。刺激的なフレーズに電話番号、メールアドレスなどが続いている。S市でも、性産業がさかんな場所だった。


 自分を精神的に子供だとも志麻は思わなかったが、何となくジョーが隣にいるのが気まずいかな、と思った時、当のジョーが何やらコンビニ横のポストに隠れるような素振りを見せた。ジョーは角から出てきた一組の男女を注視している。どうにも覗き見のようで、格好の良いものではない。


「何? どうしたの」


 ひそひそ声で尋ねる。ジョーが観ている男女の男の方は、落ち着いたスーツ姿に歳の頃は二十代後半。キっとした目元に、精悍かつ凛々しい顔をしている。一方、女の方は小柄で、褐色の肌に絹のような黒髪を流している。異国風な容貌に、目の下にはチャームポイントになるようなホクロが一つ。服装はチャイナドレスに近い、東南アジアの国の民族衣装のアオザイと呼称されるもので、全体的に清純な印象を与えている。ただ、男の方と腕を組んでいて、歩きながらも体でコミュニケーションを取っているような様子が、女性としての自己主張を印象付けもした。


「あの男の人、姉ちゃんの彼氏なんだ」


 ジョーはそう答えると、一定の距離を置きながら男女の後をつけ始めた、あわてて志麻も小走りでついて行く。居酒屋で宮澤カレンが語っていた最近できた彼氏ということか。


「今日の私たちの任務を忘れたの?」

「すまん、ちょっとだけ。街の平和も大事だけど、姉ちゃんの平和も大事なんだ」


 確かに、男は女の方と特別な関係であるように見える。それが個人的なものなのか、この場に即したお金で買えるような関係なのかまではまだ分からないが。


「仮に、あの二人がそんな間柄だったとして、どうするつもり?」

「本当にそういう関係だったら、問いただす」


 志麻は頭を抱えた。ジョーは自身の好いた腫れたといった話を面白おかしくする方ではない。なのに、身内の恋愛沙汰になると、どうしてそうアクティブになるのか。


 ただし、志麻にも一時とはいえ食を共にしながら語らった縁があるので、カレンのことは気にもなった。男に遊ばれていたといった類の話なら、そんな経験はして貰いたくないと思う程度には、あの夜、カレンに好感も持っていた。


 仕方がないので、志麻もジョーとはまた距離を取りつつ、少し遅れてついていく。

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